AI(人工知能) 使用例

AIロボットが接客する”変なホテル”が長崎にある

長崎県佐世保で生まれたロボット接客の「変なホテル」が東京進出を果たし、なお拡大を続けている。最近はAIも導入し、日本のおもてなしを変革しようとしている。

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長崎県佐世保市にハウステンボスというリゾート施設がある。そこには宿泊施設があって、名称は「変なホテル」という。世界で初めてロボットがホテルの接客をしたことで、ギネス世界記録に認定された。

変なホテルは、ロボットが働いているから「変な」わけではない。

ハウステンボスの親会社であるH.I.Sホールディングスの澤田秀雄代表取締会長兼社長は「絶えず変化して進化するから『変』とつけた」と語っている。

変なホテルは澤田氏の宣言とおり変化を続け、ロボット化の正常進化としてAI(人工知能)も取り入れ始めた。

この取り組みがホテルの「AIおもてなし」の未来像となるかもしれない。

AI(人工知能) 使用例

ロボット、AI、IT、IoTの位置づけ

ロボットとAI とITとIoTとは、密接不可分でありながらそれぞれ役割が異なる。この4つの関係性を押さえておくと、変なホテルは理解しやすい。

・ロボット:人の動きを再現する

・AI:人の脳を再現する

・IT:ロボットとAIの基礎技術

・IoT:ITとロボットとAIをつなぐ技術

鉄腕アトムをリアルの世界で生産するには、この4つの技術の発展形をふんだんに盛り込む必要があるだろう。なぜならアトムは自分で考えるロボットでありながら、お茶の水博士によってコントロールされているからだ。ロボットとAIを結合できると「考えるロボット」ができ、さらにIoTを組み合わせることで「人が遠隔操作できる考えるロボット」が完成するというわけだ。

よって、現代でもアトムを生み出せていないのは、

・この4つの技術がまだ十分に発展していない

・この4つの技術を結合できていない

からだ。

そして変なホテルのロボットもAIもITもIoTも、「まだ」十分に発展していないし、「まだ」4つの技術を結合できていない。しかし変なホテルがあるハウステンボスは、この4つを発展させるには理想的な場所だ。だから「今後」この場所で大きなイノベーションが生み出されるかもしれないのだ。

ハウステンボスはなぜ挑戦できる場所なのか

ハウステンボスは東京ディズニーランドとディズニーシーを足した面積に匹敵する敷地に、オランダの街を再現したテーマパークだ。2,100億円の巨費を投じて1992年に開業したが、2003年に経営破綻している。

その後リニューアルオープンしたがうまくいかず、再建が軌道に乗ったのは、2010年にH.I.Sが支援に乗り出したからだ。

「澤田改革」は奏功し、コストを下げて集客を増やすことができた。ハウステンボスの2017年9月期の純利益は66億円で入場者数は288万人だった。

変なホテルは2015年にハウステンボス内に開業した。人型のロボットと恐竜型のロボットがフロントに立ち、チェックインとチェックアウトの手続きを行う。

しかし開業当初、ロボットの動きはまだぎこちなく、客から「動きが遅い」などのクレームが相次いだ。

しかしこうしたクレームは変なホテル側には想定内で、周囲からロボットに接客させるのは時期尚早と言われるなかで、わざと見切り発進したのである。それは、ロボット接客が未完成のまま客に泊まらせたほうが評判になると踏んだからだ。

この狙いは見事的中し、変なホテルの開業時の2015年には6種82台のロボットしかなかったが、2年後の2017年には25種200台にまで増えた。そして変なホテルの人の勤務者は、2015年の30人から2017年の7人にまで減った。

成果はまだある。変なホテルは関東への進出を果たし、2018年末には、舞浜、西葛西、銀座、浜町町、赤坂、浅草橋、羽田、大阪心斎橋、博多など計13ホテルになる予定だ。

挑戦と失敗と再挑戦することが許されたから、変なホテルはわずか3年でチェーン展開できたのだ。そして変なホテルに挑戦と失敗と再挑戦が許されたのは、挑戦と失敗を再挑戦でよみがえった「ハウステンボスという土壌」があったからだ。

AI活用はまずは「変なバー」から

冒頭に解説したロボットとAIとITとIoTの結合は、変なホテルはまだ実現できていない。変なホテルの場合、ロボットが先行し、その後をAIが追いかけている形だ。

ハウステンボスは2017年11月に、変なホテルのなかに無人の「変なバー」を開いた。バーのラウンジには店員はいない。あるのは、タブレットだ。

変なバーの来店客はタブレットを操作してビールやカクテルを注文する。その後、客がビールやカクテルのサーバにコップを置くと、自動でアルコールが注がれる。支払いはクレジットカードで決済される。

ここまではITとIoTで済んでいて、AIは使っていない。

変なバーのタブレットには女性のキャラクターが仕込まれていて、このキャラクターが接客する。キャラクターをAIでコントロールすることで、客との「会話」をより自然なものに近づけていく。

ただ当面はタブレットのなかのAIキャラクターだけに「仕事」を任せず、場面によって人のオペレーターがキャラクターを操作して接客する。

だからAIバーは営業を開始しているとはいえ開発段階ともいえ、ここでもあえて見切り発進する姿勢がうかがえる。

そしてAIは、舞浜の変なホテルにも導入された。ここではAIが客の声を認識し、客が音声で室内のライトを点灯させることができる。

H.I.Sは日本のホテル接客を変える気だ

H.I.Sの子会社に株式会社hapi-robo st(ハピロボ)という、ロボットの開発会社がある。子会社とはいえ、同社の代表取締役会長を澤田氏が務めるといった力の入れようである。

ハピロボは、ハウステンボスをロボット開発の実験場として使っている。ハウステンボスは広大な私有地なので、行政の規制を受けずに開発できる。ロボットを歩かせることも、ドローンを飛ばすことも自由だ。しかもハウステンボスには「本物の客」がたくさんいるから、本番さながらの臨場感で実験ができる。

そしてハピロボは、ロボット開発をしている他社にもハウステンボスを貸している。ロボット開発会社のなかには、開発が進み「あとは実証実験をするだけ」というところも少なくない。ハピロボはそういった企業に実証実験の場を提供するのだ。

もし実証実験が成功すれば、そのまま変なホテルや変なバーに導入することができる。ロボット開発会社は販売先を確保できるし、変なホテル側は最新ロボットをどのホテルよりも早く導入することができる。

これだけ優れた開発拠点なので、将来的には大々的に「AIホテル」や「AIテーマパーク」を展開することもできるだろう。

AI(人工知能) 医療

つまりハウステンボスのなかにある変なホテルは、世界一速くロボットホテルやAIホテルをつくることができるポテンシャルを秘めているのだ。

変なホテルが、ホテルの接客を変えることになるかもしれない。

ロボット接客やAI接客をどう考えるか

一般的なホテルの売上高営業利益率は30%ほどといわれている。売上高営業利益率とは営業利益の売上高に占める割合なので、この数字が大きいほど儲かる。そしてあるマスコミの試算によると、変なホテルの売上高営業利益率は60%に達しているという。ロボットで人件費を大幅に圧縮できる効果はこれほど大きい。

しかしホテルの客は、接客に人のぬくもりを求めることが少なくない。そのため一般のホテルでは、自動化や省人化ができる場所にもスタッフを配置することがある。スタッフが笑顔で「こんにちは」というだけで、ホテルの印象がよくなるからだ。

変なホテル側は「人のぬくもり」についてどう考えているのだろうか。というのも変なホテルを一躍有名にした、フロントに置いた人型ロボットや恐竜ロボットは、客から飽きられるリスクがある。

変なホテルはその回答を2つ用意している。

1つ目は、ロボットを更新することだ。例えば人型ロボットや恐竜ロボットに飽きられることを想定し、アニメキャラクターなどの使用権の獲得を検討している。アニメキャラクターがホテルのフロントに立てば、それ目当ての客が泊まりにくるだろう。

2つ目はAIの活用だ。ロボットにAIを組み込んで顔認証の機能を持たせれば、リピート客がやってきたときに、ロボットが客を常連客としてもてなすことができる。サービスのグレードはAIによって向上させることができるのだ。

変なホテルの戦略は、ホテル自体をエンターテイメント化することだ。観光地のベースキャンプとしてのホテルではなく、ホテル自体を観光地にするのである。

変なホテルは、ロボットとAIに人のおもてなしをさせるのではなく、ロボットとAIにしかできないおもてなしをさせようとしている。

まとめ ー変は変革の変ー

変なホテルは変わっている。だから登場したてのころは、「変わり種」とみなされていた。しかし変なホテルが生み出したイノベーションを知ると、変は変革の変だったことがわかる。

そしてもしかしたら、変なホテル方式がホテル界の主流になるかもしれない。しかも変なホテルがこれだけの短期間で人件費の圧縮と楽しさの演出を成し遂げた実績を考えると、その日は案外近いのかもしれない。

つまり、変なホテルが「変な」という名前になっていることが変になる時代がくるかもしれないのである。


<参考>

  1. 「変なホテル」の立役者が語るAI、ロボット、IoTの活かし方とは?(IoTToday)
    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/50037
  2. “変なホテル”が生産性4倍を実現した理由(PRESIDENT Online)
    https://president.jp/articles/-/24617
  3. 「変なホテル」に無人バー、人工知能で接客向上図る 長崎・ハウステンボス(産経WEST)
    https://www.sankei.com/west/news/171109/wst1711090091-n1.html
  4. 「変なホテル」総支配人が語る、完全無人化が不可能な理由(ITmedia)
    http://www.itmedia.co.jp/business/articles/1707/12/news014.html
  5. ハウステンボス、無人でお酒を出す「変なバー」オープン(ITmedia)
    http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1711/09/news131.html
  6. ハウステンボス業績が増収増益、インバウンドは7%減も経常利益は4割増に 2017年9月期(トラベルボイス)
    https://www.travelvoice.jp/20171204-101664
  7. フロントに恐竜ロボ、部屋にもAIコンシェルジュ “変なホテル”が舞浜に登場(Asahishimbun Digital)
    https://www.asahi.com/and_travel/articles/SDI2017031512881.html
  8. 会社概要(株式会社 hapi-robo st)
    https://www.hapi-robo.com/about
  9. 変なホテル(ハウステンボス)
    http://www.h-n-h.jp/
    https://www.hennnahotel.com/
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