ロボット・ペット市場の活気がないようにみえる。例えば1999年に誕生したソニーの犬型ロボット・アイボは2006年に販売停止に追い込まれ、2018年に再デビューを果たしたが、再び沈静化している。2019年10月末現在、ソニーの公式サイトで注文すれば1週間経たずに届く。
ソニーの公式サイトでアイボを2019年10月28日に注文すると、出荷は11月4日と案内された。 https://pur.store.sony.jp/aibo/products/ERS-1000_M_SW/ERS-1000_M_SW_purchase/ |
ロボット・ペットは注目されやすいが飽きられやすいのだ。
ただ、メーカー各社がロボット・ペットの開発をやめたわけではない。むしろAI(人工知能)を搭載して進化している。AIペットを人々に癒しを与えるだけでなく、家のなかで「仕事」をするようになった。
AIペットは「新産業」と呼べるまでに成長するだろうか。
その可能性と将来性を探った。
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まずは最新のロボット・ペットやAIペットについてみていこう。
・アイボ
現行の2代目アイボはAIが搭載されている。アイボは今、クラウドでソニーと常につながっている。つなげているのはアマゾンのクラウドサービス・AWSである。
アイボは飼い主(購入者)から褒められたとき、「褒められた」という事実と「どのようなときに褒められたか」という情報を、ネット経由でクラウド上のソニーのAIに送信する。AIは「褒められた」情報と「どういうときに褒められたか」情報を蓄積して、飼い主の傾向を分析する。
その後AIは、分析結果をネット経由でアイボに送信する。アイボはこれで「飼い主が喜ぶこと」を学習することができる。
アイボは飼えば飼うほど、さらに愛くるしいペットになっていくのである。
・ラボット
グルーブエックス株式会社(本社・東京都中央区)が開発したラボット(LOVOT)は、一抱えほどの大きさでペンギンのような形をしている。
ラボットはその小さなボディに、10個以上のCPU(中央演算処理装置)と20個以上のMCU(メモリ制御装置)と50個以上のセンサーを搭載し、「まるで生き物のようなふるまい」をすることができる。
さらに、留守番機能、赤ちゃん見守り機能、日常生活の監視機能を備えている。
・パロ
NDソフトウェア株式会社(本社・山形県南陽市)が販売するパロは、アザラシ型のセラピーロボットである。同社は病院や介護事業所向けのシステムを開発販売しており、パロも医療・介護向けのサービスとして取り扱っている。
人がパロを抱くと、パロは首を傾げたり、まぶたを開閉したり、尻尾を振ったりする。また、2人から頭をなでられると、パロは両人に愛敬を振りまくことを忘れない。
パロを認知症の患者にかわいがってもらうことで、アニマルセラピーと同じ効果が得られることがわかった。
ギネスにも「最もセラピー効果があるロボット」と認定されている。
パロを開発した独立行政法人産業技術総合研究所は「学習機能により、新しい名前を学んだり、飼い主が好む行動を覚えたりする」と説明している。AIではないかもしれないが、AIに近いものだろう。パロは個性を獲得するそうだ。
・ロボホン
手の平サイズの人型ロボット・ロボホンは、シャープが開発、販売している。
ロボホンは、会話、歌、ダンスができる。さらに見守り機能もついていて、居間にロボホンを置いておくと、ロボホンの目がとられた室内の画像を、外出中のユーザーのスマホに送信することができる。
ロボホンにはAIが搭載されているわけではないが、ソフトを交換することで施設合案内や受付ができるようになる。また、人を検知するセンサーやIoTといったIT技術も多数盛り込まれている。
ロボット・ペットに期待される効果
ロボット・ペットの利点は、ペットのように愛玩できる一方で、ペットのような手間がかからない点だ。
餌をやる必要はないし、病気も死亡もない。もちろん、故障は起きるが、動物を治療するよりははるかに簡単に修理できる。
猫アレルギーがある人でも、ロボット・ペットなら安心して飼うことができる。
そしてコスト面でもロボット・ペットは有利だ。
最新の高性能なロボット・ペットは数十万円するものもある。しかし動物のペットにもそれくらいの値段のものもあるし、動物だと餌代やトリミングや、飼い主の外出中のペット・ホテル代などがかかる。
ロボット・ペットはランニングコストがほぼかからない。また、今後ロボット・ペットが普及すれば価格競争が起き、本体価格も下がることが期待される。
AIで進化するロボット・ペット産業
ロボット・ペットはAIでさらに進化を遂げるだろう。
ロボットのカメラ機能、移動機能、音声機能は、そのままロボット・ペットに組み込むことができる。そこにAIの画像認識機能や自然言語処理技術を加えれば、人とのコミュニケーション能力はさらに高まるだろう。
人との会話力が身につけば、ロボット・ペットの愛くるしい外観とともに、癒し能力は飛躍的に向上する。
また、ロボット・ペットがAIで人を認識できる能力を身につければ、家や施設のなかの警備に使うこともできる。
人が活動しているときは癒しロボットになり、人が寝静まったら警備ロボットになるので「一『体』二鳥」といえる。
また「AI×ペット」も進化している。
東京電力エナジーパートナー株式会社の「ペットみるん」は、自宅内のペットを撮影し、飼い主や家主のスマホに動画を送信する。
シャープの「猫用システムトイレ・ペットケアモニター」は、外観は猫用トイレだが、センサーがついていて猫の体重、尿量、尿回数などをモニターして、飼い主のスマホにデータを送信する。
韓国ではペットを捜索する「チキョジュルケ(守ってあげる、の意)」という装置が開発された。
さらにアメリカでは、AIで動物の言語を「翻訳」する研究が進められている。
まとめ~一大産業にとって「黒船」になるか
矢野経済研究所によると、国内のペット市場は1.5兆円に達する。これを言い換えると、日本人は1.5兆円分の癒しを動物に求めているわけである。
ロボット技術とAIは、ロボット・ペットをさらに動物に近づけていくだろう。そうなると、人々が動物に向けていた愛情がAIペットに向くようになるかもしれない。
1.5兆円市場にとって、AIペットは脅威になり得るかもしれない。
<参考>
- aiboの生命感と個性を支える3つのコアファクターとAI技術 ソニーが開発秘話と先進技術を語る「AI/SUM 2019」(ロボスタ)
https://robotstart.info/2019/04/23/aibo-aisum.html - キャンペーン(aibo)
https://info.aibo.sony.jp/info/2019/10/20191016.html - aibo(aibo)
http://aibo.sony.jp/ - LOVOT(LOVOT)
https://lovot.life/technology/ - 暮らしに安心・安全をもたらす4つの見守り機能(LOVOT)
https://lovot.life/features/ - MISSION(GROOVE X)
https://groove-x.com/about/ - PARO(NDソフトウェア)
https://www.ndsoft.jp/product/medical/paro/ - ペットロボットってなに? 認知症患者さんに寄り添う「PARO」(nounow)
https://www.nounow.jp/interaction/3232/ - 世界一の癒し効果、アザラシ型ロボット「パロ」、いよいよ実用化(産総研)
https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2004/pr20040917_2/pr20040917_2.html - RoBoHoN(シャープ)
https://robohon.com/ - シャープ、第2世代「RoBoHoN」を発表(PC Watch)
https://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/1170231.html - ペットみるん(東京電力エナジーパートナー)
https://www.service.tepco.co.jp/s/smarthome/pet/ - ペットケアモニター(シャープ)
https://pethealthcare.sharp.co.jp/ - 健康管理から失踪の捜索まで 進化する「ペットテック×AI」(Forbes)
https://www.msn.com/ja-jp/news/money/%E5%81%A5%E5%BA%B7%E7%AE%A1%E7%90%86%E3%81%8B%E3%82%89%E5%A4%B1%E8%B8%AA%E3%81%AE%E6%8D%9C%E7%B4%A2%E3%81%BE%E3%81%A7-%E9%80%B2%E5%8C%96%E3%81%99%E3%82%8B-%E3%83%9A%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%86%E3%83%83%E3%82%AF-ai/ar-AAG6Dwj#page=2 - あと10年でやってくる? AIでペットとコミュニケーションをとれる未来!(GIZMODO)
https://www.gizmodo.jp/2018/01/ai-trancelate-animals.html - 2018年度ペット関連総市場規模は1兆5,422億円(見込)、高付加価値商品の展開で拡大(矢野経済研究所)
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/2127
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