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あらゆる業界で活用可能なチャットボットとは?

日本では2016年以降、チャットボットに企業の注目が集まっている。すでにWebサイトのFAQやチャットアプリでの自動回答など、で利用されている。

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最近よく耳にするようになった「チャットボット」。なんとなくAIを使ったものだということくらいしかわからないという人もいるだろう。今回はその「チャットボット」について、使われ方をわかりやすく紹介する。

AI(人口知能) チャット

そもそもチャットボットとは?

「チャットボット」という言葉は、そもそも「チャット」と「ボット」を組み合わせたものである。英語では「チャットボット」以外に「チャッターボット」という呼び方もされることがある。

「チャット」はテキストをキーボードなどで入力することで、メッセージのやりとりを行うものを指す。1対1またはグループで行う。LINEやSkype、ChatWorkなどのアプリがチャットアプリの代表例だと言って良い。

一方、「ボット」は「ロボット」の短縮形とされ、コンピューターやインターネット上で動作する自動化プログラムを指す。

従って、チャットボットとは「チャットの自動化プログラム」を意味し、人間がチャットアプリやソフト上で書いたメッセージに対して、自動で返事を返すプログラムという意味である。

この自動応答のニーズは大変古くからあり、世界最初のチャットボットと言われている「ELIZA(イライザ)」がジョセフ・ワイゼンバウムによって開発されたのは1966年のことである。日本でも「人工無能(または人工無脳)」と呼ばれ、研究者をはじめ、IT系企業やゲーム会社などで開発が行われてきた。特にゲーム業界においては、ロールプレイングゲームやアドベンチャーゲームなどで、プレイヤーとの会話が必要となるため、長い間にわたって開発が行われている。

さて、チャットボットは幾つかの系統にわけられるとされている。①ELIZAのように聞き役として相づちを打つことができ、会話の要約を行ってオウム返しに出力することもできる「ELIZA型」。②ゲームでよく利用される、決められたシナリオによって選択式で会話を行う「選択肢型」。③登録された単語に対して反応を返す「辞書型」。そして④会話ログを利用して、文脈に近いと考えられる応答をする「ログ型」である。

しかし、長い間、これらのチャットボットが「人工無能」と呼ばれてきたのには理由がある。求めていた「人工知能」に対し、類型的な応答しか行えず、的外れな応答を行う事もしょっちゅうあったからだ。つまり、ゲームなどの決まったシナリオの中でしか、上手く動作することができなかったのである。

何故今チャットボットが企業に注目されているのか

ところがこの数年、一気にチャットボットが企業に注目されるようになっている。特に2016年以降、日本でも様々な展示会でチャットボットが紹介されるようになってきた。特にコンテンツ東京2016に併設されて行われていた「AI・人工知能ワールド」で株式会社モノゴコロが出展していた「レイシア」は、話しかけられた内容に対して、人工知能が自動的に内容を把握して的確な応答を行うというデモを行い、テレビをはじめとするマスメディアの取材攻勢を受けていた。そのため、これをテレビで見ていた人もいるかもしれない。

このデモは筆者にとってもインパクトが大きく、周りが騒がしく音声認識が大変しづらい環境であったにもかかわらず、どのような問いかけにも自然な応答をしていたのには驚かされた。つまり、人工無能と比較すると、かなり「使える」精度にまでなったと言って良い。これは自然言語分野におけるディープラーニング技術の進化により、人間がどういうことを言っているのかについて、意味を理解しているわけではないが、ある程度分類ができる様になったことが大きい。

そしてその翌年の第1回AI・人工知能EXPOでは、チャットボットを出展している企業が10社以上になっていた。つまり、人工知能の進化によって、チャットボットが「使える」ことに気が付いた開発会社が出展するようになったのだ。

つまり人工知能の進化に企業は価値を見いだしたと言える。音声による自動応答にせよ、チャットでの自動応答にせよ、決められた内容について、数字などで選択すると返事を返すという「選択肢型」、良くてキーワードに反応する「辞書型」がせいぜいであった。このレベルだと、FAQを自動で表示する程度にしか使えず、人間と同程度のサービスを行う事など到底不可能だった。しかし、「レイシア」のような応答が可能なのであれば、必要な知識データベースさえ準備できれば、24時間365日、休まずに自動での応答が可能となる。しかもFAQのように、客が言葉を知らないと答えにたどり着けないものではなく、比較的曖昧な言い方をしたとしても、自社製品やサービスについての問い合わせに応答できる。

チャットボットの種類と活用領域に関して

ではチャットボットが活用される領域にはどの様なものがあるだろうか。それを紹介するところから始めよう。ただし、今回は音声で入出力するAppleのSiriやAmazon Echo、Googleアシスタントに代表される「音声アシスタント」については除外する。

パソコンなどのキーボードやスマートフォンで文字を入力し、それに対する返答が画面に表示されるということだ。LINEなどのメッセンジャーアプリを利用したことがある人であれば、自分が送ったメッセージに対して返事を返してくる相手が、人間ではなくコンピューターだと想像すると良い。

従って、まずはメッセンジャーアプリ上での自動応答が最初の利用方法である。有名なものでは、クロネコヤマトがLINE上で配達日時の変更や再配達の受付を行えるサービスを展開している。ドライバーに電話をかけると、運転中などはなかなか出てもらえないタイミングもあるので、LINEで申し込みするだけで受け付けてもらえるのはありがたい。同じしかけで、例えば航空券の購入や予約していた便の変更などを行うことも可能となっている。基本的には選択肢型と言って良い。

二つ目の利用方法としては、企業のWebサイト上での問い合わせである。製品やサービスの使い方に対する質問は、FAQのページを見なければならない事が多い。しかも、あまりデータの多くないFAQだと期待する回答が載っていないし、逆にどんな質問でも載っていそうなくらい項目があると、その中から自分の知りたい内容を探し出すのが大変である。検索しようにも、必要なキーワードがわからなければ、欲しい情報を入手できない。ここにチャットボットを導入すると、知りたい内容についてメッセージを書き込めば、自動的に知りたい内容をコンピューター側で探して表示してくれる。これまでは人間が対応しなければいけないような訊かれ方でも、問い合わせ内容と解答とのデータセットが整備されていれば、24時間365日、全く同じレベルでの回答が可能となる。

質問とそれに対する回答がセットになってさえいれば良いので、この応用で弁護士や税理士に対する質問も自動応答が可能である。実際に弁護士ドットコム株式会社がそのようなサービスのリリースを目指している。これらも、データが整備されてるという事を考えると、選択肢型に辞書型を組み合わせたと言っても良い。

三つ目は商品のおすすめである。1と2の組み合わせと言えないこともないが、自分の好みに合わせた商品を提案してくれる。例えば洋服のコーディネートを一式購入する場合、「どちらの方が良いか」という質問に回答していくと、購入者の好みに合わせた色合いやデザインの洋服を、全身コーディネートして提案してくれる。当然、その場で一式まとめて購入することも可能である。

これについてはログ型が有効である。サービス提供の初期はともかく、Amazonのリコメンドのように、購入者の履歴データが増えれば増えるほど、同じ様な好みを持つ人物が購入したものから提案をできるようになっていく。つまり、そのサービスを利用し、購入する人が増えれば増えるほど、精度は高くなっていく。

チャットボット_人工知能(AI)

まとめ

1966年の「ELIZA」にはじまるチャットボットの開発は、人工知能の開発に大きな影響を受けている。初期の人工知能では人間の話す言葉や、書き込んだ文章の内容をうまく解釈できなかった。

1980~90年代には人工無能と呼ばれ、シナリオさえ準備すれば、それに沿った会話ができる程度にはなった。ただし、あくまでも人間が選んだ選択肢に対応する文章を表示しているだけであるが、シナリオを精緻なものにすれば、まるで人間と会話している気にさせることもできる程度にはなった。

そして2010年代に入って、ようやく人間が普段しゃべっているような会話文であっても、コンピューターが解釈できるようになってきた。これにはディープラーニング技術の進化が寄与している。この流れが2016年以降一気に加速し、様々な企業が採用し、開発会社も増えているのが現状である。

次回は、実際にチャットボットを利用している企業の具体的な例について紹介する予定である。


<参考>

  1. 企業の活用広がるチャットボット 利用シーンとその市場性(クラウドWatch)
    https://cloud.watch.impress.co.jp/docs/column/infostand/1139827.html
  2. これだけ読めばチャットボットのすべてが分かる(FUJITSU JOURNAL)
    http://journal.jp.fujitsu.com/2018/06/13/09/
  3. チャットボット(Chatbot)とは【人工知能との関係、開発の方法】(hitobo)
    https://hitobo.io/blog/overview-of-the-chatbot/
  4. Watsonハッカソン
    http://event.samurai-incubate.asia/watson-hack/
  5. 人工無能(Wikipedia)
    https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%BA%E5%B7%A5%E7%84%A1%E8%84%B3
  6. 人工知能と人工無能(無脳)は何が違うの?(SiTest)
    https://sitest.jp/blog/?p=5592
  7. 心を持つAI「レイシア」、新設された「AI・人工知能ワールド」で一際高い注目(Internet Watch)
    https://internet.watch.impress.co.jp/docs/event/1008580.html
  8. 夢みるプログラム ~人工無脳・チャットボットで考察する会話と心のアルゴリズム~
    加藤真一著 ラトルズ刊
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