顧客からの問い合わせに自動で応答してくれるチャットボットは、企業の発展を後押しする存在である。上手く導入することで存在価値を高めることができるのだ。
チャットボットはどのよう領域で企業に導入されているのか?
前回は「チャットボットとはどのようなものか」について紹介した。記事を読んでいただければ、大体の概要はおわかりいただけると思うが、基本的にはインターネット上で質問に対する回答を行うというやりとりを、それなりに高度な内容であっても、人間ではなく自動で応答できるプログラムであると考えてもらえば良い。
では、このチャットボットはどのような企業に導入され、どの様に利用されているのだろうか。実は商品やサービスを提供している企業で、顧客やユーザーからの電話による問い合わせが多い企業であれば、ほぼどこでも導入を検討するに値する。実際、電話であれ、オンラインでのチャットであれ、人間が対応すると人件費もバカにならないし、夜中はどうしても対応が難しくなる。しかしチャットボットであれば24時間365日、いつでも動いていて、自動で返答を行ってくれる。
今回は、チャットボットを導入した例や、チャットボットの提供企業について紹介していきたい。
活用事例1 (カスタマーサポート編)
まずは何と言ってもカスタマーサポートだろう。これが最も多く導入されている事例である。前回も「FAQはなかなか読まれないので、チャットボット化すると良い」という趣旨の内容を書いたが、まさにそこである。
企業の導入事例としては、アスクル株式会社の運営するインターネット通販サイト「LOHACO」にチャットボットが導入されている。イラストによるキャラクターと、名前も付けられていて、「マナミさん」という。アスクルへの注文の仕方など、簡単な内容は全てマナミさんが対応してくれる。問い合わせの3分の1はマナミさんが対応しているというのだから、あれだけの品数を扱っている通販サイトとしては、かなりの部分を担っていると言える。実際に6.5人分くらいの人件費を削減できているそうだ。これを考えると、もし開発に1000万円かかり、毎月の運用費が2~300万円かかったとしても、1年もすればその分は回収できるということがわかるだろう。
それ以外にもライフメット生命ではreply.aiというシステムを導入し、LINEやFacebook Messengerで対応するチャットボットを導入している。こちらもFAQレベルの、人間が対応する必要のない内容についてはチャットボットが自動で返答し、より詳細なサポートが必要になった段階で人間に切り替わるというシステムになっている。とはいえ、FAQレベルの問い合わせを人間がいちいち返答するのは無駄であるため、このしかけは大変良い。
同様のしかけはSMBC日興證券でも導入されており、こちらもオペレーターへの切り替え機能を持っているため、単純な内容とより詳細なサポートで、チャットボットと人間が分担して対応している。
さらにヤマト運輸でも、LINE上でチャットボットによる問い合わせに対する自動応答を行っている。配達状況の確認、日時変更まで、チャットボットが自動で対応してくれるので、時間を気にせずにサービスを利用することができる様になっている。
活用事例2 (売り上げアップ施策編)
では他の事例はないのであろうか。実はこの自動対応によって売上アップを図っている企業がある。
例えばコンビニエンスストアのローソンが提供するチャットボット「ローソンクルー♪あきこちゃん」である。ユーザーとの自然な対話を行えるようになっており、その中で商品情報やクーポンを提供してくれる。これによりユーザーとの関係維持と売上向上を両立させている。ちなみにこのチャットボットはマイクロソフトが開発した女子高生AIとして有名な「りんな」をベースに開発しているそうだ。そのため、どの様な内容で話しかけても、ほとんどの内容に自然な返答を返してくれる。知らなければ人間が対応していると思うほどである。
またファッションブランドのナノ・ユニバースは、運営しているECサイトにチャットボットを導入。それまでは対応していなかった深夜時間でも自動対応が行えるようにしたことで、顧客あたりの購入単価が約2倍になり、一人あたりの購入回数も約1.7倍に増えたとしている。また、問い合わせに対するチャットボットだけで完結する割合が70%に達しているとされ、省人化に繋がっている。
その他、商品のリコメンドを行うチャットボットも存在する。例えば化粧品通販の協和が運営する、化粧品や健康食品を販売するECサイト「fracora(フラコラ)」では、SENSYが提供する「SENSY BOT」を活用している。ユーザーが美容や健康についての悩みを書き込むと、それに対応する商品を提案する。もちろん提案された商品画像からECサイトに移動し、そのまま購入することができる。
AIはデータベース、特にビッグデータとの相性が良いため、チャットボットにリコメンド機能を持たせることで売上増加に直結できる可能性が高くなる。
チャットボット提供会社を紹介
これまでチャットボットの利用方法について紹介してきた。ここからは、そこで利用されているチャットボットを提供している企業について紹介したい。
まずはIBMのコグニティブサービス「Watson(ワトソン)」をベースとしたチャットボットである。
「Watson」の詳細は、次のURLを参照して欲しい。
https://www.ibm.com/watson/jp-ja/how-to-build-a-chatbot/
Watsonは現在でこそさまざまなAIソリューションシリーズを展開しているが、もともとは自然言語処理に特化したAIからスタートした。そのためWatson Assistant APIを利用して、「誰でも」チャットボットを作成できるとしている上、そもそものWatsonを利用したチャットボットソリューションについて、IBM以外にも様々な企業が開発・提供している。
例えば株式会社バイタリフィの「FirstContact」は、ECサイトやネットショップでの問い合わせに対応する。
それ以外にも、社内問い合わせシステムである木村情報技術株式会社の「AI-Q(アイキュー)」は社内の知識リソースを統合することで、残業時間抑制などに貢献する。
次に、NTTコミュニケーションズのAI「COTOHA(コトハ) Chat & FAQ」をベースとしたチャットボットを紹介する。「COTOHA(コトハ) Chat & FAQ」の詳細は、次のURLを参照して欲しい。
https://www.ntt.com/business/services/application/ai/cotoha-cf/lp.html
このCOTOHAはNTTコミュニケーション科学基礎研究所が開発している「corevo」をベースに開発されている。あくまでもNTTグループおよび、その共同開発者向けに提供しているだけだったが、現在はcorevoもAPIの提供を行っている。さらにCOTOHAも2018年6月末からAPI提供を始めているので、独自のチャットボット開発もできるようになってきている。
3つ目はナノ・ユニバースも導入している「OK SKY ChatBOT」である。「OK SKY ChatBOT」の詳細は、次のURLを参照して欲しい。
ECサイトでの活用も行われているが、実店舗での店内案内サービスなど、リアルの場での利用も行われている。バーチャル、リアルを問わない接客ソリューションサービスであるとしている。
最後にOKIのAI対話エンジン「Ladadie(ラダディ)」である。「Ladadie」の詳細は、次のURLを参照して欲しい。
http://www.oki.com/jp/ladadie/?pid=OKI-Jp_IoTdoc
基本的には他と同じチャットボットではあるのですが、このサービスの特徴はユーザーが行った入力文章の内容を解析し、少しずつ発話内容を変えながら複数回のやりとりを行い、ユーザーの望む回答を導き出すように設計されている点です。コンサルタントが行う、ユーザーの真のニーズを導き出すラダリングという技法を実現している点が、他のチャットボットとの差別点でしょう。
まとめ
チャットボットを利用しているシーンは大きく分けると3つになる。今回はきちんと紹介しなかった社内の情報共有を促進させるしくみ。これはカスタマーザポートの延長と言えなくもないが、社内の業務効率化を推進するものであるため、あえて別物としよう。
むしろ現時点で最も進んでいる導入スタイルは、やはり顧客に対するFAQなど、商品やサービスに対する問い合わせを24時間365日、自動対応させるしかけである。これまでは対応してこなかった深夜の時間帯でも人間を雇わず対応可能な点が導入のメリットである。もちろん昼間の時間であっても、簡単な内容の問い合わせであれば自動対応可能であるため、対応する人員の人件費節減にも役に立つ。
3つ目は売上アップに使っているもの。特にリコメンド機能を持たせ、顧客の好みや悩みに対応する商品を提案するチャットボットの導入が始まっている。
これらはIBMやNTTコミュニケーションズといった大手から、そこが提供しているAPIを活用して開発しているスタートアップまで、様々なソリューションが発表されている。中には事前に対話を行うチャットボットや、コンサルタントのノウハウを使うものまで存在している。
これら、数多くあるソリューションの中から、やりたいことを明確にし、自分たちの用途に合うソリューションを探せば良いと思う。また、対応するぴったりのソリューションが存在しないのであれば、提供されているAPIを利用して、新たに開発することもできる。いずれにせよ、チャットボットを導入する企業はこれからどんどん増えていくため、先に利用した方が業界でも先行することができるだろう。
<参考>
- チャットボット企業導入事例まとめ!各社の導入ポイントをご紹介(Ledge.ai)
https://ledge.ai/chatbot_example/ - チャットボット事例で簡単に分かる、導入すべき3つのメリット(OKI)
https://www.oki.com/jp/iot/doc/2017/17vol_02.html - 売上を3.3倍向上するチャットボット活用事例(OK SKY ChatBOT)
https://bot.ok-sky.jp/%E5%A3%B2%E4%B8%8A%E3%82%923-3%E5%80%8D%E5%90%91%E4%B8%8A%E3%81%99%E3%82%8B%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%9C%E3%83%83%E3%83%88%E6%B4%BB%E7%94%A8%E4%BA%8B%E4%BE%8B/ - AIチャットボットで商品提案&健康相談、化粧品通販の協和がECに「SENSY」を活用(Impress Business Media)
https://netshop.impress.co.jp/node/5258 - Watson(IBM)
- https://www.ibm.com/watson/jp-ja/
- FirstContact(バイタリフィ)
https://first-contact.jp/?gclid=EAIaIQobChMI6_Hmu6XM3QIVSa6WCh0JvgxPEAMYASAAEgIgifD_BwE - AI-Q(木村情報技術)
https://www.k-idea.jp/product/ai/ai-q.html - COTOHA Chat & FAQ(NTT Communications)
https://www.ntt.com/business/services/application/ai/cotoha-cf/lp.html - corevo(NTT)
http://www.ntt.co.jp/corevo/ - OK Sky ChatBOT(そらいろ)
https://bot.ok-sky.jp/ - Ladadie(OKI)
http://www.oki.com/jp/ladadie/?pid=OKI-Jp_IoTdoc
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