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自動運転の開発を加速させる大手自動車メーカー

今世紀において未だ完全に実現できていない事がある。“自動運転”だ。自動運転の技術を実現しようと試みている企業の実例と、この技術によってどのような未来が実現されるのかを紹介する。

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私たちの先祖が思い描いていた未来予想図には日本各地へ簡単に移動することができる電車や各家庭に1台置かれているテレビ、世界中のどこへいようが誰とでも連絡がとれる携帯電話など、今の時代にとっては当たり前な技術やデバイスが、まるで非現実的な夢物語かのようにして、描かれていた。

しかし、テレビや携帯電話などと同じようにリストアップされていたもので、今世紀において未だ完全に実現できていない事がある。“自動運転”だ。この技術の研究は昔からされてきてはいたのだが、科学的な技術や法律的な面など多角的な視点から慎重に考慮しなければならないため、なかなか飛躍的な進歩が見えず、大きく注目される機会がなかった。

第3次AIブームと謳われる昨今、自動運転技術は急速な進歩を遂げ、限定的ではあるが社会実装に向けてあと1歩の段階にまできているのだ。実際に自動運転の技術を実現しようと試みている企業の実例と、この技術によってどのような未来が実現されるのかを見ていく。

自動運転技術でアマゾンと共同開発を進めるトヨタ

2018年3月2日にトヨタ自動車は、2020年に自動運転車を本格的に社会へ実装するために、その技術を開発する子会社「トヨタ・リサーチ・インスティテューション・アドバンス ト・デベロップメント」をデンソーとアイシン精機と提携して設立することを明らかにした。

これまでにトヨタは研究開発を行う自身の子会社で、アメリカに設置されている「トヨタ・ リサーチ・インスティテュート(TRI)」は、自動運転における基盤の技術を主に研究・開発してきた。先述の新子会社では今までのその開発した技術や研究成果を自動運転車の実用化に繋げることを目指している。社内の言語は英語に統一し、国内・国外問わず、研究機関や大学に属する技術者などの人材を積極的に採用し、今後数年で 3000 億円以上をこの事業に投入する予定だ。

具体的な目標として、AI を用いて高精度な地図を自動的に作成する技術や従来は人間が行っていた状況判断を可能とする技術の開発を目指している。本格的な社会実装は2020年で、高速道路での採用を実現しようとしており、その数年後の2020年代前半には一般道での採用を予定している。 技術者の人材不足が叫ばれる中で、トヨタ自動車はアメリカのアマゾン・ドット・コムや中国の滴滴出行など合計5社と契約を結び、自動運転技術の共同開発を進めていくと発表しており、次世代の新技術開発を積極的に向上させていく方針である。

<関連記事>
自動運転の仕組みとAIの重要性

2025年を見据えたホンダの自動運転

トヨタのライバル企業であるホンダも自動運転技術の開発へ向けて日々研究が行われて いる。ホンダの子会社で AI を使った自動運転技術開発を主導するホンダ技術研究所四輪R&D センター統合制御開発室 AD ブロック主任研究員の安井祐司氏は2017年12月12~13 日 にかけて行われた「GTC Japan 2017」の技術イベントの発表でホンダが思い描く自動運転車のビジョンを明らかにした。

ユーザーが希望する場所へ、例え高精度地図データが存在し ていなくても連れていってくれる自動運転車の開発を目指していると安井氏は言及した。

ホンダは 2025 年に「パーソナルカーレベル4自動運転」を実装させる目標を立てており、高精度地図が存在する都市部などの地域はレベル4で走行し、高精度地図が存在していない郊外などの地域ではレベル 3とするなどユーザーの意思を尊重して走行していくことも、そのイベント内で明示した。

今まで自動運転の技術があまり注目されなかった主な要因として、「どこまで人間が機械 に頼るのか」が挙げられるのだが、安井氏はこれについてホンダの考えを述べた。ホンダが目指すのは誰からにでも万全な信頼が置かれること、また、まるで専属の運転人が運転しているかのような自然で心地が良い自動運転をユーザーへ提供すること、これらをモットー にしたのがホンダの自動運転車なのだと云う。

DeNA社と無人自動車を共同開発する日産自動車

以上に取り挙げたトヨタ自動車とホンダの自動車はプライベート用の車両として提供していく予定なのだが、同種の企業である日産自動車はディー・エヌ・エー社と共同で無人自動車によるパブリック向けの移動サービス「Easy Ride」の提供を考えている。

2018年の3月に一般モニターを募ったうえでの実証実験が横浜市のみなとみらい地区周辺で行われ、実際の工程を検証し、そのフィードバックを参考にして2020年に本格的な実装を目指している。ちなみに今回の実験では予期せぬアクシデントに備えてドライバーが同乗した。

「Easy Ride」ではユーザーが専用のアプリを開き、「おいしい朝食を食べたい」などの要望を音声で入力すると、その条件を満たす店の候補が複数表示される。候補を選んだ後に目的地、乗車場所、乗車日時をユーザーが選択して予約を行う。自動車が到着したらユーザーはそのアプリを使ってロックを解除し後部座席へ乗車。自動運転によってその目的地にまでユーザーは向かうことができるのだ。車内に設置されているタッチパネルには目的地周辺の店舗で使用できるクーポン券が表示され、紹介されるそれらの提携店舗はその運賃の一部を負担することが検討されている。

日産の西川廣人社長は「魅力ある車の提供」という同社のコンセプトに「技術革新の先にある新しいモビリティーサービスの提供」というビジョンを加えることを明言した。共同開発を行っている DeNA の守安功社長は、高齢化に伴う移動困難者や運輸業界が抱える人手不足などといった社会的な課題の解決を図ることを目指すと発表している。

まとめ

最近まで自動運転の技術についてあまり注目されなかった主な要因として、法整備が挙げられる。従来は人間が運転という行為を行っていたため、それに即した法が適用されてきたのだが、自動運転の研究・開発が進む中で関連制度との関係の整理や規制緩和が徐々に始まってきている。

例えばジュネーブ道路交通法やウィーン道路交通条約では「車両における運転者の存在」や「運転者による車両の操縦」「運転者による車両の制御」が制定されていたのだが、自動運転と整合性がとれない部分も存在しているため、国際連合欧州経済委員会の道路交通安全作業部会はこれらの条約の改正作業を行ってきた。

また、2017年に安倍政権では 2020年までに自動運転の実用化を目指す方針を発表し、 普及に向けた制度整備を進めることを明らかにした。

以上の事例で見て取れるように、昨今の自動運転の技術は従来と比べて飛躍的に向上し、 数年後に実現させる方針を複数の企業が発表している。また、その環境をとりまく法整備の改革も行われているため、2 年後の2020年を皮切りにとうとう、先祖含め我々が思い描いていた自動運転車が普及するのか注目したい。

<関連記事>
自動車におけるAI活用事例 〜海外編〜


<参考>

  1. 独立行政法人情報処理推進機構 AI 白書編集委員会・編『AI 白書 2017』
    https://www.ipa.go.jp/about/report/ai/201707.html
  2. トヨタ、自動運転AIで新会社 都内に1000人規模 (日本経済新聞)
    https://www.nikkei.com/article/DGXMZO27626700S8A300C1MM8000/
  3. 日産とDeNAが自動運転レベル4で実証実験 横浜みなとみらい地地(ニューズウィーク日本版)
    https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2018/02/dena4.php
  4. 「ホンダの自動運転はパーソナルカー」安井裕司氏…GTC 2017(レスポンス)
    https://response.jp/article/2017/12/19/303926.html
  5. 安倍首相「2020年までに自動走行で人手不足や移動弱者を解消」未来投資会議(日本経済新聞)
    https://www.nikkei.com/article/DGXLASFL16HWE_W7A210C1000000/

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