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調達物流でのAI活用事例 (国内)

トラックの隊列走行実証実験の現状とAIを活用した宅配の自動運転、およびAI、IoT、ロボットを活用した物流設備の2つの事例を紹介する。

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少子化や超高齢社会に伴う労働人口の減少で人手不足が問題となっている。また、サプライ・チェーンのグローバル化やeコマースの進展、迅速化により、物流業界は企業経営を圧迫する事態ともなっており、その改善のため人工知能(AI)やIoTなどをはじめとしたテクノロジーを活用することが喫緊と課題となっている。物流分野におけるAIなどを活用した2つの事例をご紹介する。

政府が策定した「未来投資戦略2017(2017年6月9日閣議決定)」には、物流分野の人手不足解消やCO2排出削減など、社会的な課題への取り組みとして、トラック隊列走行やドローンの荷物配送が盛り込まれている。自動運転などの移動革命による効率的で合理的な輸送手段の技術開発が急務とされている。

事例1

政府が策定した「未来投資戦略2017(2017年6月9日閣議決定)」には、物流分野の人手不足解消やCO2排出削減など、社会的な課題への取り組みとして、トラック隊列走行やドローンの荷物配送が盛り込まれている。自動運転などの移動革命による効率的で合理的な輸送手段の技術開発が急務とされている。

 豊田通商株式会社は2018年1月23日から25日にかけて、新東名高速道路でトラックの隊列走行実験を実施した。同社は、「高度な自動走行システムの社会実装に向けた研究開発・実証事業:トラックの隊列走行の社会実装に向けた実証」(経済産業省)を受託し、隊列走行に関する研究開発を進めていた。その一貫として、新東名高速道路の浜松サービスエリアから遠州森町パーキングエリア間での高速道路における後続有人隊列走行の実証実験の開始となった。異なるメーカー車両での、協調型車間距離維持支援システム(CACC:Cooperative Adaptive Cruise Control)を使用した高速道路上における後続有人隊列走行としては世界初となる。

CACCとは、先行車両と通信することで自動的に加減速し、一定に車間距離を保ちながら走行できる機能で、複数の国内トラックメーカーが共同で開発した。実験では、トラックの隊列が周りを走行しているドライバーからどのように視認されているか、隊列走行するトラックの追い越しなどの影響が確認された。また、同社は2018年1月30日から2月1日には、栃木県、茨城県の北関東自動車道において、地形の高低差や交通の影響などを確認する技術実証実験も実施した。

前述の隊列走行技術開発にも取り組んでいるヤマト運輸株式会社は、「ロボネコヤマト」の実証実験を2017年から、神奈川県藤沢市で開始している。「ロボネコヤマト」は、自動運転による宅配サービスの実現を目指したプロジェクトで、株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)と共同で取り組んでいる。依頼主がスマートフォンから受け取り場所・時間帯を指定すれば、人工知能(AI)が最適な配送ルートをドライバーに伝え、荷物が届けられるシステムだ。現時点ではドライバーは乗っているが、将来は無人宅配を想定しているため、依頼主がタッチパネルを操作して自分で荷物を取り出す仕組みとなっている。

宅配の荷物の受け取り方も多様化してきている現在、「ロボネコヤマト」は受け取り方法の選択肢を増やすことで、受け取るために「待つ」という概念自体をなくしたいのだという。 朝晩の通勤途中など、人の動線上で荷物を受け取れる配送サービスの実現を目指している。10分単位での時間指定が可能で、メンバー登録していれば無料で利用できる。実証実験エリアも拡大中で、2018年をめどに一部区間で自動運転の導入を計画している。

いずれの実証実験でも現状ではドライバーが乗車する有人走行である。だが、「未来投資戦略2017」には、2020年のトラックの後続車無人隊列走行が計画されている。物流分野でも自動運転・AIなどを活用した技術戦略で、今後ますます増大すると予想される物流輸送に対応していく。

事例2

大和ハウス工業株式会社(以下、大和ハウス)と株式会社ダイワロジテック(以下、ダイワロジテック)は、2018年4月25日に「Intelligent Logistics Center PROTO(インテリジェント・ロジスティクス・センター・プロト)」をオープンする。大和ハウスが開発した千葉県市川市の物流施設「DPL市川」内に構築した人工知能(AI)・IoT(Internet of Things)・ロボットの先端テクノロジーを活用した物流施設となる。

無人搬送ロボット「Butler®(バトラー)」(以下、バトラー)は、インテリア小売大手の株式会社ニトリホールディングスなどでも導入しているが、大和ハウスは2017年6月にはバトラーの独占販売権を保有するGROUND株式会社と資本業務提携を締結、同年9月には「運ぶを最適化する」をミッションとした株式会社Hacobuと資本提携を行っていた。着々と物流構造の変革を実現するための下地を整え、2017年11月にはダイワロジテックを設立した。満を持しての「インテリジェント・ロジスティクス・センター・プロト」の誕生となる。

インテリジェント・ロジスティクス・センター・プロトでは、複数の荷主企業が作業員や設備、システムなどを共同利用する事業モデルを導入する。物流施設は賃貸借方式で運用されているが、インテリジェント・ロジスティクス・センター・プロトではテナントの従量課金制を提供することで、初期投資コストが削減され、効率的な物流サービスの構築を可能とした。今回の荷主は株式会社エアークローゼット(インターネットサービス業)、株式会社waja(eコマース運営)、株式会社TokyoOtakuMode(eコマース、インタネットメディアおよびウエブサービス事業)の3社だ。今後3社とはAIやIoT、ロボットなどの最先端技術による実証実験を伴った研究・開発(R&D)機能を担い、確立された技術などはほかの物流施設に展開していく。施設に導入された30台のバトラーを活用することで、搬送人員は4割減が可能となる。eコマースの進展に伴い、物流施設は高い供給が続き、人手不足が深刻化しているため、これらの改善にもつなげるサービスに進化させたいとしている。この取り組みを多くの人に見てもらいたいとショールームも設けた。

大和ハウスは、倉庫業務に進出するわけではなく、真の狙いは物流の効率化にあるとしている。労働者不足や人件費の高騰は今や社会問題であり、AIやロボットなどを組み合わせて新たな物流システムを構築し、解決の糸口を探る。2018年秋には千葉県流山市に第2弾を開始する予定だ。今後の要望を鑑みながら全国展開も視野に入れている。

まとめ

 人工知能(AI)やIoT、ロボット、自動運転などが普及・活用されることで労働力不足の改善が期待される。大きな負担がなく物流事業が継続でき、また消費者ニーズに沿ったサービスも日々生み出されている。物流の効率化を上げるには、テクノロジーとの融合が不可欠であるが、物流分野は着実に進化していくだろう。

<関連記事>
調達物流でのAI活用事例(海外の事例)


<参考>

  1. 高速道路におけるCACC *2を用いたトラックの後続有人隊列走行実験を開始(豊田通商)
    http://www.toyota-tsusho.com/press/detail/180112_004097.html
  2. 豊田通商、トラックの隊列走行実験 新東名高速で(日本経済新聞)
    https://www.nikkei.com/article/DGXMZO25622440S8A110C1TJ1000/
  3. トラック隊列、自動運転実験(下野新聞)
    https://this.kiji.is/331254788816553057
  4. 未来投資戦略2017 (内閣官房日本経済再生総合事務局)
    http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2017/0609/shiryo_07.pdf
  5. 自動走行の実現に向けた取り組み (内閣官房日本経済再生総合事務局)
    https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/miraitoshikaigi/suishinkaigo2018/revolution/dai2/siryou4.pdf
  6. 自動運転社会を見据えた次世代物流サービスの実現をめざす「ロボネコヤマト」プロジェクト、4月17日より藤沢市の限定エリアにて実用実験を開始 (DeNA)
    http://dena.com/jp/press/2017/04/16/1/
  7. AI・IoT・ロボットを活用した新しいシェアリングモデルを物流施設内で構築 (大和ハウス工業)
    http://www.daiwahouse.com/about/release/house/20180418094729.html
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