これからAI(人工知能)をビジネスに活用したいが、AIのことがよくわからないという悩みは多くの人が持っている。しかしAIのビジネス利用は「AIに何ができるかを知っている」ことは大前提である。今回はAI、人工知能について、その歴史や最新のAIの仕組み、そしてビジネスへの応用などを解説した初心者向けの書籍を5冊紹介する。
続きを読むトコトンやさしい人工知能の本
まずは「今日からモノ知りシリーズ」の一つとして出版されている本から紹介する。このシリーズは本格的にその分野の開発者としてキャリアを積みたいと思ったときに、最初に読む本という位置付けで書かれていると言っても良い。
要素技術や応用技術までをやさしく解説しているため、「人工知能を使ったサービスやソリューションを考えよ」という社内ミッションを受けた人が学習するには向いている。特に第三世代の人工知能を語る上では避けては通れないディープラーニングについての内容も多く記載されている。
筆者も電気自動車や電気回路の専門的なコラムを書く際に、このシリーズの本を利用している。ある程度は別の本も参照しながら自分で調べようとする人や、多数のAI技術の基本的なロジックを把握したい人には便利な本である。だがデータサイエンスや数学(主に統計学)が苦手な人は、内容を理解するには若干難易度が高いかも知れない。
また、技術の応用先なども幾つか具体例が紹介されてはいるが、ビジネス上の活用例については余り記載が無い。そのため、ビジネス目的でAIの理解度を深めることを目的とする人には向いていない。
とはいえ、図、画像、イラストが多く、本格的に開発に携わる、もしくは開発者や研究者とガチで話をしたいのであれば、大変役に立つ本だと言える。
いちばんやさしいAI〈人工知能〉超入門
他の書籍と異なり、コラム的な書かれ方をしている本である。したがって、人工知能がどのようにして動いているのかを、様々な例を駆使しながら解説している。その意味では大変読みやすい本として仕上がっている。特に「どこまでが単純なコンピュータソフトで、そこからが人工知能と呼べるモノなのか」という線引き論などはしっかりと紹介されている。したがって、人工知能に関する様々な技術、用語、技術、そしてその特徴を基本から知りたい人には読みやすい書籍である。
一方、特にディープラーニングを中心に、かなり詳しい解説を文章だけでこなそうとしている部分があるため、文章を読み解く力や、理解を助ける図があるとはいえ、それなりに想像力をもって読まないと、途中で挫けてしまう可能性がある。
人工知能についての概要や歴史などを分かりやすく解説した書籍を読んだ後に手を付けた方が良いかも知れない。
だが、第2章で人工知能が導入されることによって影響を受ける職業を10紹介している部分については、これまでの経緯とこれからの動向についてしっかりと記述されているため、ビジネス面での利用イメージを付けやすい。
これだけは知っておきたい AIビジネス入門
帯の「はじめてでも、文系でも、用語と常識が完全にわかる!!」のうたい文句の通り、まずは巻頭トピックスでざっくりと全体概要を紹介している。
その上でChapter1から3までで、人工知能開発の歴史をなぞりながら、どの様に進化してきたのかを紹介し、Chapter4でディープラーニングの詳細を解説している。そしてChapter5では社会の中で人工知能がどのようなシーンで活用されているかという社会実装例を紹介し、さらにChapter6では、大手企業がどの様に人工知能を活用したビジネスに取り組んでいるのかを紹介している。その後のChapter7、8では今後の進化の方向性を概観している。
このように、人工知能の開発には直接関係しないものの、ビジネスとしてどの様な活用があり得るのかを知りたいという人に向いた書籍である。イラストや図も多く、用語もわかりやすく説明している。従って、社内で「AIを使った何かを新規で立ち上げろ」というオーダーを受けた人は、まず本書を手に取ることをお薦めする。
また、現在の開発が向かっている方向についても、自動運転車や感情分析などについての解説が入っている。それらを実現するために必要な要素や課題も概説されているので、人工知能を活用したサービスの提案をする際に役に立つと考えられる。
図解入門 最新人工知能がよ~くわかる本
本書は4章構成であるが、他の書籍と異なるのはあまり人工知能開発の歴史的な流れを意識せず、今、人工知能はどの様に使われていて、それを提供する大企業としてはどのような企業があるのかに第2章、第4章を割いている。つまり半分は活用事例と言って良い。特にIBM、Google、Amazon、Facebookといった大手の人工知能開発IT企業の事例も紹介されている。
一方、第1章で紹介している歴史部分はIBMのDeep Blueなど、チェスや囲碁などのゲームに特化したものを中心としているため、人工知能全般の開発の流れを把握するのは難しい。また第3章は用語集という位置付けになっているものの、ニューラルネットワークとディープラーニングの解説に偏っているため、これもエキスパートシステムなどを学びたい場合には、あまり役に立たない。
一方で、チャットボットを始め第三世代AIについてはイラストや画像をふんだんに使って、かなり詳細に解説されているため、人工知能に関する知識が既にある程度あるのであれば、この本を読むことで人工知能への理解度がさらに深まるはずである。また、ビジネスへの利用としてチャットボットの導入を検討しているのであれば、本書は役に立つはずである。
もし完全に初心者だがチャットボットについて知りたいということであれば、できれば別の解説本と併用するのが望ましい。
マンガでわかる人工知能
実は同名の書籍があるため、書名だけで調べるとどの本かわからないという事が起こる。今回紹介するのは池田書店が出版している「マンガでわかる人工知能」である。
他の「マンガでわかる」系もそうだが、やはりイラストが多くなる分、わかりやすい。本書では人工知能の開発の歴史を追いかけるような形で、「どんなことができるようになってきたのか」「今はどの様に使われているのか」「今後、どの様に使われると考えられているのか」を紹介している。
マンガで概要を説明した後、文章で詳細を補足しているので、その章で何を学び、その際に何がポイントなのかが大変わかりやすい。
また監修している三宅陽一郎氏は人工知能の専門家として、ゲームにおけるNPC(Non Player character)の会話エンジン開発を手がけていることもあり、どの様なことを実現させようとして開発が行われてきたのかもしっかりと解説されている。特にこれまでの開発が行き詰まってしまった理由などもわかりやすく解説されているため、人工知能開発の歴史と現在のトレンドを知りたい人にはお勧めである。初心者にもわかりやすいように用語もしっかりと解説されている点も、ポイントが高いと言える。
まとめ
今回は人工知能について学ぶ際に、初心者もしくは少しは知っているが…というレベルの人に向けた解説本を5冊紹介した。もちろん他にも多くの書籍が出版されているので、実際に書店で手に取るなどして、読み比べてみて欲しい。
だが、書籍を購入する上で重要なポイントは、「人工知能についての何を知りたいのか」を明確にしておくことであろう。開発の歴史や今後の開発の方向性を知りたい場合と、ディープラーニングについて詳しく知りたい場合、そしてビジネスで利用するために知りたい場合とでは、おのずと選ぶべき本も変わってくる。今回の5冊は、そういう意味ではバランス良く選択したつもりではあるものの、これを読んでいる読者に必ずしもマッチしているかどうかはわからない。
また、ディープラーニングや、その基礎になっているニューラルネットワークについては、詳しく学ぶつもりがあるのであれば、簡単な統計学の知識が身につく入門書を手元に置いておく方が良い。また、特徴量抽出についての概念を押さえるためには、ソシュールの言語学も、新書本で良いので手元に置いておくと、より理解を助けられるだろう。
<参考>
- AIや人工知能とはを考えるおすすめ教養本やビジネス書31冊(カグア!)
http://www.kagua.biz/review/book/culture-artificialintelligence-book.html#i-6 - AI本。AI関連書籍 26冊の徹底比較。さて、チャンピオンは?(Data Artist)https://www.data-artist.com/contents/ai-books.html
- 「トコトンやさしい人工知能の本」辻井潤一監修、産業技術総合研究所・人工知能研究センター編、日刊工業新聞社刊
- 「いちばんやさしいAI〈人工知能〉超入門」大西可奈子著、マイナビ出版刊
- 「これだけは知っておきたい AIビジネス入門」三津村直貴著、成美堂出版刊
- 「図解入門 最新人工知能がよ~くわかる本」神崎洋治著、秀和システム刊
- 「マンガでわかる人工知能」三宅陽一郎監修、備前やすのり画、池田書店刊
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