観光界でAIは既にこんなに使われている

観光業界にAI(人工知能)の波が押し寄せている。多様化する観光客のニーズに「AIおもてなし」はどう対応するのか。外国人観光客への対応も大きなテーマになっている。

シェアする

AI(人工知能)を積極的に導入している業界のひとつに観光業界がある。2018年の訪日外国人旅行者数は史上初めて3,000万人を超え、日本人と外国人を合わせた旅行消費額は26.4兆円(2016年)に達する。日本政府は観光業を国の重要産業に位置づけ、強力にバックアップしている。

観光業界にはAIに多額の投資をする力があり、AIによって観光業はますます「儲け体質」になれるかもしれない。観光業界とAI開発企業はWin=Winの関係にあるのである。

観光AIの事例を紹介する。

AI 観光

「観光AI」の特徴

観光業界に導入されるAIには、次のような特徴がある。

AI 観光

それでは個別のサービスについてみていこう。

talkappi

talkappiは、株式会社アクティバリューズ(本社・東京都渋谷区)が開発した観光施設向け「多言語AIチャットボット」である。

チャットボットとは、チャットとロボットを合体させた造語だ。チャットとは、LINEなどのようにスマホやパソコンの画面で、複数の人が文章で会話する技術である。つまりチャットボットとは、ロボット(AIコンピュータ)がチャットの相手をしてくれる機能である。

talkappiはホテルや旅行会社、レンタカー会社、地域の環境協会などの事業者向けの、スマホを使ったサービスだ。

LINE、フェイスブックメッセンジャーなどのメッセージアプリと連携しているので、それらをすでに使っているユーザーは、わざわざ「talkappiのアプリ」をダウンロードしなくてよい。

例えばあるホテルがtalkappiを導入すると、ユーザー(宿泊者)はtalkappiのチャット機能を使って、そのホテルの宿泊予約や、ホテル内の情報の入手、モーニングコールの設定、枕などの貸し出し依頼、部屋の清掃依頼などができる。

talkappiにはAIが搭載されているので、ユーザーの質問内容があいまいだった場合、ユーザーに確認することもある。ユーザーの要望がわかった時点で、talkappiがホテルの従業員に知らせる。

いわばAIがユーザーの要望の整理を行ってくれるわけだ。talkappiに「前処理」させる分、宿泊客の対応をする担当者の仕事が減るので、ホテルは人件費を削減できたり生産性を高めたりすることができる。

また地域の観光協会がtalkappiを導入すれば、観光情報を簡単かつ正確かつピンポイントでユーザー(観光客)に提供できる。

そしてtalkappiは、日本語のほか英語、中国語、韓国語に対応している。さらに「疲れ知らず、休み要らず」のAIが対応するので365日24時間、サービスを提供できる。

ユーザーに情報提供するときは、文章だけでなく画像を使うことも可能だ。

トリップAIコンシェルジュ

トリップAIコンシェルジュは、株式会社リクルートが開発した、宿泊施設向けサービスだ。ホテルの利用者の問い合わせに対し、「応答ツール」が回答する。

トリップAIコンシェルジュもスマホを使う。

ホテルがトリップAIコンシェルジュを使うと、ユーザー(宿泊客や観光客)に次のような情報を自動で提供できるようになる。

・チェックイン、チェックアウト時間

・チェックアウトの延長

・荷物の預かり

・ホテルまでのアクセス情報

・駐車場や送迎の有無

・部屋内のネット環境

・ベビーベッドや赤ちゃん用布団の有無

・ルームキーの貸し出し本数

・アメニティの内容

・大浴場の温泉の泉質

・ホテル内のレストランやバーの営業時間、メニュー

見方を変えると、ホテルの従業員たちはこれらの仕事から解放されることになる。ホテルはその分、接客に力を入れることができる。

AI運行バス

会津電力株式会社(本社・福島県喜多方市)とJTBとNTTドコモの3社は、2018年3月に福島県会津若松市内でAI運行バスの実証実験を行った。

AI運行バスへの乗車を希望する者は、まずは自身のスマホに専用アプリをダウンロードする。そのアプリに希望の乗降地点を登録すると、AI運行バスの予約が完了する。乗降地点は事前に登録してある地点のなかから選ぶ。

乗客が乗車地点で待っていると、最も近くで走行していたAI運行バスがやってくる。乗客がAI運行バスに乗り込むと、スマホの画面上には地図が表示され、AI運行バスがどこを走行しているかがわかる。

この、地図を使った位置確認機能は、AI運行バスを待っている間も使うことができる。それにより待っているAI運行バスが現在どこを走っているのかがわかるので、待つストレスが軽減される。

AI運行バスでは、AIにルートをつくらせている。AIがAI運行バスの走行状況や乗客から届く乗降希望などを勘案し、需要を計算し、最適な時間と最適なルートを分析し、最も効率的なルートを運転手に示すのである。

AI運行バスのシステムはNTTドコモが開発し、「AI運行バス」という名称も同社の登録商標だ。

実証実験を行った会津若松市は、観光地でありながら生活者も多く住んでいる。しかし東京や京都などと比べると観光地としての規模も市の規模も大きくないので、観光客を乗せる観光バスも、市民が使う路線バスも空席が出ることは珍しくない。

だから観光バスと路線バスを共用できれば、効率的な運行とコストダウンを同時に図ることができる。

しかし観光バスと路線バスのニーズや行き先はかなり異なるので「運行表」をつくることは簡単ではない。そこでAIに計算させて、最適な運行表をつくらせるのである。

Deaps

Deapsは、ディープス・テクノロジー株式会社(本社・東京都中央区)が開発した、スマホ向け「AIおでかけガイドアプリ」だ。

Deapsがターゲットするユーザーは、次のような特徴を持った旅行者だ。

・趣味を極めたい人

・ガイドブックの情報では物足りない人

・ネットで情報を探すのが面倒な人

ガイドブックにない情報を、Deapsはどのように集めるのだろうか。

Deapsに観光情報を教えるのは、Deapsユーザーである。Deapsには、ユーザーが、訪れた場所や興味の対象や趣味を登録する機能が搭載されていて、それらがDeapsのデータベースに蓄積されていく。

このようにして貯まった大量の口コミ観光情報は、AIが分析して整理する。

そしてユーザーがDeapsの検索機能を使って観光情報を探すと、AIが検索ワードなどからおすすめの観光情報を割り出し、ユーザーのスマホ画面に表示させるのである。

現在Deapsには「樽前ガロー」「神磯鳥居」「熊谷うちわ祭」「来日岳の雲海」「二瀬ダム」「都電おもいで広場」といった、知っている人には有名だが、知らない人にはまったく知られていない観光地が登録されている。

Kyoto Guide ENA

Kyoto Guide ENAは、株式会社エフケアー(本社・徳島県阿南市)と京都府南丹広域振興局が開発した、外国人観光客向けAIチャットボットである。

Kyoto Guide ENAの基本的な構造は冒頭で紹介したtalkappiと同じで、その外国人向け版といった位置づけである。

Kyoto Guide ENAの特徴は、スマホユーザーの現在地をAIが確認することだ。したがってユーザーは、チャットで「土産物屋に行きたい」とつぶやくだけでよい。するとKyoto Guide ENAが最寄りの土産物屋を探し、ユーザーのスマホにその情報を提示する。

Kyoto Guide ENAはさらに、ユーザーの位置情報からユーザーの行動を分析する。データと分析結果が大量に集まるようになると、マーケティングの資料になったり、混雑予測が可能になったりする。

FUKUOKA AI Tourist Information

FUKUOKA AI Tourist Informationは、国土交通省九州運輸局と福岡市が2018年11月から2019年2月28日まで福岡市内で行う、AIチャボットを使った観光案内サービスだ。

福岡市は2019年にラグビーワールドカップが開催されるなど、外国人観光客の増加が見込まれる。外国人に福岡市のリピーターになってもらうには、多言語による情報提供が欠かせない。そこで、人手をかけないで外国人観光客をおもてなしできるAIに白羽の矢が立ったわけである。

福岡市を訪れた外国人は、FUKUOKA AI Tourist Informationで、次の3つのサービスを受けることができる。

・AIチャットボットによる福岡市の観光案内

・24時間対応

・福岡市観光案内所のQ&A情報などのFAQシステム

九州運輸局と福岡市は、FUKUOKA AI Tourist Informationで、観光サービスの生産性向上を目指す。

まとめ~もうすでに便利

観光業界とAIの相性はとてもよい。

人々が観光を楽しむとき、情報の整理を行わなければならない。観光客が観光地に滞在できる時間が限られているからだ。

AIは情報の整理が得意だし、観光客の「好み」を推測することもできる。

観光AIは、未来の技術ではなく「もうすでに便利」な技術になっている。


<参考>

  1. 訪日外国人旅行者数、初の3,000万人突破(日本政府観光局)https://www.jnto.go.jp/jpn/news/press_releases/pdf/181219.pdf
  2. 経済波及効果(観光庁)
    http://www.mlit.go.jp/kankocho/siryou/toukei/kouka.html
  3. taklappiとは(アクティバリューズ)
    https://talkappi.com/#sec2
  4. 会社概要(アクティバリューズ)
    https://activalues.com/about
  5. トリップAIコンシェルジュ(リクルート)
    https://trip-ai.jp/doc/about/
  6. ご利用規約(トリップAIコンシェルジュ)
    https://trip-ai.jp/doc/term/
  7. AI運行バス 実証実験が行われました(会津電力)
    https://aipower.co.jp/archives/tag/%E3%83%A2%E3%83%93%E3%83%AA%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%BB%E3%82%B7%E3%82%A7%E3%82%A2

    https://aipower.co.jp/main/wp-content/uploads/2018/03/180308_mobility-share.pdf

    https://aipower.co.jp/about-us
  8. 知らない日本に、おでかけしよう(Deaps)
    https://www.deaps.com/
  9. ABOUT US(Deaps Technologies 株式会社)
    https://www.deaps.co.jp/aboutus/
  10. ABOUT US(エフケアー)
    https://www.fkair.jp/
  11. AIの京都観光案内、チャットボット「Kyoto Guide ENA」の実証を開始(PR TIMES)
    https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000032119.html
  12. 【実証開始日のお知らせ】観光案内AIチャットボット「FUKUOKA AI Tourist Information」~ビッグデータを活用した観光サービスの生産性向上に係る実証事業~(国土交通省九州運輸局)
    http://wwwtb.mlit.go.jp/kyushu/press/00001_00044.html