AI(人工知能)とは、なんなのだろうか。最も簡単な答えは「AIは便利なもの」である。
ではAIは生活を変えるのだろうか。「AIは確実に生活を変える」
ではAIによって変わる生活は、よいものなのだろうか。「よいものになるだろう」
無論AIにも負の要素はある。しかし副作用は、どの科学技術でも生じてきた。例えば自動車が開発されたことで、交通死亡事故が社会に誕生した。
ただ本稿では、あえてAIのよい面に焦点を当て、負の面はあまり触れない。AIの負の側面は別の機会に考察したい。
続きを読む4つの答えがある
AIとは便利なものである、と紹介したが、ではなぜAIは便利なのだろうか。そしてAIの便利さは、人々の生活にどのようなよいことをもたらすのだろうか。
その答えは次の4つである。
ひとつずつみていこう。
ガンダムはAIではないがアトムはAIである
まだAIに触れたことがない人や、AIの解説記事を読んだことがない人は、AIが「なんなのか」がわからないのではないだろうか。
コンピュータやインターネットなどのことをIT(情報技術)と呼ぶ。AIはITの進化版といってよい。AIは技術の名称で、その技術はコンピュータに搭載される。
コンピュータがこの世に誕生したころ、人の知能のような能力をコンピュータに搭載できることができるか、というテーマが出された。そのとき、「これ」ができたら「コンピュータが知能を持った」といえる、というものが決まった。
壁で仕切られている2つの部屋があり、1つ目の部屋には会話ができるコンピュータと人間が1人いる。2つ目の部屋には別の人間が1人いる。
2つ目の部屋の人が隣の部屋に話しかけて、コンピュータまたは人がそれに答えるが、2つ目の部屋の人にはどちらが答えたのかは知らせない。
コンピュータが回答しているのに、2つ目の部屋の人が「人と会話している」と勘違いしたら、そのコンピュータは「知能を持った」と認定できる、とした。
現代のAIは、この試験をほぼ完璧にクリアできたとされている。
有名なロボットアニメに、アトムとガンダムがあるが、アトムはAIが使われていると考えることができるが、ガンダムにはAIは搭載されていない。
アトムはお茶の水博士たち人間と会話することができる。これはAIを使わないと実行できない。
しかしガンダムは、人がロボットのなかに入って操縦しないと動かないのでAIではない。ガンダムはいわば超高性能なパワーショベルのようなものである。
AIは分析と法則の発見しかしないが限りなく「考えている」に近付く
AIは「考えている」のだろうか。答えは、「AIは考えてはいない」となる。しかしAIは膨大なデータを分析することができる。そして分析結果のなかから法則をみつけ出して、それを人に伝えることができる。
分析をして法則をみつけているだけだが、その分析力と法則の発見の正確さがすさまじいので、あたかもAIが「考えている」ようにみえる。
AIのパフォーマンスを初めて目の当たりにした人でも驚くのは、まるで人間の思考のようにみえるからだ。
人間とAIが同じ課題に挑戦し、実際に考えた人間の答えが間違っていて、AIが出した答えが正答であることがある。正しい答えを求めている人は、AIに価値を置くだろう。
つまり、大量のデータを分析して正しい答えを導き出すことは、ときに考えることより高い価値を持つこともあるのだ。
これが人々がAIに価値を見出す理由である。
ではAIはどのようにして大量のデータを分析し、法則をみつけているのだろうか。
まず大量のデータの分析であるが、これはAIを搭載していない非AIコンピュータでも可能だ。例えばスーパーコンピュータが史上最大の素数を発見するとき、大量のデータを処理している。データ処理のことを「計算」と呼ぶこともある。
AIの真骨頂は法則の発見だ。これは「機械学習」や「ディープラーニング」という特別な技術を使うことで可能になる。
非AIコンピュータは、1,000枚の写真から犬の写真だけを選べという簡単な課題にも答えられない。これは分析結果から法則をみつけだすことができないからである。
機械学習の技術を搭載したAIコンピュータなら、「これは犬ではなく猫」「これも犬ではなくキツネ」といったことを学習させると、次第に1,000枚の写真のなかから犬の写真だけを選べるようになる。
天気予報についても同じことがいえる。
非AIコンピュータでも、雲の広がりと雲の進行方向と進行速度を予測することができる。しかしこれは、操作者が条件設定をして、「この条件のときに雲はどう動くか」と非AIコンピュータに計算させているだけである。
一方、AIコンピュータには条件設定をする必要がない。AIコンピュータに与えるのは膨大な量の過去の気象データと学習である。AIコンピュータは、膨大な過去の気象データのなかから、特定の場所の特定の時期の雲の動きの法則をみつけるのである。
したがって非AIコンピュータは原則、条件設定をした操作者やそのコンピュータの開発者の知能を超えることはない。
しかしAIは操作者や開発者の知能を簡単に超えることができる。
AIが囲碁や将棋のトッププロを打ち破ったが、囲碁AIや将棋AIの開発者がトッププロと囲碁や将棋で対戦してもまったく歯が立たない。
AIは人々を雑務や嫌な仕事から解放する
AI時代は、生活も仕事も快適になるだろう。それは人々が雑務や嫌な仕事から解放されるからだ。多くの人がしたがらない仕事でありながら、社会でどうしても必要な仕事の多くを、AIに任せることができるようになるだろう。
「AIに仕事を奪われる」と考えないほうがよい
「仕事をAIに任せることができる」というポジティブ表現は、「AIに仕事を奪われる」というネガティブ表現に置き換えることもできる。
しかし「AIに仕事を奪われる」という考え方はしないほうがよいのではないか。
例えば自動車は、馬車や人力車を動かす人の仕事を奪っているが、この現象をネガティブにとらえる人は現代では少数派だ。仮に自動車は場所を動かす人の仕事を奪ったと考えてしまうと、科学の進歩の歴史は、人から仕事を奪う歴史になってしまう。
電話のシステムが進化したことで電話交換手の仕事がなくなったし、ガソリンエンジンが開発されたことで石炭の採掘作業員が仕事を失った。それでも電話の進化やエンジンの進化を否定する考え方は主流になりにくい。
職業や仕事がなくなることと、労働が喪失することは同じではない。より生産的な考え方は、AIを使って新たな仕事やビジネスを創造することである。
負の部分
本稿の目的はAIのよい部分に光をあてることであるが、まったく負の部分に触れないわけにもいかないだろう。
AIが進化することの最大の懸念は暴走だ。非AIのコンピュータであれば、最大の損失は起動停止にとどまる。コンピュータに依存する社会になってしまった今、起動停止だけでも相当な損害を被るが、AIの暴走による想定被害はそれを上回るだろう。
なぜならAIは判断を創出するからだ。現在はまだ、重大な判断をAIに任せている企業や行政機関などはほとんど存在しないが、AIの精度が高まればAIが導き出した答えをそのまま実行する組織や人が現れるだろう。
そうなるとAIが暴走して間違った答えを出してしまうと、世の中に間違った判断が氾濫することになってしまう。
まとめ~AIの正体を正しくとらえよう
インターネットを使えばレンタルビデオ店に行かなくても、自宅で好きなときに好きな映画をみることができる。これは誰もが当たり前に行っていることだが、インターネットがなぜ自宅のテレビに映画を映し出すことができるかを知っている人は少ない。映画どころか、なぜインターネットで遠くの人と文字の交換ができるのか、を説明できる人も少ないだろう。
AIも早晩、そのような技術になるだろう。「AIがなんなのか」を知らなくても、子供からお年寄りまでAIを使いこなせる時代がくる。
ただそれでも「AIとはなんなのか」とは、問い続けたほうがよいだろう。自動車には自動車事故が、スマホにはスマホ依存症が、薬には副作用があるように、科学技術にはネガティブな要素が必ずつきまとうからだ。「AIとはなんなのか」を考えながらAIを使うことで、AIによる弊害を最小限にできるかもしれない。
<参考>
- 4年前の「AIがチューリングテスト合格」騒動は何だったのか (1/3)
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1807/26/news014.html - 「史上最大の素数」、更新される
https://wired.jp/2016/01/22/discover-your-own-prime-number/
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