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NISSEN DIGITAL HUB MEET UP!Vol.2【後半】

2020年2月20日、東京で開かれた「生活×イノベーションの現在地と未来~理想から実装へ」をテーマにしたセミナーイベント「NISSEN DIGITAL HUB MEET UP!Vol.2」(主催、株式会社日宣)の後半について紹介する。

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2020年2月20日に東京で開催されたセミナーイベント「NISSEN DIGITAL HUB MEET UP!Vol.2」(主催、株式会社日宣)の詳報。

【前半】では、第1部パネルセッションを紹介したが、本稿【後半】では第2部のスタートアップピッチを紹介する。第2部のスタートアップピッチでは、次の3社が自社サービスを来場者にプレゼンした。

株式会社YONOHI(発表者、代表取締役、山岡優樹氏)

株式会社ミリミリ(発表者、CMO、菅野康一氏)

Crack Roaster合同会社(発表者、代表、小野シンジ氏)

スタートアップピッチに先立って、企業のコンテンツマーケティングをサポートする「SOOTH株式会社」(本社・東京都中央区)が、脳波センサーデバイスを活用してテレビCMをつくるという、まったく新しいタイプのマーケティング手法を紹介した。

先にSOOTHの実績を、そのあとに3社のスタートアップピッチを紹介する。

脳波で「効果」を予測してCMをつくる

SOOTHは自社を「xRを活用したコンテンツマーケティングの支援企業」であると紹介した。xRとは、VR(仮想現実)、AR(拡張現実)、MR(複合現実)などの総称であり、「x」は「未知数」を表す。

SOOTHのミッションは次のとおり。

・5G社会で求められる質の高いxRコンテンツを提供する

・xRコンテンツから得られる「人の生体反応」を活用して、マーケティングをデザインする

この説明だけでピンとくる人はそれほど多くないだろう。

さらに詳しく解説する。

「90%の無意識」をマーケティングする

SOOTHによると、人が、普段の生活や活動や行動から得ている情報のうち、意識できているのは10%にすぎない。だからといって残りの90%の情報がすべて捨てられているわけではなく、その多くは無意識や深層心理の領域に貯められている。

消費者たちは、自分の消費行動は10%の意識で決定していると自認しているが、実際は90%の無意識の影響を受けている。

ところが既存のマーケティングは、アンケートやインタビューといった10%にすぎない「意識して生まれた感性」へのアプローチが殆どである。90%もの無意識レベルの情報を無視しているのだから、既存のマーケティングが「的外れ」になるのは理論上「仕方がないこと」である。

SOOTHは、コンテンツに対する消費者の反応を、無意識レベルまで掘り下げてキーインサイトを採取しようとしている。同社は独自の「テクノロジーとコミュニケーション戦略策定ツール」を駆使し、徹底した定量・定性分析によりこのキーインサイトを抽出している。

消費者の無意識レベルの反応まで採取できれば、企業のマーケティング担当者は「消費者が本当に心の底から欲しがっているもの」や「ゾクッとする体験」を知ることができる。

そうした情報に基づいて行うマーケティングは、理論上「当たる」確率が高くなる。

SOOTHは、現代のマーケティング・ビジネスを、たった10%の意識レベルの情報を元に莫大な資金を投じている状態、とみている。

そこでSOOTHは、顧客企業に提供しているマーケティング支援活動に、次のような特徴を持たせた。

・定性的な強みを定量化・可視化する

・「キーインサイト」に基づき、製品、商品、サービスの開発、リニューアル、ブランドリフトアップの拠り所をつくる

・「キーインサイト」をマーケティングの起点とすることで、コンバージョン(態度変容)を高める

消費者が態度変容した理由と因果をデータベース化する

SOOTHでは、消費者の「態度変容」を「視る・聴く・臭う等の五感で感じ、無意識に望んでいることをツクりだす」と定義する。

企業のマーケティング担当者(マーケター)が消費者の無意識に訴求できれば、消費者の態度を変えることができる、と考える。マーケターたちがそれを自由に扱うことができれば、マーケティングは成功する。それは消費者の無意識に気持ちの良い体験をするかだ。

ITとネットがこれだけ発達した現代なら、経営者もマーケターも、コンバージョンの結果はリアルタイムで把握することができる。しかし、経営者やマーケターが知りたいのは、消費者がコンバージョンに至った理由や因果であり、理由や因果のデータベースだ。

SOOTHは、「理由と因果のデータベース」を、顧客企業に示唆、提案、構築している。

これだけ高度なサービスを提供するために、SOOTHは「設計→調査→制作・実装→(再)設計へ、一気通貫で取り組むシステムの提供」を心がけている。

SOOTHのサービス内容は、ニーズ調査、ターゲットインサイト調査、出口となるクリエイティブ、メッセージ開発、コンテンツ制作(テレビCMやWebCM)などとなっている。

KPI6倍(昨対比)にしたソリューションサービス

SOOTHが消費者の無意識・深層領域にアプローチするツールのひとつが、イヤホン型の脳波センサーデバイスだ。外観は補聴器に似ていて、耳にかけるだけで脳波を測定できる。

脳波センサーデバイスで集めたデータは、パソコンなどにリアルタイムで送ることができる。またその状況をリアルタイムでわかりやすくモニターに表示することもできる。

脳波センサーデバイスを活用した「ホンネを見える化」のソリューションサービスはすでに12社が採用していて、現在でも頻繁に引き合いがきているという。

この脳波センサーデバイスも含めた独自の「テクノロジーとコミュニケーション戦略策定ツール」を駆使したマーケティング支援の成功事例を紹介する。

SOOTHはある住宅メーカーから、マーケティングについて次のような相談を受けた。

・展示会来場者数を「真水」ベースで増やしたい

・「クラスター」ごとに刺さるメッセージをつくって当てたい

・消費者とのコミュニケーションを最適化したい

「真水」ベースとは聞き慣れないワードだが、住宅メーカーの意図するところはこういうことだった。

住宅関連のテレビCMといえば、「豪華な家に奇麗な奥さんがいて、元気で素直な子供たちが遊び、それをモデルのような精悍な夫が温かく見守る」といった内容が多くあるが、こうしたテレビCMをこの住宅メーカーは「スタイリッシュすぎる」と感じていた。そして、そういう非現実的(=消費者が他人事と受け止めてしまう)なイメージでのアプローチではなく、リアル(=消費者が自分事化する)な具体的なアプローチ手法を求めていた。

つまり、この住宅メーカーは、自社の展示会に「たまたま来た」人や「なんとなく来た」人ではなく、広告を通じた消費者とのコミュニケーションにより「あの展示会に行きたい」と強い目的意識を持った人に来てもらいたいと思っていたのだ。この目的意識が高い人こそ「真水」というわけだ。

SOOTHは映像制作もしていて、WebCM3本とテレビCM1本 計4本をつくった。

消費者が自分にとって価値があると理解するキーインサイトへの働きかけは、ターゲットの趣味嗜好を勘案した3種類のWebCMを中心に「自分事化」の促進を行った。そのWebCMの中から最もマスに響きそうな総論的なものをTVCMに「格上げ」した。WebCMを視た人がテレビCMを視ると、態度変容度(購入意向など)が大きくなることを想定していたので、従来とは異なるコミュニケーション戦略を策定・提案した。

結果、この住宅メーカーのマーケティングKPIの一つである展示会のWeb予約は昨対比6倍になった。

格安で「説明用アニメ動画」をつくるYONOHI

SOOTHのプレゼンに続き、スタートアップピッチが始まった。

スタートアップピッチで最初に登壇したのは、株式会社YONOHIの代表取締役、山岡優樹氏。

山岡氏は冒頭、第1部の「IoTとスマートホーム」について、「とてもわくわくさせられる話だったが、IoTの話はレベルが高く、わからないと感じる人も多いのではないか」と言及した。

そして、「当社は、レベルの高い話を、わかりやすいアニメにする会社」と自社紹介をした。

YONOHIのアニメ制作サービスのブランド名は「TSUTA-WORLD」。

TSUTA-WORLDは「説明用アニメ動画」の一種で、企業が展示会に参加したときにブースにモニターを設置し、来場者に視聴してもらうというものだ。説明用アニメ動画をユーチューブにアップすれば、不特定多数の人々に自社の製品やサービスをPRすることができる。

バングラデシュ制作で大手の75%オフ

TSUTA-WORLDの最大の売りは、動画制作大手の75%引きの価格でアニメをつくることができるという価格の安さだ。

YONOHIによると、一般的な説明用アニメ動画は、大体50万~80万円であり、その75%引きは12.5万~20万円となる。

安さの秘密は、バングラデシュで制作しているということにある。驚くことに、日本語が分からないバングラデシュ人が、日本企業用の説明用アニメ動画を作っているのだが、そこでは、バングラデシュの公用語であるベンガル語を話せる日本人が駐在し、翻訳を行っている。

20分の説明を3分のアニメにする

YONOHI は安さだけでなく、TSUTA-WORLDのクオリティにも自信を持っている。山岡氏によると「企業が20分を要する説明を、3分のアニメで説明することができる」という。

アニメの台本は、日本人の構成作家や放送作家、舞台作家が顧客企業にヒアリングして書く。彼らは、シンプルな内容を心がけ、対象商品の特徴だけにフォーカスを当てる。

また、幅広い年代の人たちが理解できるよう、平易な言葉を使うようにしている。

YONOHIが、あるWebサービス会社向けに説明用アニメ動画をつくり、それを200人に視聴してもらいアンケート調査を行った結果、90%以上の人が「Webサービスの内容を理解できた」と回答したという。

人は理解できないと悪意を持つ?

山岡氏は、企業が自社の製品やサービスを説明用アニメ動画を使って消費者に説明すれば「好かれる第1歩になる」と力説する。

YONOHIは別のアンケート調査で、「理解できない商品」に出会ったとき、その商品に「悪意」を感じる人は85%に上るという結果を得ているが、その「悪意」とは「大声をあげたくなる」「ストレスが溜まる」「眠くなる」といった内容である。

つまり、相手に理解させることができないと、コミュニケーションはマイナスからスタートすることになる。

企業が自社の製品やサービスを「下手に説明」してしまうと、嫌われる可能性がある、ということだ。

下手に説明するくらいなら説明しないほうがよい、ということであり、これが、簡単に理解できる説明用アニメ動画の最大の強みでもある。

ブロックチェーンで美術ビジネスを展開するミリミリ

株式会社ミリミリのCMO(最高マーケティング責任者)、菅野康一氏は、ブロックチェーンを使って日本と世界の架け橋になる「ジャパンプラットフォーマー」構想を紹介した。

ブロックチェーンは、仮想通貨(暗号通貨)で使われている次世代型コンピュータシステムであるが、現代ではその他のビジネスでも流用されている。

ミリミリが注目しているのは、6.57兆円の市場規模を誇る世界の美術業界と、37.1兆円の日本の隠れ資産、そして、1.49兆円の日本のアニメ市場だ。

ミリミリは、こうした市場において、アメリカのハリウッドですでに事業を展開しているという。

ミリミリが提供するソリューションは、1)コンテンツ業界の収益不足の解消と2)新たな海外チャネルの開発、そして、3)贋作や違法コピーの撲滅である。こうした事業を、世界160カ国で展開している。

菅野氏は、プレゼンの中でブロックチェーンの基礎知識について紹介した。

ブロックチェーンには

・非中央集権の仕組み

・信頼なしで安心して使用できる仕組み(トラストレス)

・来歴追従できる仕組み(トレーサビリティ)

・自由取引、自由契約による経済の民主化の仕組み(スマートコントラクト)

・世界同価値の直接取引の仕組み(マイクロペイメント)

という5つの特徴があり、今、「3.0」世代にあるという。

1.0はトークン発行、送金、寄付、投銭、IEOプロジェクト。

2.0は簡易証明、貿易、株式、ストックオプションの簡易化。

3.0は高精度セキュリティを実現して、宝飾品、ブランド、古美術、アート、伝統工芸の売買だ。

ミリミリは「ブロックチェーン3.0」にコミットしている。

コーヒーで「職場を最高の環境」にするCrack Roaster

Crack Roaster合同会社の代表、小野シンジ氏は開口一番、「当社が実現したい世界のキーコンセプトは『職場を最高の環境へ』です」と述べたが、Crack Roasterは、バリスタが淹れる本格コーヒーで職場環境を最高にしようとしている。

小野氏は会場の参加者に向かって「この中で、『自分の職場こそ最高の場所だ』『この場所なら24時間ぶっ続けで働くことができる』と感じている人はいますか」と尋ねた。当然ながら、手を挙げる人はほぼいない。

それに対し、小野氏は次のように続けた。

「そうですよね。つまり、現在の職場は最高の環境ではない、ということです。職場はもっと改善できるはずです。私たちは、コーヒーというオーソドックスなアイテムで、すべての働く人に快適さと豊かさを提供したいのです。」

Crack Roasterは2019年1月に設立された企業であり、事業内容は「最高の職場にする」ことと「快適に働ける環境づくりのお手伝い」となっている。

顧客企業は、上場企業4社を含む約30社に上る。

同社のサービスは次の2つ。

・企業のキッチンエリアやイベント会場などにバリスタが赴き、ドリップコーヒーを提供するサービス

・コーヒーマシンを企業へレンタルし、月額定額制でコーヒー豆をお届けする福利厚生オフィスコーヒーサービス

コーヒーマシンサービスでは、本格コーヒーながら1杯100円程度と低価格の設定だ。使用するコーヒー豆は、職人技を有する焙煎士に焙煎してもらったものであり、必要量だけ焙煎するので、新鮮さが段違いであるという。

月額契約で、30人程度の企業向けの月200杯コースや、50~100人程度の企業向けの月300杯コースなどがある。

まとめ~可能性を知る

スタートアップピッチの前に登壇したSOOTHは、大きな実績を挙げている。脳波を「気軽に」測定することで、消費者の無意識にアプローチするマーケティング手法には、会場からも驚きの声が上がった。

スタートアップピッチで登場した3社のプレゼンの内容は可能性を感じさせるものであった。

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