AIはファッション業界で既に使われている【仕組みから活用事例まで紹介】

AI(人工知能)がファッションの世界でも使われるようになってきた。これまでは感性の世界であったデザインやコーディネート部分でAIがどの様に使われているのかを紹介する。

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テクノロジーの進歩とデータの蓄積が進んだこともあり、AIをファッション業界で活用する動きが一気に活発になってきた。これまではAmazonのリコメンドのように、同じ商品を買った人が他に買っている洋服を薦めるだけだったのが、気候に合わせたコーディネートの提案や、服飾デザインの分野にも進出しようとしている。データの蓄積によって、人間が直感に頼ってきた部分に、「提案」ができるようになってきたのだ。

AI-ファッション

ファッション業界でAIはどのように使われているのか

AI(人工知能)が様々な分野に導入されてきている。その流れはファッション業界も例外ではない。小売店では販売データや店内にいる客の動きから、売上を向上させる施策を教えてくれるAIが既に存在している。

また、オンラインショップの場合には、AIを使ったチャットボットに24時間365日、自動での対応をさせるという使い方や、同じものを購入した人のデータを集めておすすめをリコメンドすることも行われている。チャットボットを介してコーディネートの相談をするにせよ、購入時に好みであろうコーディネートのリコメンドをするにせよ、それは顧客の購入データを大量に蓄積することができれば、可能となる。

しかし、今後はさらに一歩踏み込み、その人物が着ていくべき服装をコーディネートする「ファッションAI」と呼ぶべきものが主な開発競争の場になって来る。なぜなら、その日に着ていく服装は、自分の好みだけでは決められず、TPOに合わせたコーディネートが必要になるからである。

特にファッションが難しいのは、自分に似合う服装を自分では判断できないという点だ。好みの服装に沿って選ぶ事はできるが、それだと同じ様な服ばかりになってしまうし、それ以外の服を選ぼうとしても、自分を客観視するのはかなり難しく、似合うと思って購入したものも、実際に着てみるとあまり似合わないということがある。ここをクリアするためにAIを活用しようというわけだ。

ファッションAIが判断する仕組み

ファッションをAIに判断させるには、かなり色々なことを考慮する必要がある。性別や年齢、身長や体型などの身体的特徴もあるが、その人物の好みの色、雰囲気などの好みも重要となる。さらに季節や天候、さらにはその日のTPOや、それこそトレンドなど外的な要因も考慮しなければならない。つまり、判断すべき項目が多岐にわたるため、完全な判断を行うのには、相当なデータ量が必要となる。

とはいえ、性別や年齢については登録されたユーザー情報から取得が可能である。そして身体的特徴についても、あらかじめ登録されたユーザー情報か、もしくは購入履歴からだいたい推測することが可能となる。これはユーザーの好みについても同様である。ここまではあくまでもリコメンドに使う情報と同じである。

それこそトレンドについても同じ事が言える。今年の流行の中から、リコメンドに利用する同じ様な嗜好のユーザーの購買履歴や、その商品がどの様な人々をターゲットにして開発されたのかという属性から割り出すことが可能となる。

問題なのはTPOに合わせたコーディネートだ。季節やその日の天候(天気だけではなく気温や湿度も重要な情報となる)については気象情報から得ることができる。ところがその日のイベントに適したコーディネートは難しい。もちろん冠婚葬祭の場合はそもそも着ていくべき服装は決まってくるが、それ以外のイベントについてはデータの収集方法があまりない。それにその日の気分については、それこそコーディネートを決める前にアンケートの様な形で選んでもらうとしても、パーソナル情報として何らかの形で蓄積をしない限り、判断材料がない。ユーザーの映ったスナップ写真を大量に与えて学習させるという方法もあるが、それだけのスナップ写真を用意できるかどうかもわからないし、それぞれのスナップがどういうイベントで撮影されたのかをタグ付けする必要もある。こういうことを繰り返しながらファッションAIを学習させ、人間の感覚に近い判断基準を持たせるしかない。

それでは、その方向でデータを収集し、一部なりともサービスの展開を始めている活用例を2つ紹介する。

AI-ファッション

POCKET PARCO(事例)

実例の1つ目はPARCOが2015年から提供しているスマートフォンアプリ「POCKET PARCO」である。このアプリ内ではユーザーの購買・来店履歴、お気に入り登録履歴、記事閲覧履歴を基にしてAIがユーザーの好みを学習し、それぞれに合わせたおすすめの情報を提示する。配信記事やクーポンのパーソナライズが中心ではあるが、洋服のレコメンド機能も実装している。したがって、PARCOに入っている店舗で購入可能な自分の好みの洋服を探しやすくなっている。

そのためのAIを用いたパーソナライズエンジンは、株式会社PKSHA TechnologyのCRMソリューションである。同社はAI研究者として有名な東京大学の松尾豊特任准教授を技術顧問として迎えている企業で、その技術の高さには定評がある。そのCRMソリューションを使って積極的にマーケティングに利用し、アプリを通じて顧客にパーソナライズされたファッションの情報を提供しているのだ。

XZ(事例)

もう一つの事例であるXZ(クローゼット)は、手持ちの服を使ってTPOに合わせたコーディネートを提案してくれるアプリだ。サービスを提供するのは株式会社STANDING OVATIONで、それまではユーザー同士でコーディネートの悩みを相談・解決するコミュニティアプリとして運用されていたが、自動コーディネート提案エンジンを備えてフルリニューアルした。

リニューアルに当たっては2014年から蓄積してきた、ユーザーが登録した300万点の手持ちの服の情報と、それをコーディネートしたパターンをAIに学習させた。さらに気象庁の天気・気温の予報値を使うことで、ユーザーの手持ち服による1週間分のコーディネートを提案できるようになっている。

XZの良い点は、ZOZOが2019年1月15日に発表したものと異なり、自分の手持ちの服のみでコーディネート提案をしてくれる点だ。つまり、ユーザーは新しい服を購入することなく、自宅のクローゼットの中身だけで完結できる。従って、外出するときに服装を決めるのに悩み、時間がかかっているという部分を解消してくれる。

ファッション業界において今後AIはどのように使われていくのか

これまでのファッション業界におけるAI活用は、あくまでもチャットボットや販売活動の支援やリコメンドというところが中心だった。POCKET PARCOなどはその実例である。それが少しずつコーディネート提案を行えるようになってきている。特にXZのような手持ち服で天候やTPOに合わせたコーディネートを提案してくれるものが、データの蓄積が進んだことによってようやく実現できるようになった。また、ZOZO研究所のように、個人の好みに合わせてコーディネートを提案し、購入にまで繋げられる仕掛けが開発されつつあるのも、今後の大きな動きとなるだろう。

そして今後は更に進んで、ファッションAIが様々な役割を果たすようになる。一つの方向性としては、ファッションAIによる洋服デザインだろう。つまり既存製品のコーディネートに留まらず、デザイン自体もやってしまうということだ。現存する服飾デザインの分析ができる程度にまでデータが溜まってきているため、新しいデザインを提案できる素地はでき上がっていると考えて良い。ただし、デザインを提案したとしても、それを人間が受け入れるかどうかは別であるため、ファッションAIが提案したデザインを人間がふるいに掛けてから商品化するという流れになるだろう。

また同様に、コーディネート自体もデータが溜まってきているため、服飾のデザインも組み合わせると、ファッションショーなどでの審査にも活用できるかも知れない。もちろんこれも現在は人間の感性でもって判定をしているわけだが、ファッションAIがその審査を行うための客観的な観点からの基礎データというか基礎点を判定する時代が来るかも知れない。

ただし、これも服飾デザインと同じく、ファッションの善し悪しを判断するのは人間の直感的な部分であるため、人間の審査員が不要になるわけではない。

まとめ

ファッションAIはテクノロジーの進歩とデータの蓄積が進んだことで、「洋服のリコメンド」からより高度なステージへとステップアップしようとしている。今はまだデータの蓄積を進めながら精度を上げている最中ではあるものの、コーディネートの提案を実現し、今後はさらにデザイン部分にまで進んで行くと考えられる。いずれは洋服の素材まで提案できる段階に突入すると考えられるが、それはデータを先に揃えた企業が勝ち組となるはずである。


<参考>

  1. AIの可能性はどこまで広がる?ファッション分野でもAIが力を発揮する未来(Orange EC)
    https://ec-orange.jp/ec-media/?p=18025
  2. AIにファッションは可能か? 「ファッションおじさん」運営者と、AI時代の感性・美意識を語る(NEXT WISDOM FOUNDATION)
    http://nextwisdom.org/article/3017/
  3. 「ファッション×人工知能」サービス5選 〜アパレル業界に広がるAIの可能性に迫る!(total engagement group)
    http://www.total-engagement.jp/665/
  4. コーディネートもAI任せ。あなたに最適な服装を選んでくれるアプリ「XZ(クローゼット)」(AMP)
    https://amp.review/2018/07/12/ai_auto-coordinate/
  5. AI×SNS 服の趣味嗜好のパーソナライズを実現する「Rename ai(リネーム アイ)」(AMP)
    https://amp.review/2018/12/18/rename-ai/
  6. PKSHA Technology Inc.
    https://pkshatech.com/ja/
  7. 手持ち服から毎日自動でコーディネート、ファッションアプリ「XZ(クローゼット)」がアップデート(TECHWAVE)
    https://techwave.jp/archives/standing-ovation-updates-app-xz-auto-cordinate.html
  8. コーディネートアプリ「XZ(クローゼット)」が、手持ち服を使った自動コーデ提案エンジンを備えてフルリニューアル!(PR TIMES)
    https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000012.000011269.html
  9. ZOZO研究所、1200万人が使うファッションコーディネートアプリ「WEAR」のビッグデータを活用した共同研究を同志社大学と開始(ZOZO研究所)
    https://corp.zozo.com/news/20190115-6848/