ツイッター・マーケティングという言葉をご存じだろうか。企業がツイッターのアカウントを取得し、ツイッター・ユーザーに企業情報を伝えたり、消費者とツイッターでコミュニケーションを取ったりして自社のファンを増やすマーケティング手法だ。
この手法は多くの企業が実施しているが、別のツイッター・マーケティングを行っているところはまだ多くはない。
それは企業が、一般消費者たちのツイートを分析し、自社製品の使用状況を確認し、マーケティングの資料にする方法だ。
そしてツイッター・マーケティングにはもうひとつある。一般消費者のツイートを分析し、個別の消費者の特性を把握し、潜在顧客を探す手法だ。
まとめるとこうなる。
この3つのツイッター・マーケティングのうち、「★」をつけた2つの手法はAI(人工知能)を使っている。
ツイッターとAIをマッチングさせた手法を紹介する。
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ツイッターの投稿分析によって企業はどのようなメリットがあるのか
ツイッターは特異なSNSだ。
SNSは、なるべく多くの情報を発信し、他者とのコミュニケーションを深めることを目的にする。フェイスブックの記入欄が履歴書と職務経歴書を合わせた記入欄より多くあるのは、ユーザーの情報をなるべく多く発信できるようにするためだ。インスタグラムは動画という「大きなデータ」を掲載できる。動画は短時間で大量の情報を提供でき、インパクトが強いから訴求力もある。
ところがツイッターだけは、原則、短い文章しか載せない。写真をアップすることもできるが、それはあくまで副産物であり、ツイッターといえばやはり「つぶやき」である。
この短文には大きなメリットがあるのだ。
世界一の権力者が愛用するほどのパワーを秘めている
短い文章は単純明快な分、大量の情報より「雄弁に語る」ことがある。ツイッターのこの効果を世界中で最も有効に活用しているのが、第45代アメリカ合衆国大統領、ドナルド・ジョン・トランプ氏だ。
彼は経済政策も外交もマスコミ対応も政権内の人事異動も、ツイッターで行う。もちろん実際の経済政策や外交などは現場で行うが、トランプ氏は政治の現場をツイッターで国民や世界の人々にみせている。
ツイッターにはこれだけのパワーがあるのだから、これをビジネスに使わない手はないだろう。
AIはツイートから人物像を描き出す
なぜツイートという短い文章にそれだけのパワーがあるのだろうか。それは、人は意外に文章で嘘をつけないからだ。SNSでは、仕組み上はいくらでも他人になりすますことができる。しかし情報発信が数多くなると、必ずボロが出てしまう。
なりすまそうと考えているユーザーでさえ自分を隠し切れないのだから、自分を隠す必要がない一般のユーザーがつぶやく文章には、「ありのままの自分」が投影されてしまう。
企業は「ありのままの顧客」を知りたがっている。なぜなら、顧客の本質をつかまないと、商品やサービスを売ることができないからだ。
例えば、洋菓子メーカーがある顧客に好きなスイーツを尋ねたら、「チョコ系のスイーツが大好きです」と発言したとする。すると洋菓子メーカーは、その人にチョコレートケーキをすすめれば買ってもらえるはずだ。ところが実際の消費の現場では、その顧客はチョコレートケーキを買わない。
なぜならその人はダイエットをしているからだ。「チョコ系のスイーツが大好きです」と言った顧客は実は、脂質と糖質を制限した健康スイーツを探しているのである。
しかし顧客は、自分のダイエットについて洋菓子メーカーに語りたくないので「チョコ系のスイーツが大好きです」と答えたのである。
そこでツイッターを活用するのである。
ツイートの短い文章をつぶさに追跡すると、ありのままの顧客像が浮かび上がってくるので、それをターゲットにしたマーケティング戦略を立てればよいのだ。
しかし、企業がすべての顧客や潜在顧客のツイートを読み込み、さらにそこから顧客像をとらえることは相当の難事業だ。
まずデータが多すぎる。顧客たちは特定企業の商品やサービスをいつも気にかけているわけではない。たまにつぶやく自社製品に関する文章を拾い集めるには、全発言を集めなければならない。
そして、自社製品についてツイートしたとしても、それがほめ言葉なのか批判なのか分析しなければならない。
またツイートの内容から年齢や性別を推測する必要もある。
これらの難事業をこなせるのは、AIしかない。AIなら大量の短い文章を苦もなく読み込んでいく。そして自社製品に関するつぶやきを抽出することも得意だ。さらに「その他情報」から年齢や性別、職業、志向を推測する。
現代AIの実力とは
「本当に現代AIにそこまでできるのか」という感想を持った人もいるだろう。
答えは「できる」だ。
AIがかなり深くツイッターを分析していることは、次の4つのサービスの内容を知れば理解できるだろう。
・モテ診断AI
・TSUTAYA AI
・性格推測のPersonality Insights
・花粉症の流行予測
1つずつ紹介する。
モテ診断AI
ディップ株式会社(本社・東京都港区)が開発した「モテ診断AI」は、ツイッターでのつぶやき内容から、そのユーザーが「どれくらいモテる人なのか」を分析する。
モテ診断AIはまず、つぶやき内容からツイッター・ユーザーの性別を判別する。次にそのユーザーのツイッター上のアクションをチェックし、異性との交流を分析する。そこからモテ度を判定するわけだ。
ツイート文章からユーザーの性別を判別したり、ユーザーの異性との交流を分析したりできるのは、自然言語処理技術や統計や推計を駆使しているからである。
TSUTAYA AI
DVDレンタルのツタヤは、ツイッター投稿からユーザーの趣味嗜好を分析し、おすすめの映画を提案するサービスを始めた。その名も「TSUTAYA AI」だ。
ユーザーがTSUTAYA AIのサービスを使うには、公式ホームページと自身のツイッター・アカウントを連携させる必要がある。その手続きを終えると、映画20作品が提案される。
ツタヤはこれまでも、顧客の購入履歴などからおすすめ映画を提案してきた。しかしこの手法では、既存客を囲い込むことはできても、新規顧客を獲得することはできない。
ツイッターとTSUTAYA AIをつなぐようにすれば、これまでツタヤでDVDを借りたことがない人に接触することができる。
ちなみにTSUTAYA AIは、堀江貴文氏には「チェ 28歳の革命」「ソーシャル・ネットワーク」「グローリー/明日への行進」などをすすめている。きゃりーぱみゅぱみゅさんには「メリー・ポピンズ」「ハイスクール・ミュージカル」などをすすめている。
これらの内容は以下のURLで確認することができる。
性格推測のPersonality Insights
IBMのパーソナリティ・インサイツ(Personality Insights)は、言語学的分析とパーソナリティ理論を習得したAIを搭載していて、対象の人が書いた文章からその人の性格を推測することができる。
したがってツイート履歴を元にツイッター・ユーザーの性格を推測することもできる。
パーソナリティ・インサイツとツイッターを連携させてツイートを分析させる。
分析した性格は、「熱くなりやすいタイプです。現状は、概して自分自身に満足していて、自信もあります。自分の周囲の人たちの世話をすることが好きです」といった文章で表記されるほか、「外向性X%」「欲求Y%」「自己超越Z%」などと指標ごとに数値で知らせてくれる。
花粉症の流行予測
奈良先端科学技術大学院大学が開発したスマホアプリ「花粉症ナビ」は、花粉症の流行を予測する。
このシステムにおけるツイッターの利用方法はとてもユニークだ。
実は、花粉の飛散量と実際の花粉症の流行には相関関係がないことがわかっている。つまり大量に花粉が飛んでも花粉症が流行しないこともあるし、少量の花粉で大流行することもあるのだ。
花粉の飛散量は、花粉症の流行予測のデータになり得ない。
そこで奈良先端科学技術大学院大学はAIを使い、ツイッター上の膨大なつぶやきのなかから花粉症の症状に関する文章だけを抽出し、どこでどの程度の強さの症状が起きているか集計した。
ツイートしているときのユーザーの居場所は、GPS(衛星利用測位システム)を使って特定する。
花粉症の流行状況は、47都道府県ごとに安全、注意、危険、非常に危険の4段階で示す。研究チームは、同じシステムを使えばインフルエンザの流行状況も把握できる、としている。
まとめ~「AIにはお見通し」のようだ
ツイッターはフェイスブックに比べると、1件あたりの情報量ははるかに少ない。しかしそのことがかえってAI分析を容易にしている。
しかも文章情報は「文字が読める」AIにとってありがたい形態だ。
ありのままの顧客を知りたい企業にとって、ありのままの自分が出てしまうツイッター情報は、貴重な顧客データに映っていることだろう。AIによるツイッター分析は、まだまだ進化しそうだ。
<参考>
- ツイッターのマーケティング、セルフブランディングで分析すべきデータと指標(Dividable)
https://dividable.net/marketing/twitter-analysis/#i - Twitterをマーティングに活かす!3つの分析目的(LISKUL)
https://liskul.com/points-to-analyze-twitter-29867 - Twitterをビジネスに活用(ツイッター)
https://business.twitter.com/ja/basics/intro-twitter-for-business.html - AIがTwitterアカウントのモテ度と特徴を解析 モテ偏差値と50通り以上のキャラクターがわかる「モテ診断AI」リリース(dip)
https://www.dip-net.co.jp/news/press-release/2018/02/aitwitter50ai.html - TSUTAYA AIとは?(ツタヤ)
https://tsutaya.ai/ - Personality Insights(IBM)
https://personality-insights-demo.ng.bluemix.net/ - AIが花粉症の流行予測 ツイッター分析→危険度通知 奈良先端大がスマホアプリ開発(Sankei Biz)
https://www.sankeibiz.jp/compliance/news/180724/cpc1807241009001-n1.htm
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