令和時代のビジネスは確実にAI(人工知能)とともに歩むことになるだろう。したがって、非AI企業の非AI部署に所属しているビジネスパーソンであっても、「もうAIから逃げられない」と感じているころではないだろうか。
その危機意識は正しい。
AIについての基礎知識を身につける覚悟ができた人は、次の5冊に挑戦してみてはいかがだろうか。「予備知識をそれほど必要とせず、しかし近未来の日本のビジネスにAIがどのように関わるかがわかる内容」というコンセプトで厳選した。
続きを読む人工知能が変える仕事の未来
AIが変える世界をポジティブにとらえたい人にすすめたいのは、「人工知能が変える仕事の未来」だ。この本のデータは次のとおり。
著者:野村直之
出版社:日本経済新聞出版社 価格:2,376円 |
ビジネスパーソンはそろそろ「AIに仕事を奪われる」という後ろ向きの議論を終了させたほうがいいのではないか、と考えている人は少なくないだろう。インターネットや携帯電話やスマートフォンは仕事を変えたが、元号が新しくなった今「ネットに仕事を奪われた」と恨み節をいう人は少数派のはずだ。
AIについても、そろそろ「AIを使わない非合理なプロジェクトチームに加わりたくない」という人が現れるだろう。
本書の最初のテーマは、AIがホワイトカラーと経営者の仕事はどのように変えるのか、である。AIができることと、AIでは置き換えられないことがわかるので、AI初学者の頭の整理に役立つだろう。
著者は続いて、医療、監視、広告、農林水産業といった非AIセクターがAI化されるとどうなるかを予想する。医療は予算の膨張、監視はプライバシー侵害問題、広告業は過労、農林水産業は後継者問題、といったように、それぞれ大きな課題を抱えている。そのような社会常識的な予備知識があると、非AIセクターのAI化は「明るい未来」にみえてくるに違いない。
本書のハイライトは、AIが経済と法律と国際社会をどのように変えるのか、という考察だ。日本のIT業界はまず、AI開発でアメリカと中国に追いつかなければならないだろう。それは産業界に課せられた使命であるばかりか、大きな政治課題にもなってくるはずだ。したがって従来の自動車産業や家電産業のように技術力だけ追求しても、AI覇権は握れない。AIを使ってどのような未来を描くのかを考えながら、進歩していかなければならない。
著者の広い視野と全方向性の考察には感服する。
人工知能はこうして創られる
「第一線のAI研究者・開発者たちは何を考えているのか」を知りたい人にすすめたいのは、「人工知能が変える仕事の未来」だ。この本のデータは次のとおり。
著者:合原一幸、牧野貴樹、金山博、河野崇、木脇太一、青野真士
出版社:ウェッジ 価格:1,620円 |
グーグル、IBM、東京大学など、AIの第一人者たちが入れ替わり立ち代わり最新の知識を提供してくれる。ひと口に「AI」といっても、研究者や開発者によってこれほどの切り口が変わるのかと驚く。
一般の人にとって、IT企業がAIを開発するのは、当然のことと映っているに違いない。もちろんIT企業の開発者たちも「ITをやっている自分たちがAIをやらなくてどうする」という気概を持っているはずだ。
しかし本書を読むと、ITとAIは、軽自動車とF1マシンくらい違うことがわかる。それくらいAI研究者は今、新しく、そして未知なるものに挑戦している。
脳型コンピュータや自然界から着想を得たナチュラル・コンピューティングの話を読みながら、「コンピュータからITになり、AIに進化して生物に戻るのか」と不思議な感覚にとらわれた。
一般の人向けの内容でありながら、ここまで徹底的に研究者目線と開発者目線を貫いたAI本も珍しいのではないか。
ビジネスパーソンのための 決定版 人工知能 超入門
「なぜビジネスにAIが必要なのか」と不思議に思っている人にすすめたいのは、「人工知能が変える仕事の未来」だ。この本のデータは次のとおり。
編集:東洋経済新報社
出版社:東洋経済新報社 価格:1,404円 |
なぜAIが世間で騒がれているか、なぜAIが必要なのか、がわかっていないビジネスパーソンは少なくない。なぜなら、社内ではITですらまだ行き渡っていないからだ。ビジネスパーソンはさまざまな雑務を抱えていて、それらはシステムを導入すれば効率化できるのだが、社内にそのような予算はないし、そもそも経営者がシステム化の意義を理解していない。
そのような環境下にあるビジネスパーソンにとっては、AIは「ITの次のこと」と映るので、まずはIT化を進めてほしいと感じているはずだ。
しかし実際はそうではない。IT化されていない企業こそ、一気にAI化してしまったほうが効率的だし低コストだ。
本書のサブテーマは「なぜ企業戦略にAIが必要なのか」「AIを導入しないと企業はどうなるのか」「AIをビジネスに活かすには何が必要なのか」となっている。
AI素人を自認しているビジネスパーソンは、まさしくそれが知りたいところなのではないだろうか。
本書はいわゆる「とっつきやすい」テーマが多いので、予備知識を必要とせず読み進めることができる。例えば将棋の羽生善治氏とAI研究の第一人者、松尾豊氏の対談がその好例だろう。
また、AI企業といえば、アメリカのベンチャー企業や中国のスタートアップが注目されるが、本書に登場するAI関連企業は、グーグル、GE、トヨタ、NEC、富士通、シーメンス、ボッシュ、ソフトバンク、コマツなど、AI音痴を自認するビジネスパーソンでも知っている名ばかり。
「この企業ですらここまで真剣にAIに取り組んでいるのか」と感じながら読み進めていただきたい。
まるわかり! 人工知能 最前線 2018
「短い記事をたくさん読みたい」という人にすすめたいのは、「人工知能が変える仕事の未来」だ。ムック型式だから、読みたい記事だけを飛ばし読みすることができる。
この本のデータは次のとおり。
編集:ITpro、日経コンピュータ、松山貴之
出版社:日経BP社 価格:2,592 |
本書の狙いは、とにかくAI最前線を紹介することである。日本経済新聞社系の日経BPから出ているムック、といえばそれだけでイメージがつかめるだろうか。さながら、日経BPのAI取材の集大成といった本である。
非IT・非AIの大企業のAI化は、平均すると準備段階を終えたところだろうか。それとも、部長クラスがようやくAI投資の必要性を感じ始めたころだろうか。
いずれにしてもAIを本業に組み込んでいく段階に到達していることは間違いないはずだ。
AI最前線といっても最近は間口が広くなっていて、本書はそれに対応している。
本書を読めばAIを使ったコミュニケーションツールから、AIに関する倫理まで、現場の人たちが「今考えていること」を抑えることができる。
人間の未来 AIの未来
「AIの切り口からはAIの世界に入りたくない」という人にすすめたいのは、「人工知能が変える仕事の未来」だ。iPS細胞の開発でノーベル生理学・医学賞を受賞した山中伸弥氏と国民栄誉賞を受賞した将棋の羽生善治氏の、非AIの2人よるAI対談である。
この本のデータは次のとおり。
著者:山中伸弥、羽生善治
出版社:1,512円 価格:講談社 |
講談社の企画らしい豪華な布陣だが、なぜ医療界と将棋界の第一人者にAIを語らせたのだろうか。
その答えは「ひらめき」と「勘」である。
もちろん山中氏も羽生氏も努力の人である。したがってこの2人を、ひらめきの人、あるいは勘がよい人としてしまうのは気が引ける。ところが2人の話に耳を傾けていると、日本のAIが、現代の自動車業界やかつての半導体業界のように世界で圧倒的な地位を獲得するには、ひらめきと勘に頼るしかないのではないかと感じてくる。
ひとつの分野に秀でると世界のすべてがみえてくるものなのだろう、と感心しながら読み進めることができる。
2人の話題は、世界で通用する人材づくりや、人類は不老不死を達成できるのか、といったところまで飛び火する。この大きなテーマとAIがどのように関わるかは、ここでは明かさないでおこう。
まとめ~5冊まとめて買ってしまおう
ここで紹介した5冊は一気にまとめ買いすることをおすすめする。今「AIを学ばなければならない」と感じている人は、AI時代に備えている人より少なくとも半周は差がついている。そしてAIは、秀逸なサイトを複数個みつけることができれば別だが、ネットで学ぶには限界がある。
そして一気に5冊読めば、AIの肝がみえてくる。そこまで昇ってしまえば、あとはネット情報で地道に知識を増やしていくことができる。しかもこの5冊は、平易な文章で書かれているが最新かつ最高のAI情報が詰まっている。これほど優秀なAI教師もいないだろう。
最新のハイテク技術を超アナログな紙の本で学ぶのも奇妙だが、迷うくらいなら買ってしまおう。
<参考>
- 人工知能が変える仕事の未来
https://www.amazon.co.jp/%E4%BA%BA%E5%B7%A5%E7%9F%A5%E8%83%BD%E3%81%8C%E5%A4%89%E3%81%88%E3%82%8B%E4%BB%95%E4%BA%8B%E3%81%AE%E6%9C%AA%E6%9D%A5-%E9%87%8E%E6%9D%91-%E7%9B%B4%E4%B9%8B/dp/4532320631 - 人工知能はこうして創られる
https://www.amazon.co.jp/%E4%BA%BA%E5%B7%A5%E7%9F%A5%E8%83%BD%E3%81%AF%E3%81%93%E3%81%86%E3%81%97%E3%81%A6%E5%89%B5%E3%82%89%E3%82%8C%E3%82%8B-%E5%90%88%E5%8E%9F%E4%B8%80%E5%B9%B8/dp/4863101856 - ビジネスパーソンのための 決定版 人工知能 超入門
https://www.amazon.co.jp/dp/4492970274?tag=dcamster-22 - まるわかり! 人工知能 最前線 2018
https://www.amazon.co.jp/dp/4822259803?tag=dcamster-22 - 人間の未来 AIの未来
https://www.amazon.co.jp/%E4%BA%BA%E9%96%93%E3%81%AE%E6%9C%AA%E6%9D%A5-AI%E3%81%AE%E6%9C%AA%E6%9D%A5-%E5%B1%B1%E4%B8%AD-%E4%BC%B8%E5%BC%A5/dp/4062209721
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