【この記事は約 4 分で読み終わります。】

金融機関でのAIの国内活用事例【株価予測から不公正取引監視まで】

生活環境にAI技術を活用することによって、生活を豊かなものへと変化させてくれる。そんなAI技術の活用例の1つである株式取引での活用事例を紹介する。

シェアする

  • RSSで記事を購読する
  • はてなブックマークに追加
  • Pokcetに保存する

近年、金融業界において人工知能(AI)を導入する取り組みが注目を集めている。実際に皆さんも、銀行の窓口や相談でチャットボットが対応する場面に遭遇したことがあるのではないだろうか。それだけ、AIは私たちに身近な存在となりつつある。

そして、一部の金融機関では株のトレーディング業務においても、アルゴリズム取引にAIを活用する動きが広まっている。そこで今回は、多くの人がAI活用に関する興味・関心を創出できればと思い、実際に株式取引でAIが活用されている事例を紹介していく。

みずほフィナンシャルグループ

全体の業務で人工知能(AI)を積極的に取り入れようとしているのが、みずほフィナンシャルグループだろう。ロボット技術をあわせて活用することによって、大規模な構造改革を今後10年で計画していることを発表している。

同社は、日本株のトレーディング業務においても、アルゴリズム取引にAIを導入している。具体的には、企業の株価が30分、1時間後にどのような値動きをするかを予測するAI機能を組み込んだ取引システムを提供している。これらの情報源はすべて匿名で紹介されており、他社との差別化を図るための取り組みとされている。

株価の予測は、同社が提供するディープラーニングが使われている。同社のAIシステムには、銘柄ごとに約5000種類の情報やデータが入力されている。ここからさまざまな事象に関する法則や周期性を見つけ、将来の株価を予測していく。そして、同社はこのシステムに対して特許を出願しているとも報じられている。

前述した通り、同社はAIを積極的に活用しようと取り組んできた。その結果として、2015年からAIチームを結成。コンピューターサイエンスなど特定の分野において博士号を持つスペシャリストを起用し、さらなる技術開発を手掛けている。最先端のAIによる株価予測には、アルゴリズム設計の専門家を合わせて10人程が関わっている。

三菱UFJ信託銀行

三菱UFJフィナンシャル・グループの傘下でもある同社。グループ会社である三菱UFJ銀行では、「バーチャルアシスタントChatサービス」を導入し、投資信託に関する相談を自動応答で対応するチャットボットサービスを展開するなど、グループ全体で人工知能(AI)の活用に積極的なことで知られている。

そして、三菱UFJ信託銀行においても、AIを活用した絶対収益型運用により安定的な収益を狙う日本株式ファンド「AI日本株式オープン(絶対収益追求型)」を2017年2月より取り扱いを開始している。これは、株式個別戦略銘柄と先物アロケーション戦略の2つを組み合わせることで、絶対収益の追及を目指すというものである。

2つの技術を組み合わせ

同社が提供するAIファンドでは、テキスト分析とディープラーニングを組み合わせて投資判断を行う。テキスト分析では大量の文字情報を中心に分析して銘柄選択の判断材料にする。対するAIでは株式市場に影響を与える要素をディープラーニングで解析して、翌日の株価を予測する。これは、成果を安定させることを目的としている。

2つの運用戦略を駆使

同社のファンドにおける現物株式の個別選定に関しては、中長期と短期の2つの運用戦略を駆使している。どちらも多種多様で膨大なデータを活用し、それぞれの戦略に合った情報の選別と組み合わせによって、個別銘柄を選別している。同社が持つ決算短信・IR情報・有価証券報告書などのビックデータから最新の情報をピックアップしている。

不公正取引をAIで監視

株式取引において、脅威の存在となっているのが不正取引だろう。過去には、SBI証券が個人投資家による不正な注文を長期に渡って見過ごすなど、大きな問題となっていた。インターネット取引が当たり前となってきた現代において、こうした不正取引を防止するための対策が各ネット証券会社で急がれている。

大手の証券会社では、1日に数十万件もの株式取引が行われている。不正な売買に関しては各担当者が一定の基準に基づいて「不公正取引」の恐れがあるものを抽出している。不公正取引には、「仮装売買」「馴合売買」「株価操作」などの相場操縦も含まれており、これらの問題を人手によって抽出するのは効率的とは言えない。

AIを活用して監視業務を高度化

そんな状況下で楽天証券は、NECが開発したAI技術「NEC the WISE」のディープラーニング技術である「RAPID機械学習」を用いて、不公正取引の自動判定が可能かどうかの実証実験を開始している。今後は、マネーロンダリングなどの検知や未然防止機能の実装に関しても積極的に検討していく方針を固めている。

AIによる売買審査業務

SBI証券でもNECの「RAPID機械学習」を導入し、売買審査業務の実証実験を行うことを発表。同社では、不公正取引の疑いがあるものに対して、事前に設定したシステムで抽出するなどの対策を講じているものの、やはり業務効率が悪いという課題が挙がっていた。AIに初期調査の大部分を判断させることによって、担当者の業務軽減を狙っている。

まとめ

ここ数年で、「人工知能(AI)が人間の仕事を奪う」などの表現を多く耳にするようになった。しかしながら、実際には私たちの生活環境にAI技術を活用することによって、それらを豊かなものへと変化させてくれる。

また、さまざまなデータ解析を行うことで新しい仕事を生み出していることも事実だろう。今回は金融領域に的を絞ってAIの活用事例を紹介してきたが、幅広い産業で次々と導入されている。今後、多くの場所でAIが活躍していくことを願いたい。


<参考>

  1. みずほFGが日本株取引にAI導入へ、MiFID2に先行-関係者 (ブルームバーグ)
    https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-09-20/OWKB5L6JTSE801
  2. AI日本株式オープン(絶対収益追求型)(三菱UFJ信託銀行)
    https://safe.tr.mufg.jp/cgi-bin/toushin/tsl.cgi/funds/03314172/index.html
  3. 楽天証券とSBI証券が「不公正取引」をAIで監視、実証実験を開始へ(AI BIBLIO)
    http://ai-biblio.com/articles/707/
シェア

役にたったらいいね!
してください