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自動車におけるAI活用事例 〜海外編〜

AI(人工知能)は様々な産業に変革をもたらすと言われていて、自動車産業はその筆頭である。自動運転車とAIがどのようにマッチングしていて、近い将来の自動車がどうなるのか。海外の事例をみてみよう。

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AI(人工知能)は様々な産業に変革をもたらすと言われていて、自動車産業はその筆頭である。世界の自動車メーカーの関心事はいま、自動運転車に向かっている。いち早く完全な自動運転車を完成させたメーカーが、次代の覇者となる。

その自動運転技術に、AIは欠かせない。

自動運転車とAIがどのようにマッチングしていて、近い将来の自動車がどうなるのか。海外の事例をみてみよう。

そもそも自動運転車とは

そもそも自動運転車とはどのようなものなのか。

人が自動車に乗り込み、自動車が「ご主人様、今朝はどちらに向かいますか」と尋ねる。乗車した人が目的地を告げると自動車が勝手に走り出してくれる。乗車者は新聞を読みながらコーヒーを飲んでいればよい――これが自動運転車の究極の姿だろう。

しかし「自動運転車なんて、まだまだ心配」と考える人も少なくない。そのような人は「機械やコンピューターはまだ間違いが多い」ということを知っているからだ。

確かに自動運転車はまだ完全ではなく、自動運転車が死亡事故を起こしたこともある。この死亡事故についてはのちほど紹介する。

不完全ながら人を追い抜きつつある

自動運転車に課題が多いのは事実だが、それでも特定の運転技術においては、すでに人よる運転よりはるかに安全になっている。

運転席に座った状態の人の視界には死角ができるので、バックミラーやドアミラーを使っても見ることができない物体が多数存在する。大抵の運転者は死角になっている場所にも自動車を走らせて行く。なぜなら、その場所が死角になる前に「そこに何もない」ことを確認しているからだ。つまり人による運転は、ある程度「記憶」に頼っている部分があるのだ。

しかし現代の自動運転車は、センサーで自動車の周囲の把握しながら走行している。そこに障害物がないことを、いわば「目視」して走っていくのである。

「記憶」を頼りに走るより、きちんと「目視」しながら走ったほうがはるかに安全である。

また、運転者は見ている方向以外の視覚情報を拾うことはできないが、自動運転車はすべての方角の視覚情報を集めることができる。

なぜAIが必要なのか

自動運転の技術には、AIが搭載されてないものとAIが搭載されているものがある。AI未搭載の自動運転車でも、そこそこ安全である。

例えば走行中の自動車の前の突然障害物が現れて、自動車のセンサーがそれを感知して自動ブレーキをかければ事故は防ぐことができる。障害物の感知にも、感知後にブレーキをかけることにもAIは必要ない。

また、高速道路で前を走る自動車に一定の車間距離を確保して追従する自動走行システムも、センサーと自動アクセル機能があればよく、AIは必要ない。

なぜ自動運転技術にAIは必要なのだろうか。

自動にアクセルを踏めば自動運転車になるわけではない

例えば自動車を運転しているときに、A4のコピー用紙が1枚ひらひらと飛んできたとする。このとき運転者は、あわててブレーキを踏む必要はない。むしろ紙1枚は交通障害にならないから、そのまま走行してしまったほうが安全である。

しかしサッカーボールが突然道路に飛んできたらどうだろうか。このとき運転者は「子供が飛び出てくるかもしれない」と予測して急ブレーキをかけるだろう。

A4のコピー用紙とサッカーボールを区別して認識しないと、安全な走行はできないのである。ところがセンサーはこの区別が苦手である。

自動運転車のセンサーを「道路に突然、物体が現れたら急停止する」と設定してしまったら、秋の落ち葉が舞う道路を走ると急停止と再発進を何度も繰り返すことになってしまう。

かといって「道路に飛び出してきた小型の物体は無視してよい」と設定してしまったら、その後に飛び出てくる子供と衝突してしまうかもしれない。

このように、完全な自動運転車と呼ばれるようになるためには、自動でアクセルとブレーキを踏めばよい、というだけでは足りないのである。

そこでAIが必要になる。AIの場合、原則、人が設定することはない。AIにはディープラーニング(深層学習)という機能が備わっているので、AI自身が学んでいく。人はAIに多数の物体の写真や多数の事故シチュエーションを見せればいいのである。それでAIが危険な物体と交通障害を起こさない物体を学ぶのである。

 テスラのいまの自動運転車

自動運転システムと電気自動車(EV)はとても相性がよい。自動運転システムもEVも電気で制御できるからだ。

そこでEV大手であるアメリカのテスラは、自動運転でも先進的な技術を取り入れている。

自動運転中の死亡事故にについて

テスラの自動運転車を紹介する前に、2018年3月に発生した痛ましい死亡事故についてみておく必要があるだろう。テスラの自動運転車を運転していた男性が、中央分離帯に激突して死亡したのである。

テスラは事故車の記録を分析し、自動車が事故の5秒前に警告を発していたにも関わらず、運転者がハンドルを操作していなかった、と説明している。つまりテスラは、自動車の安全機能は作動していたので、事故は人為的なミス、と言いたいのだろう。

ただこの事故を報じたロイター社は、テスラは自動運転車が中央分離帯を検知して回避しなかったことを説明していないため自動運転技術に疑問符がつく、と批判している。

この事故の原因究明は時間がかかりそうだ。

8台のカメラとレーダーと超音波で全体を把握する

テスラの自動運転車には、6代のカメラと、それぞれ1台ずつの超音波とレーダーが搭載されている。つまり計8個の目がついているようなものだ。

しかもこの1個1個の目はとてつもない能力を持っていて、最長250メートル先まで「見て」物体や標識を「認識」する。すでに人の「見る」能力と「認識」能力を、ある意味で超えている。

テスラの自動運転車は、発進、加速、減速を自動で行い、歩道に人が歩いていれば徐行し、一時停止ラインで停止し、信号のない交差点でほかの自動車の走行状態を見計らって左折(日本の右折に該当)し、駐車場に入って縦列駐車をこなす――というレベルにまで達している。

テスラは、同社の自動運転技術「エンハンスト オートパイロット」の安全性は将来、人による運転の2倍と豪語している。これは先ほど紹介した死亡事故後も撤回していない。

【ドイツ】アウディのいまの自動運転車

ドイツの高級車メーカー、アウディは2017年10月に、上級モデルA8にレベル3の自動運転システムを導入すると発表した。「レベル」とは、アメリカの自動車技術協会(SAE)が示している自動運転車の能力判断の「ものさし」である。レベル1から5までは次の通り。

レベル5:すべて自動化
レベル4:一定の環境下ならすべて自動化
レベル3:自動運転システムが運転し、人はシステムの要求に応じて対応する
レベル2:ハンドルとアクセル、ブレーキなどは自動化だが「人が運転」している
レベル1:ハンドルとアクセル、ブレーキなどが運転者をときどき助ける

アウディでもレベル5までには数年はかかる

アウディと言えば先進技術をいち早く取り入れる自動車メーカーの1つだが、それでもレベル5の自動運転車をつくるにはまだ数年はかかるとしている。

ではA8に搭載されるレベル3の自動運転技術「AIトラフィックジャムパイロット」はどのような内容なのだろうか。

高速道路を時速60kmで走行しているときに手足を離せる

新しいA8は、中央分離帯のある高速道路を時速60km以下のときに、自動車が主体となって運転できるとしている。時速100km以上の高速走行時や、信号があったり歩行者がいたりする街中では走行できないが、やや混雑している高速道路なら可能、ということだ。

ドライバーがAIボタンを押すとアクセルから足を離すだけでなく、ハンドルから手を離すことも可能である。ドライバーは運転以外のことができる。

ただ、走行に集中する必要はあって、自動車がドライバーに「声」をかけたときは、ドライバーが操縦を代わらなければならない。

まとめ~日本車は米独を追う立場

日本メーカーは自動運転でもEVでも世界のトップではない。それはメーカーの開発力だけでなく、規制が厳しく公道での試験がなかなか許されない法律事情も影響している。日本がアメリカやドイツのAI自動運転車に追いつき追い越すには、官民が協力して推進していく必要があるだろう。


<参考>

  1. 自動運転にAI人工知能は何故必要なのか?【ボッシュ・モビリティエクスペリエンス2017レポートvol.3】(AutoProve)
    https://autoprove.net/supplier_news/bosch/50695/
  2. 米テスラ、「自動運転モード」作動中に初の死亡事故 (日本経済新聞)https://www.nikkei.com/article/DGXLASGN01H0T_R00C16A7000000/
  3. テスラ車「モデルX」の衝突死亡事故、運転支援機能が作動中 (REUTERS)
    https://jp.reuters.com/article/tesla-safety-idJPKCN1H81IZ
  4. テスラ車、高速道で死亡事故 半自動運転機能搭載 (毎日新聞)
    https://mainichi.jp/articles/20180329/k00/00e/020/265000c
  5. ウーバーとテスラの自動運転死亡事故の日本への教訓とは (DIAMOND)
    http://diamond.jp/articles/-/166175
  6. TESLA
    https://www.tesla.com/jp/autopilot
  7. 国際ルール難航、自動運転走らず (日本経済新聞)
    https://www.nikkei.com/article/DGKKZO28265280W8A310C1MM8000/
  8. 自動運転レベル3のアウディ「A8」、日本発売は2018年 (MONOist)
    http://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/1710/31/news036.html
  9. アウディ A6 新型、レベル3の自動運転が可能に…エヌビディアのAIコンピュータ採用 (RESPONSE)
    https://response.jp/article/2018/03/14/307221.html
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