「人工知能(AI)に仕事を奪われる」「SF映画のように、コンピュータによって人間は支配される」・・・。
そんな噂もチラホラ聞かれる昨今だが、今後、私達の世の中や仕事のあり方はどうなっていくのだろうか。
ここでは特に私達に身近で現実的な、私達の仕事がどうなっていくのかについて、最近のAIに関するニュースをいくつか取り上げながら考えてみよう。
人工知能によって変わる世界
かつての18世紀後半のイギリスでの産業革命以来、私達の仕事の現場には、常に機械が入り込んできた。
私達の仕事の日常には、どこにでも機械があり、私達の仕事を助けてくれる。いまさら、機械なしで仕事をするなど考えられない、という人も多いだろう。
「機械に人間の仕事を奪われる」という心配は、今に始まったことではない。
人工知能がまだ無かった時代から、人間の仕事は機械に奪われ続けてきた歴史がある。それでは、昨今の人工知能の進歩は、これまでの(単純な)機械によって仕事を奪われてきた歴史とは、どのように違っているのだろうか。
人工知能によって特に仕事に影響が大きいと言われているのが、ホワイトカラー(頭脳労働をする人や背広・ネクタイ姿で仕事をする人)である。
これまでの単純な機械とは違い、現在のディープラーニングをはじめとしたAI技術は、曖昧な判断や複雑な状況判断をある程度こなせるようになった。
これまでの単純な機械による「単純な繰り返し作業」よりも、広い範囲での仕事への応用が可能となったのだ。
人工知能がクルマの自動運転もするようになった
まさか自動車の運転を人工知能が自動でするなんて、少し前までは(ごく一部の専門家以外には)信じられないことだった。しかし、もうすでに自動運転車の実用段階が今すぐ目の前に来ている。
だが、ひとくちに「自動運転」といっても、いくつかの段階がある。
自動運転には4つのレベルがあり、現在は「レベル2」、ハンドルに人間が手を置いている必要がある、という段階の自動運転車が日本では発売されている状況だ(*1)。
自動運転技術によって、物流・配送サービスやバス・タクシー業界などが、人工知能の自動運転技術によって影響が大きいと思われる。
ドローンでの無人配送サービスの開発も活発に行われていることも含め、自動運転技術によって仕事を奪われる可能性の高い業界かも知れない。
また、道案内の技術もより便利になり、熟練のタクシードライバーの長年の知識に引けをとらないほどになっている(*2)。
人間の熟練技術・ベテランの仕事のあり方についても、人工知能は影響を大きく与えそうだ。
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人間の言葉は、いまだ理解が難しい
自然言語の解析や自動生成については、人工知能研究の最初の段階から研究され続けてきた分野だ。
しかし、自然言語処理の分野は、画像処理や音声処理などの最近の進歩に比べると、思ったほどの成果をあげられていない。人工知能としては、自然言語処理は簡単そうに見えて実は非常に難しいのだ。
それでも最近のスマホなどでの音声認識からテキストへの変換処理は、実際に使ってみると、相当な精度で、しかも素早く行えるようになってきた。
自然言語処理の分野においても着実に人工知能の技術は進歩をしていて、通訳や翻訳者やライターなどの職業についても、
画像認識などには少しタイミングが遅れてはしまうだろうが、大きな影響があると思われる(*7)。
また、小説家などのような、オリジナリティや芸術性を問われる仕事についても、人工知能は成果をあげている(*8)。
絵画や作曲でも自動作成がすでに行われていて、言わなければ人間が作ったのか機械が作ったのかわからないものまでもある。
自動文章生成に関しては、今の段階ではまだまだ精度が劣るが、いずれ追いつくのかも知れない。
ただし、自然言語を認識するためには、「身体性」や「世界(環境)認識」への認識が不可欠とも言われている。
この問題の解明次第で、明日にでも実現可能かも知れないし、ずっと実現は難しいかも知れない。その岐路に立っているのが今の現状だ。
日本の農業にとっては?
農業の自動化については、日本では特に影響が大きいかも知れない。
アメリカなどの大規模経営の農業については、以前から大型機械が仕事を助けてきたが、日本では比較的小規模単位での経営が多かった。
そういう日本では、小さな農家が機械に投資をすることも難しく、またこれまでの単純な機械では細かい作業や臨機応変な作業は不可能だった。
しかし、最近の人工知能を活用した農業機械の進歩はめざましく、臨機応変で様々な作業も可能になってきた。
また、作業を教えるのにも、これまでは専門的な知識を持たないと機械に教えられなかったことが、人間の感覚に近い形でロボットのアームを動かしてあげ、作業を教えるという技術も進歩している。高齢者や女性でも機械を扱いやすくなってきたのだ。
室内での栽培を行い、人工知能が管理する仕組みも整ってきている(*9)。
農業生産は必須で無くならない仕事だと思われるから、この分野では人工知能のおかげでかえってチャンスが大きくなっているのかも知れない。
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私達の仕事の未来予想図は予測できる?
「人工知能によって、自分の仕事が奪われるかも知れない」と心配している人も多いだろう。しかし、人工知能研究者の書籍などを読んでいると、冷静で具体的に考えることをすすめている場合が多い。
ホワイトカラーなど、これまでの単純機械ではあまり影響の少なかった分野にも、人工知能が大きく影響を与え、本当に(または既に)、「仕事を奪って」いきそうだ。しかし、業界によっては、かえって雇用が増える分野もありそうでもある。
また、最近では自動運転では倫理面での問題が大きく取り沙汰されるようになってきており、自動運転にとって良い方向に向かうのか、悪い方向に行ってしまうのかも予測がしにくい(*3)。
現在は特に、近い将来でさえ予測が見通せない状況なのだ。
先日亡くなったホーキング博士は、人工知能に懐疑的な意見を持っていた。
人工知能が偏見を学んでしまったり(*4, *5)、人間と同様に錯誤をしたり(*6)するニュースも増えてきた。だから私達はより冷静に、人工知能による”第4次産業革命”を乗り切る方策を考えておかなくてはならない。
人間がどのように人工知能をうまく利用するのか、その応用をする技術が今問われているのかも知れない。
<参考>
- 自然言語処理の基本と技術 (奥野陽、 グラム・ニュービッグ)
- 脳・心・人工知能 数理で脳を解き明かす (甘利俊一)
- 「自動運転」でなくなる20の仕事ランキング (週刊現代)
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/50859 - 8年後には123万人の仕事が消滅? (ビジネスジャーナル)
http://biz-journal.jp/2017/09/post_20450.html - ウーバーの自動運転実験、アリゾナ州が許可取り消し (日本経済新聞)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO28672310Y8A320C1000000/ - 人工知能が「偏見」を学んでしまった──画像認識で「白人男性」より「黒人女性」の識別率が低かった理由 (WIRED)
https://wired.jp/2018/02/23/photo-algorithms-skewed-accuracy/
- 「AI裁判官」は全然公平ではなかった! 差別やミス連発で人間以下… 人工知能裁判のお粗末な実態 (トナカ)
http://tocana.jp/2018/01/post_15729_entry_2.html - 記者はもう要らない?データから記事を自動作成、米報道の最前線 (AFPBB News)
http://www.afpbb.com/articles/-/2889314?pid=9242777 - 進化する人工知能 ついに芸術まで!? (NHK)
http://www.nhk.or.jp/gendai/articles/3837/1.html - 採算改善進む植物工場、LED制御技術が成否のカギ (スマートジャパン)
http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1606/27/news037.html
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