RPA(Robotic Process Automation)は「ロボットによる業務の自動化」と訳される。ただこのロボットは、鉄腕アトムのような二足歩行ロボットでも、自動車を組み立てるアームロボットでもない。
RPAは、コンピュータ内のソフトウェア型のロボットのことを指す。
事務作業をするときパソコンを操作するが、RPAを搭載すると、そのパソコン業務が自動化される。
つまり肉体労働専門だったロボットが、ホワイトカラーの業務や頭脳労働もするようになったわけである。
そして今、RPAにAI(人工知能)をかけ合わせた「RPA×AI」が注目されている。RPAもAIも単体で十分便利なツールであるが、この2つが合体するとどのような相乗効果が生まれるのだろうか。
続きを読むRPA(Robotic Process Automation)とは
RPAについてまったく知識がない人は、エクセルを使った仕事が自動化されるシーンをイメージするとよいだろう。
例えば、経理業務でエクセルを使っている人なら、さまざまな項目の売上や費用や経費などの金額をセルに打ち込んでいく。さらに関数機能を使って、複数のセル内の数字を足したり引いたり掛けたり割ったりする。RPAはこうした作業を、経理担当者の代わりに実行してくれる。
経理担当者が使っているエクセルは、ソフトウェアであると同時に、いわば業務システムにもなっている。つまりRPAを応用すれば、顧客管理システムや在庫管理システムといった、その企業独自のコンピュータ・システムも自動化させることができる。
RPAの3つのレベル
RPAには3つのレベルがある。
レベル1のRPAは、定義されたルールにしたがって動く。大量のデータを入力していくといった単純作業をRPAにさせることができる。
レベル2のRPAになると、データの解析ができるようになる。ただこの段階でのデータ解析は単純なものだ。例えば、過去の売上データを解析して、「売上げ予測の資料」になるデータをつくることができる。
資料をつくるだけでなく、売上げ予測をすることができるのは、最終のレベル3のRPAである。ここまで進んだRPAは多面的な解析が可能になる。例えばメーカーがレベル3のRPAを導入すれば、過去の売上データと天気予報とSNS上の頻出ワードから、適切な生産量を予測することができるようになる。
RPAの3つのレベルのうち、レベル2と3はAIを組み合わせることで実現する。
つまりレベル2以上のRPAは「RPA×AI」である。
「RPAとAIのかけ合わせ」は何を生むのか
RPAとAIをかけ合わせると、ビジネスが変わり、働き方が変わる。
その両方を詳しくみていこう。
RPAとAIは相性がよい
ビジネスと働き方の変容を確認する前に、「RPAとAIをかけ合わせるということ」の概念について解説する。
RPAもAIも独立したひとつの技術である。2つの技術のかけ合わせは、簡単なときと難しいときがある。
例えばトヨタは、ガソリンエンジンと電気モーターをかけ合わせたハイブリッド方式を開発した。世界で初めてそのシステムを導入した初代のプリウスは1997年に発売されたが、当時は「売れば売るほど赤字になる」代物だった。それはこれまでにない技術を盛り込みすぎてコストが高くなってしまったからである。そして、これまでにない技術を盛り込まなければ、プリウスは市販できなかった。
プリウスは、2つの技術のかけ合わせが難しいケースだ。
一方、RPAとAIのかけ合わせは、プリウスに比べると簡単なケースといえる。それは、RPAもAIも「コンピュータに指示を出す」「コンピュータにより多くの仕事をさせる」という点が同じだからだ。
つまりRPA開発者がAIを学べばRPA×AIを開発することができる。そしてAI開発者にとっては、RPAは「自分のAIを盛る理想の器」になる。AI開発はいわば「できることの提案」だが、RPA×AIは「実際のソリューション」になるので、開発者たちのモチベーションにつながる。
ビジネスを変える
次にRPA×AIがビジネスを変える様子をみていこう。
株式会社アシスト(本社・東京都千代田区)は2019年7月、同社が開発した業務自動化ソリューション「AEDAN」が、KDDIに採用されたと発表した。
AEDANこそRPA×AIである。
AEDANはビジネスをどのように変えるだろうか。
AEDANができることは次のとおり。
・エクセルなどからデータをコピペして、システムにそのデータを入力する
・ひとつのデータファイルを加工して、複数のシステムに項目別に登録する
・システムに転記する前のデータを比較して整合性をチェックする
・異常データを検出する
・メールに添付されたエクセルをダウンロードして、ファイルサーバに保存する
・顧客からのメールによる問い合わせに対し自動返信する
これらの項目を読んで「これこそまさに今の自分の仕事」と感じた人も少なくないだろう。そして同時に「これらの仕事を自動化できるのか」といぶかったかもしれない。
そう感じた人の会社がAEDANを導入すれば、こうした単純作業から解放され、よりクリエイティブな仕事に専念することができる。
働き方改革を実行できる
RPA×AIは、政府が強力に推し進めている働き方改革に貢献するはずだ。
政府の働き方改革は、労働時間を減らすことだけを目標にしているわけではない。なぜなら、単純に労働時間を減らせば、ただでさえ労働者人口が減少している日本では、生産能力が落ちてしまうからだ。
政府は、生産性を上げて、業務を効率化させて、むしろ労働時間を減らしたほうが生産能力が上がる取り組みのことを、働き方改革と呼んでいる。
労働時間を減らせば人々のストレスが減るので、「仕事をしているときの」作業効率は確実に上がる。しかしそれだけでは、仕事の時間が減った分の業務量は取り戻すことができない。
それでRPA×AIが必要になる。
RPA×AIは、これまでサポートが難しかったホワイトカラーを支援するシステムである。ホワイトカラーがRPA×AIを使いこなせば、雑務から解放され、より専門性が高い仕事にチャレンジできるようになる。
それがイノベーションを生む土壌になる。雑務に追われている人や、余裕がない人、専門的な仕事に集中できない人が、イノベーションを生み出すことなどできない。
イノベーションが進めば、省力化と省人化と生産性の向上と効率化が同時に達成できる。イノベーションを成し遂げた企業が莫大な利益をあげられることは、古くはソニーやパナソニックが、近年ではGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)が証明している。
労働時間が減ってストレスが減っているのに、売上高や利益が上昇する「正のスパイラル」が、RPA×AIによってもたらされるかもしれない。
まとめ~単純・危険作業からの解放
工場のロボットは、作業員を単純作業と危険作業から解放した。そのお陰で、工場作業員たちは、人にしかできない技術を磨くことができるようになった。
ロボット化の波が、ようやくホワイトカラーにも届いた。それがRPAでありAIであり、RPA×AIである。
ホワイトカラーにも単純作業と危険作業がある。日々のエクセル入力は単純作業だ。そして退屈でやりがいが感じられない大量の事務作業は、長時間労働を生み、ストレスを生み、メンタルの危険につながる。
ホワイトカラーたちが、単純・危険作業をRPA×AIに押し付けることができるようになれば、より創造的で独創的な仕事ができるようになるはずだ。
<参考>
- 今さら聞けないRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の基本 | AIとの違いやメリットを徹底解説(MAG BOXIL)
https://boxil.jp/mag/a2378/ - アシストの業務自動化ソリューション「AEDAN」をKDDIが採用(アシスト)
https://www.ashisuto.co.jp/news/release/1208489_1675.html - 「働き方改革」の実現に向け、RPA+AIで業務を効率化したい(アシスト)
https://www.ashisuto.co.jp/product/theme/bi/aedan_rpa.html
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