作業の効率化に役立つ人工知能(AI)。実は面接にもAIが活用され始めている。企業の将来を左右するだけに、完全に機械任せでいいのかと考える人もいるだろう。だがIBMやAmazonなどグローバル企業ではAIを活用した面接を一部採用している。
では、どのようにAIは面接に活用できるのだろうか?AI面接の仕組みと活用事例について紹介したい。
続きを読むAI面接とは?
最初に、就職希望者が採用に至るまでのプロセスと、面接の位置づけについて述べたい。
面接とは
新入社員の早期離職が議論される現在。企業はエントリーシートの確認や入社試験から始まり、数回の面接を経て、マッチする学生を新規採用したり、中途での採用が行なわれたりする。ところが、実際採用した人物が企業の求める人物像とかけ離れていたため成果が出せなかったり、辞めないで企業に居座り続けるぶらさがり社員などが出てくる。
面接は、企業の理念に合致した人材を選りすぐるための、ふるいにかける手段のひとつといえる。採用側からみれば、求める人物像を定義し、学生の活動をヒアリングして対象を明らかにし、学生が入社したいと思わせて内定までこぎつけることが重要になってくる。これらの指針のもと、企業側が学生の資質を判断する場が面接現場ともいえる。
ところが、先述のように、企業が心血注いで実施した面接を通過した新入社員や中途社員でも、離職されるケースがある。日本では一応終身雇用制が維持されているものの、アメリカでは成果が出せない場合にはレイオフされたり、下積みしてから実質終身雇用のような形態になるまでスキルアップし、職を転々とすることも多い。またグローバル化により、日本以外の企業への就職や、離職して別の企業への再就職、起業など選択肢が多くなった。企業の側からみれば、どのような採用をすべきかの判断が難しくなっている。
人間には察知できない潜在的な法則を発見するAI
AIがさまざまなビジネスシーンに活用されるようになった。画像認識や言語認識など、作業を絞れば人間よりも高いパフォーマンスで遂行できる能力をもつ。囲碁やチェスといったボードゲームでも、指し手の意思決定にAIが用いられる。ディープラーニング(深層学習)を搭載したAIの指し手でよく言われたのが、「人間には理解できない、棋理に反した手を指す」というプロの意見だ。ボードゲームの場合、合理的な手の指し方がプロによって長年蓄積されている。だが、強化学習を搭載したコンピューターは、これら棋理とは関係なく、自分で学習を続け、それでいて人間よりも高いパフォーマンスを発揮している。つまり、人間の先入観が逆に合理的な意思決定を阻害することもありうる。このようなことから、人間の先入観に囚われない意思決定を支援するAIが、ビジネスシーンにも散見されるようになった。AI面接もこの流れの延長線上に位置づけできるだろう。
1次面接の代替になるAI面接
AI面接とは、スマートフォンやPCといった電子機器を介し、企業の面接官に代わってAIが応募者の資質を判断するサービスのことだ。通常の面接同様、AI面接でも就職希望者からヒアリングを行ない、それを評価するという2段階を踏む。就職希望者は電子機器を介して出される質問に対し回答を与える。また質問中の顔の表情などもデータとして収集される。これらのデータをもとに、柔軟性があるか、理解力があるかなど複数の項目で評価が与えられるのだ。
もっとも、AI面接は採用に至るまでの面接のうちのひとつだ。むしろ、入社試験やエントリーシートのようなスクリーニングの意味合いの方が強い。スタッフによって行なわれてきた1次面接がAI面接に代替されるというイメージが近いだろう。AI面接終了後には、管理職や役員を前に実施される2次面接や最終面接が就職希望者を待ち構えている。
AI面接のメリットとは?
物理的制約の軽減
AI面接のメリットのひとつは、エントリー側の問題だ。グローバル化により、海外からエントリーする応募者もいるだろう。AI面接なら現地で受けることも可能で、1次面接の段階でわざわざ日本国内に移動する必要がないのは大きい。また日本在住者にとっても、大都市を拠点にする企業まで足を出向く必要がなくなるので、交通費削減にもつながる。
企業側にとっても、物理的制約が軽減されるメリットがある。面接できる場所が増えることで、より多くの人材が募集可能になる。これにより、企業が採用したい人材が応募する可能性もアップするだろう。採用側としても、24時間どこでも可能な面接の場を与えるだけでいいので、人件費削減にもつながる。
公平性の維持
面接のバラツキが抑えられ、公平性が保たれる点も、AI面接のメリットとして挙げられよう。1次面接の段階では、採用側のスタッフの数が多くなる。これは、スタップによる判断基準に違いが生じることを意味する。AI面接ならば、同じ条件でエントリーした人が面接できるので、判断基準は同じになる。
AI面接のデメリットとは?
すべての資質は計測できない
AI面接のデメリットとして挙げられるのは、すべての項目がAIで判断できない点だ。組織力やリーダーシップといった資質は、AI面接よりも、グループ討議させたほうが判断しやすいだろう。AI面接により資質を測れない項目があるとすれば、判断に漏れが生じる可能性もある。
AIの判断がブラックボックス化
判断の誤りという点で補足すれば、AIの判断を鵜呑みにしていいのかという問題もあるだろう。1次面接に相当する段階とはいえ、AIの判断が採用・不採用に直結するため、後戻りはきかない。だがAIによって本当に企業が求めている人材が選別できるのか、企業側からすれば不安だろう。対人面接の場合、採用判断の根拠はスタッフに尋ねれば明らかになる。だがディープラーニングのようなAIの場合、判断根拠はブラックボックス化されている。採用する側とすれば、AIの判断を鵜呑みするしかない。
言い換えると、AI面接の判断を人が再確認する必要も出てくるということだ。その場合、AI面接がどのくらい作業効率化につながっているのかは検討の余地があるだろう。
AI面接サービスにはどういうものがある?
以下では、代表的なAI面接サービスを取り上げたい。
SHaiN
SHaiNはStrategic(戦略)Hiring(採用)AI(人工知能)Navigator(装置)の頭文字をとったもの。スマートフォンが面接官の代わりになり、さまざまな資質を数値化、レポートにまとめる機能が搭載されている。
SHaiNによる面接時間は約60分ほどだ。応募者は質問に答えるだけで、バイタリティや自主独立性、理解力など11の資質が判断できるという。質問が終わると、5営業日以内で面接評価レポートが提出されて完了だ。
SHaiN EX
SHaiNには、初期選考向けのものだけでなく、アルバイトなどに特化したSHaiN EXというサービスが用意されている。
SHaiN EXは、Express(面接が早い)、Expert(専門分野の採用に特化)、Excellent(一芸一能採用)という3つEXに対応している。一般採用と異なり、判断すべき資質の数も多くないので、手軽に面接可能だ。レポート内容も一般用よりもコンパクトなのも特徴的である。
GROW360
GROW360は、Institution for a Global Society(IGS)が独自開発したAI面接ソフトだ。スマートフォンで面接できる点は、先述のSHaiN同様である。アンケート回答から、「外向性や内向性」「協調性と独立性」「誠実性と快楽性」「開放性と保守性」「繊細性と平穏性」といった資質を計測できる。また指の動きなどから、本人の潜在的な性格診断も行なえるという。
また第三者に評価を依頼し、その第三者の評価が適正かどうか、応募者のことが好きかどうかの判断も可能だ。
HireVue
HireVueはアメリカ・ユタ州発のクラウド型AI面接のプラットフォームだ。IBMやApple、Amazonなどグローバル企業700社以上がHireVueを採用しているという。
HireVueには録画面接とオンライン面接が用意されている。録画面接ではネット通信が不調の場合でも記録が残されるので、不慮のアクシデントでも応募者は安心して面接を受けられる。実際、録画面接を受ける応募者が多いという。HireVueでは、言葉、音声、表情から、AIが応募者の資質が判断される。たとえば、応募者が会話中に用いる名詞でその人の専門性が判断できるというのだ。
HireVueだと、応募者が合わないと思った場合、面接中に断念の判断ができるため、コストや時間削減にもつながる。
まとめ
意思決定に使用できるAI。AI面接で測られるのは、人間が面前で判断できる資質だけでない。しぐさや言葉遣い、表情など、潜在的なことも計測可能だ。これにより、きめ細かな判断が可能になる。
一見直接面接するほうがいいようにも思えるが、企業側からみれば多くの人材が応募する可能性が高い。だからこそ、AI面接を取り入れている企業が多いのかもしれない。
<参考>
- SHaiN
https://shain-ai.jp/ - AI面接サービス簡易版「SHaiN EX」アプリ提供開始〜もっと手軽に・もっと早く・もっと安く〜(talent and assessment)
https://www.taleasse.co.jp/2018/07/05/shainex/ - GROW360
https://www.grow-360.com/ja/ - AIが学生を審査? “採用”に踏み込む最新のAIサービス(キーマンズネット)
https://www.keyman.or.jp/kn/articles/1809/18/news139.html - HireVue(タレンタ)
https://www.talenta.co.jp/product/hirevue/ - 「デジタル×AI面接」実はこんなにスゴいことになっていた(現代ビジネス)
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/56196 - 「AI面接官導入のメリット」(『マッセOsaka研究紀要』2019年3月号)
- 『AI面接#採用』(山﨑俊明 著)
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