AI研究者海外

世界トップクラスのAI研究者達 〜海外編〜

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AI(人工知能)の研究・開発の牽引役は、チーム力より個の力であることが多い。もちろん多額の予算と長い時間を必要とするので、たった1人で研究を進めることはできないが、しかしある天才の発案でブレークスルー(障壁の突破)することが多い。

自動車産業や家電産業と異なり、AI業界はまだ手探りの部分が多いため、「独り」で考えて生み出される独創的なアイデアがものをいうのだ。

海外のAI研究のトップランナーを紹介する。彼らがつくるAIはどのようなもので、AIを使って何をしようとしているのだろうか。

AI研究者海外

米スタンフォード大学教授、アンドリュー・ウン氏

アンドリュー・ウン氏は、アメリカのスタンフォード大学教授だが、AI界では「グーグルとバイドゥの両方に関わった人」として知られる。

グーグルとバイドゥの両方に関わった人

グーグルは言わずと知れた検索エンジンサービス世界最大手である。バイドゥは中国の検索エンジンサービスの企業だ。グーグルは中国当局の規制に嫌気を差して中国から撤退しているので、バイドゥは世界一人口の多い国で最も使われている検索エンジンである。

つまりウン氏は世界2大検索エンジンに携わったことになる。

エン氏が最初に所属したのはグーグルである。グーグルがシリコンバレーにAIの研究所を立ち上げる際、設立メンバーに加わった。2011年のことである。

のちに、メガネ型のウェアラブル端末グーグルグラスや自動運転車などを開発したことで知られるこの研究所の目標は「史上最高のAIシステムをつくり上げること」だった。

さらにエン氏たちは、動画の識別にも取りかかった。グーグルは世界最大の動画サイト、ユーチューブを持つ。動画の識別とは、ユーチューブの無数の動画の中からAIを使って、例えば猫の動画だけを抜き出すというものだ。これには人の脳の仕組みを模したニューラルネットワークという技術が必要で、エン氏はこの開発にも関わった。

フェイスブックやマイクロソフトをAIに向かわせた人

エン氏はその後、2014年にバイドゥに移籍する。同社がシリコンバレーに持っていた研究所のチーフサイエンティストに就任した。

この頃のエン氏のAI研究は、フェイスブックやマイクロソフトに多大な影響を与え、2社はその後、AI研究に巨大投資をするようになったのである。

エン氏は2017年にバイドゥを離れ、今度は自分でランディング・AIという会社を立ち上げた。米スタンフォード大教授の肩書も持っているので、ランディング・AIは日本流にいうと大学発ベンチャーとなる。

未来の製造業を見据えてさらに猛進

エン氏のランディング・AIの最初の提携先は、台湾のファクスコンだった。ファクスコンはアップルのiPhoneの製造を請け負うメーカーである。

ランディング・AIとファクスコンが共同で開発したのは、カメラレンズの微小な傷を見つける検査システムだ。

AIは、高性能の画像認識技術を組み合わせることで「ほんのわずかに異なる画像」を発見できるようになる。ファクスコンはこれまで、数千人の検査担当者が「目」でレンズの微小な傷を探してきた。AI検査システムに切り替えれば24時間365日稼働させることができるうえに、より正確になる。

ウン氏のいまの関心は、製造業の効率化にあるようだ。ウン氏は雑誌のインタビューに、当面の目標は次のとおりであると答えている。

・製造コストの削減

・品質管理の向上

・サプライチェーンのボトルネックの解消

意外に「普通」の回答である。というのも製造業はすでに100年以上前から、コストと戦い、品質向上を目指し、サプライチェーンを育成してきた。これをさらに押し進めるだけでは、AIのすごさを感じられないような気がする。

しかしもちろんそんなことはない。ウン氏が唱える製造コストの削減は、例えば工場の完全自動化や完全無人化である。工場内の機械をすべてネットでつなぎ、AIで生産からメンテナンスまで管理するのだ。

そして品質については、先ほど紹介したとおり、人の五感では感知できない異物や異常や変形をAIで見つけ、完璧な製品しか売らないようにする。

そして親会社の工場だけでなく、外注業者の工場も次々AI化することで、完璧な製造態勢を築こうというのだ。

ウン氏が鍛え上げる「AI工場長」がつくる製品は、きっとこれまでの製品とは比べ物にならないほどの、驚きの商品になるだろう。

アイフライテック総裁、胡郁(ユー・ウー)氏

アイフライテック(科大訊飛)は中国最大の音声認識開発企業だ。音声認識とは、AIが人の話し言葉を正確に理解し、人の質問に対してAIが人の言葉で回答する技術だ。

瞬間に翻訳してしまう

同社が2018年に発表した最新の翻訳機は「瞬間音声翻訳」と呼ばれる。瞬(またた)く間に喋った言葉を自動翻訳してしまうのだ。扱う言語は33に及ぶ。

さらにこの翻訳機にはカメラがついていて、外国語表記のメニューを撮影すると、写した画像に翻訳された母国語の文字が記載される。

2016年に販売した前のバージョンの翻訳機は、13カ国・地域で20万台売れた。その機能をはるかに上回る新型機だけに、世界が注目している。

CEOがエンジニア。まさにプレイングマネージャー

この中国のAI技術集団アイフライテックを率いるのが、胡郁総裁(CEO)だ。胡郁氏自身、工学博士号を持つAI技術者で、専門は自然言語処理、音声合成、そして音声認識だ。

企業とCEOの関係では、自ら開発した掃除機で世界を席巻したダイソンのダイソンCEOと似ている。

謙虚さが逆に恐い

胡郁氏はとても謙虚な人柄で知られる。雑誌のインタビューで「AI分野において、アメリカと中国ではどれくらいの開きがあるか」と聞かれ、胡郁氏は「30年とも3カ月ともいえる」と答えた。

その意味するところはこうだ。

アメリカの大学教授たちが研究しない分野は、中国の研究者たちは30年後も研究をしないが、しかしアメリカの大学教授たちが研究を開始すれば、中国の研究者たちは3カ月後には研究を始める、と。

つまり、中国がアメリカを後追いすることは簡単だが、アメリカを抜かすことは簡単ではない、ということである。

これだけ世界のAIの趨勢を見通しているトップがいる会社は、末恐ろしいといえるだろう。

まとめ~米中の巨人を追いかけられるか

AI先進国のアメリカと中国から1人ずつAIの巨人を紹介した。ウン氏の活躍ぶりからは、AI人材の争奪戦が世界規模に拡大していることがわかる。

一方、胡郁氏の言動からは「AIはアメリカと中国が牽引していく」という意気込みが感じられる。日本はこれらのAI巨人に振り切られないように追いかけていかなければならない。


<参考>

  1. AI研究の第一人者が「Landing.AI」起業 製造業にAIを“電気”のように行き渡らせる(ITmedia)
    http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1712/21/news121.html
  2. 激化するAI人材争奪戦──キーワードは「インテル」「AIチップ」「アンドリュー・エン」(WIRED)
    https://wired.jp/2017/04/11/fierce-competition-ai-talent/
  3. グーグルX発のAI技術が検索にもたらす変化(WIRED)
    https://wired.jp/2013/05/28/hinton/
  4. 人工知能と暮らす(The Asahi Shimbun GLOBE)
    http://globe.asahi.com/feature/side/2016122800004.html
  5. 科大訊飛の新型AI翻訳機、33言語との瞬間音声翻訳を実現(CRI online)
    http://japanese.cri.cn/2021/2018/04/22/142s272067.htm
  6. 科大訊飛、海外市場に挑む(日本経済新聞)
    https://www.nikkei.com/article/DGKKZO24376430X01C17A2FFE000/
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