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AIは営業の仕事をどれくらい助けることができるのか

人と人のつながりが結果を大きく左右する営業の仕事は、AI(人工知能)が苦手としそうな分野だ。しかしAIはいま、営業パーソンをしっかり支えている。

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AI(人工知能)はどこまで営業の仕事を手伝うことができるのだろうか。AIはビッグデータのなかから法則を見出したり、質問されたことに答えることなどは得意だが、営業は顧客ニーズやトレンドを把握する力、人脈を築き上げる力、そして足で稼ぐ力の総合力が決め手となる。

ただ、ITの力を借りると営業がスムーズに進むことは証明済みである。例えば営業支援システム「SFA(セールス・フォース・オートメーション)」はその一例である。

そのため、SFAにAIの能力が搭載されればより強力な営業支援を受けられそうだ。

AIを使った営業支援システムを追ってみた。

人工知能_営業

AIが入っていない営業支援「SFA」とは

まずは「普通のSFA」を概観しておこう。ここを押さえておくことで、AI付きの営業支援の特徴をしっかり理解できるからだ。

東京都品川区に本社を置く株式会社マツリカは、月額5,000円でSFAサービス「センシズ(Senses)」を提供している。取引先、案件、営業活動、名刺などの情報を整理してくれる。企業の営業部門がセンシズを導入することで、営業活動が見える化し、売上予測の精度が上がり、属人化していた営業業務を標準化でき、最終的には営業成績を向上させられる――というのが、マツリカのPRポイントである。

センシズを使えば、営業チームメンバーの営業活動をパソコン画面一覧できるので、管理職は営業パーソンたちの進捗状況をリアルタイムで把握することができる。さらに、営業パーソンたちのメール、名刺情報、請求書などの情報センシズに同期することができるので、チームメンバーどうしで情報を共有できる。チャットを使えば新人営業スタッフが営業先から上司に相談することも可能だ。

センシズのようなSFAは、イメージがつかみやすいのではないだろうか。自分の会社にSFAが導入されていなくても、自分で無料のアプリなどを集めて「簡易版SFA」を構築している営業パーソンもいるに違いない。

さて、このSFAにAIが加わるとどうなるのだろうか。

AIが新規開拓営業のスピード化を支援するジーン

エッジコンサルティング株式会社(本社・東京都港区)は、ビッグデータの解析やAI実装支援などを手掛ける、2008年創業のベンチャー企業である。

同社が開発した「ジーン(GeAIne)」は、AIを使って新規開拓営業を支援する、という触れ込みだ。

継続顧客への営業活動でも営業パーソン独自のノウハウを必要とするのに、まったく見ず知らずの相手に製品やサービスを売る新規開拓営業は、ベテラン社員でも困難を極める仕事である。

ジーンはその新規開拓営業をどのように支援しているのだろうか。

新規開拓営業の課題

ジーンの力を確認する前に、新規開拓営業がなぜ難しいのか、なにが課題になるのかみておこう。

新規開拓営業ではまず、どこに営業をしかけたらいいのか悩むはずだ。1丁目から10丁目まですべての会社を訪問するローラー作戦は、非効率であるばかりでなく、業務内容がストレスフルなため、それを若い営業担当者に強要することはパワハラに該当しかねない。

また、企業の営業部が持っている「見込み顧客リスト」は、大抵は件数が膨大すぎて使い物にならない。「営業をかけても無駄」という情報が多すぎるのだ。

また、新規開拓営業ではテレアポを使う企業も多いと思うが、こちらも100件電話をして1人と話をできればよいほう、という「ほぼ負け戦(いくさ)」を強いられる。

とはいえ、テレアポをした会社については、例え10秒で電話を切られた場合でも、1件1件記録しておく必要がある。記録しておかないと、別の担当者も同じところに電話をかけてしまうだろうし、見込み客に進む客を絞り込む作業にも支障が出る。とはいえ、テレアポ記録のほとんどは「死にデータ」になる。

まだある。

テレアポでも飛び込み営業でも、まずはベースとなる営業マニュアルを作成し、営業チーム内で共有しているはずだ。しかし新規開拓営業の営業文章や営業トーク集は、どれが誰に伝わるのかわからない。伝わりそうな人に刺さらなかったり、伝わらないと思っていた人に響いたりする。

それで営業活動データを集め、営業文章ごとに「響く人の傾向」を分析する必要がある。しかしその作業量は膨大なため、営業課長としても、部下にデータ集めと分析に専念させるか、その時間を使って新規先回りをさせるか悩むところだろう。

ジーンができる自動化

AI営業支援システム、ジーンは、新規開拓営業の多くの業務を自動化した。ジーンが自動化した業務は次のとおり。

・営業リストの精査

・顧客のアポイントの獲得

・効果的な営業文章の作成

・顧客管理

内容を詳しくみてみよう。

<営業リストの精査>の自動化は、過去の受注データと営業先リストをジーンのAIに読み込ませ、分析させる。AIがユーザー(ジーンを導入した企業)の製品やサービスを好みそうな企業や顧客になりそうな会社を抽出する。

AIに読み込ませるのは、人の手で精査した営業先リストでなくてもよい。例えば交流会や展示会で入手した大量の名刺があれば、それをジーンに読み込ませるだけでよい。

ジーンは読み込んだ企業に「営業おすすめ度」を5点満点で付けるので、営業パーソンはその点数が多い企業から訪問すればよい。

<顧客のアポイントの獲得>の自動化は、企業ホームページの問い合わせフォームに自動で入力するシステムで行う。

ご存知のとおり企業の公式ホームページには、代表Eメールアドレスを掲載しているパターンと、問い合わせページを置き相談内容を記載させるパターンがある。ジーンはそのどちらにも対応している。

ジーンが企業の公式ホームページからEメールアドレスをみつけると、そのアドレスにあらかじめ用意しておいた営業文章を送る。ジーンが問い合わせページを見つければ、その入力フォームに合った入力を行い送信する。

AIを搭載しているから、Eメールアドレスや問い合わせアドレスをみつけることができる。

この機能を使えば、営業パーソンが外回りで移動している時間に100件の問い合わせを実行できる。

ジーンには作文機能があるので、<効果的な営業文章の作成>をつくることができる。

例えば、「初めまして、私は株式会社〇〇の△△と申します」と始め方がいいのか、それとも「当社は関西で□□のサービスを提供している株式会社〇〇と申します」といったように、まず業務内容から入ったほうがいいのかを判断してくれる。

ジーンの文章作成能力は、営業チームで使えば使うほど賢くなっていく。

ジーンは新規開拓営業にフォーカスを当てたユニークなAIサービスである。新規の顧客と話すことは、長年営業に携わっている人でも緊張するはずだ。無下に断れたりすると、メンタルがダメージを受ける。

ジーンが「前さばき」をしてくれれば、営業パーソンのストレスは大幅に減りそうだ。

営業_人口知能

大企業の営業部長をサポートするキビット

三菱重工、横浜銀行、第一三共など、名だたる企業が株式会社フロンテオ(本社・東京都港区)のビジネスデータ分析支援システム「キビット(KIBIT)」を導入している。

KIBITは営業部長など、営業の業務や営業スタッフを統括している人向けのAIツールだ。

若い営業スタッフの情報をどう入手するか

プレイイングマネージャーのように自ら営業の第一線に立ち、新人営業担当者に直接指示を出せる営業部の管理職であれば、スタッフの営業活動の進捗状況や顧客の動向を把握することは容易だ。

しかし大企業の営業部長となると、役職がついていない営業パーソンの行動まで把握することは難しい。新人社員の名前を覚えて声かけすることさえおぼつかない営業部長もいるだろう。

営業部長がスタッフたちの営業日報に目を通せば多少は把握できるが、すべて読もうと思ったら時間がいくらあっても足りない。

ということは、スタッフたちがどのような企業とどのような話をしているのかを、営業部長はつかむことができないわけである。ジャストインタイムで情報が入ってこなければ、営業部長からの指示は若い社員にまで届きにくくなる。

ではキビットのAIは、こうした営業部長の悩みにどのように応えているのだろうか。

チャンス情報とリスク情報を仕分ける

キビットはまず、営業スタッフのメールや日報、顧客からの問い合わせやクレームなどをすべて収集する。そしてAIが、この膨大な情報を、チャンスになる情報とリスクになる情報にわける。

さらにユーザー(キビットを導入した企業)が課題や目的を設定すれば、キビットはそれに応じてチャンス情報とリスク情報をわけることもできる。

つまり営業部長やマーケティング部長やプロジェクトマネージャーは、攻めたいときはチャンス情報からヒントを得て、改善業務に取り組むときはリスク情報を活用することができる。

市場調査や論文調査も行う

キビットが集める情報は、社内情報や取引先情報だけではない。

例えば世界中にあふれるビジネスニュースや学術論文のなかから、ユーザーと関連するものだけをピックアップして示すことができる。

キビットのAIがニュースや論文の重要度を予測するので、ユーザーはその順番に目をとおしていけばよい。

もしすべてのピックアップ情報に目をとおしてみて、重要度の予測が間違っていれば、それをキビットにフィードバックすれば、AIが重要度を考え直しよりユーザーの求めに近い情報を拾い集めることができるようになる。

まとめ~AIの支援を受ければ営業活動はより深くなる

営業手法はこれまでに足で稼ぐ営業からデータで効率化した営業に進化し、さらにいま、AIにヒントをもらう営業になろうとしている。

営業の仕事の最初の苦労は、製品やサービスを待っている潜在顧客を探すことにある。潜在顧客が必ずどこかにいることを信じ、ひたすら歩きまわることになる。

そして営業の仕事の最初のつらさは、製品やサービスを待っていない人にアプローチをして冷たくあしらわれることだろう。

AIは、その苦労とつらさを少なくしてくれるツールになりつつある。AIが嫌な仕事や単調な仕事を効率的かつ正しくさばいてくれれば、営業パーソンは本来業務である顧客に尽くす仕事に専念することができる。


<参考>

  1. About Us(株式会社マツリカ)
    https://mazrica.com/aboutus/
  2. Senses 導入による効果(株式会社マツリカ)
    https://product-senses.mazrica.com/
  3. 会社概要(エッジコンサルティング株式会社)
    http://www.edge-consulting.jp/
  4. GeAIne(エッジコンサルティング株式会社)
    https://www.geaine.jp/
  5. 会社概要(株式会社 FRONTEO)
    http://www.fronteo.com/corporate/about/overview.html
  6. Kibit(株式会社 FRONTEO)
    http://www.kibit-platform.com/products/knowledge-probe/
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