介護業界は今後AI活用で効率化が進む?

人材不足が叫ばれている昨今、これから人材が足りなくなることが明らかな介護業界。ここにロボットやAIを活用しようという動きが出ている。今回はいま提供されているロボットや、AIの活用状況について紹介する。

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ロボットとAIで人手不足の介護業界は救われるのだろうか。そしてその際の問題点は何だろうか。

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介護業界でAIの使用は進んでいるのか

介護業界は、これから人材を最も必要とする分野の一つと言われている。日本は少子高齢化が進み、既に65歳以上の人口が全人口の21%を越える「超高齢化社会」になっており、2030年代には全人口の3分の165歳以上となる。それに伴い、高齢者をどの様に支えていくのか、特に介護が必要となった高齢者に対するフォローを本格的に考えないといけない状態になる。

とはいえ、減り始めた人口を介護分野だけに投入するわけにもいかず、いかにして少ない人数で多くの要介護者の相手をするかが問われる。そこで重要となってくるのが介護ロボットの投入であり、それを動かすAI(人工知能)だということになる。

ただし、介護ロボットとは言え、必ずしも2本足で歩き、人間の代わりに介護を行うと考えるのは早計である。もちろん30年以上先にはそのような社会が来ているかも知れないが、現時点では次のような分野でのロボット、AI投入が想定されている。

1)要介護者の見守り

2)要介護者のメンタルヘルスケア

3)介助者をサポートするツール

1)、2)については次の章で詳しく紹介するのでここでは割愛するが、3)については一例を挙げると、トリプル・ダブリュー・ジャパン株式会社の「DFree」がある。これは膀胱に溜まっている尿の量を超音波センサーで検知。尿の量と排泄のタイミングを個人個人でデータ化し、そろそろトイレが近くなったなとシステムが検知すると、介助者(要介護者をサポートする人間、ヘルパーとも呼ばれる)に連絡をするというものである。これによりトイレに行くことを促すなどの手を打つことで、「漏らす」ことを防ぎ、要介護者のQOLQuality Of Life,生活の質)を向上させることができる。ただし実際にAIが大々的に使われているのかというとかなり微妙なところだ。

もう一つ、要介護者のケアプランを立てるAIというのが検討されている。こちらはまだ開発中である。

そういう意味では次の章で紹介するとしたコミュニケーション支援の部分での利用というのが最も進んでいると言える。とはいえ、実証実験が始まったところというのが、正確なところである。これは会話や顔認識以外で、介護業界で使えそうなデータが溜まっていないことがその根本原因である。データが無ければ、AIを学習させることができないため、活用が進んでいないのはやむを得ない。

AI_介護_図

ロボットが介護業界の救世主?

介護の対象となる分野は、結構幅が広い。従って、人間であれば問題なくこなせるものの、ロボットに対応させようとすると鉄腕アトムのようなロボットが出て来ない限り、全ての介護を1台でカバーするのには、現状ではかなり無理がある。

例えば、現状の介護現場で困っているものには、例として次のようなものがある。

1)ベッドからの起き上がり、車椅子への移乗

2)トイレや入浴、衣服の着脱

3)廊下の歩行、階段の上り下り

4)食事

5)体を動かすレクリエーションや話し相手

もちろん他にもあるのだが、1)や2)は体を支えないといけないため、介助者の肉体的負担が大きい。そこをカバーする必要がある。しかし2)には裸になったりするため、力仕事以外にプライバシーに対する配慮が必要となる。

3)は見守り活動として、移動に対しては必ずフォローが必要な人がいる。

4)は嚥下が上手くできない人に配慮したペースでの食事方法が必要であるし、5)には介護の対象者に精神的に寄り添う必要がある。

これらに対し、介護用ロボットとして展開されているものには次のようなものがある。

1)に対しては、ベッドが車椅子に変形するパナソニックエイジフリー株式会社の「リショーネPlus」、株式会社ノイフィスの展開する、装着することで介助者のパワーアシストを行うマッスルスーツなどである。

2)は、屋内での移動や立ち座り、そしてトイレ内の姿勢保持に力を発揮する株式会社アートプランの展開する移乗ロボット「愛移乗くん」、歩行をアシストする株式会社今仙技術研究所の「ACSIVE(アクシブ)」などがある。もしかしたら医療現場でリハビリに使われているサイバーダイン株式会社のHALも、応用ができるかも知れない。このあたりは3)でも利用可能だろう。

また、アド・ロールス株式会社は全自動排泄支援ロボット「ドリーマー」を展開している。これは要介護レベル45の、寝たきりもしくは自立した排泄が困難な要介護者を対象に、専用カップ付きの紙おむつを装着すると、自動で排泄物の処理と乾燥を行ってくれる。

4)にはセコム株式会社の「マイスプーン」がある。手の不自由な要介護者が、体の一部を動かす事で、スプーンが口にまで食べ物を運んでくれる。逆に言えば、何らかの形で体を動かさなければいけないので、寝たきり防止にもなる。

最後の5)はテレノイドケア株式会社の「テレノイド」など、見守り支援ロボットなども含まれるだろう。また、動物型であるならば、産業総合研究所が開発し、株式会社知能システムが販売しているメンタルコミットメントロボット「パロ」などが2000年代から展開されている。

2018年時介護業界におけるAI導入事例

では、これらのロボットにはどのようにAIが活用されているのだろうか。実は、まだまだ活用し切れていないとしか言えない。見守り支援系で要介護者の顔認識に使われるとか、なんとなく会話が成り立っているようにみせるなどのところでの利用はある。前者はAIによる画像認識を利用し、顔から個人を特定するというソフトウェアを組み込んでいる。一方、後者は音声アシスタント技術を利用してのものである。この分野は自然言語処理を行うAIを持つ事業者が試作・開発を行っている。

またソフトバンクはPepper(ペッパー)に「感情マップアプリ」という感情を解析するAIを導入しようとしており、これによりその時の相手の感情によって返す言葉を変更できるようにしようとしている。

一方、本来の困り事である移動や立ち座りなどに自分で学習するAIを利用すれば、要介護者の状態に合わせたカスタマイズが可能になるはずであるが、まだそこまでにデータが溜まっているとは言えないため、商品としては展開されていない。また、商品として出来上がったとしても、いきなり要介護者に利用してもらうには問題がある。誤作動やAIによる思いもよらない動きのために利用者がケガをしてしまうと、導入した施設にとっては大問題となる。したがって、ある程度実績を積まなければ、介護施設がAIや、AIを搭載した介護ロボットを現場に受け入れるのは難しい。

その他の先進的な取り組みとしては、最初にも紹介したが、介護のケアプランをAIが作成するという研究が行われている。これは熟練者が新人を指導するという環境が、将来は人手不足と高齢者の数の増加によって不可能になって来るであろうという予測の元に、介護方針の決定にAIを活用しようという試みである。

そういう意味では、介護業界におけるAIの利活用は、まだまだ緒に就いたばかりであり、今後の発展が大きく見込まれる分野でもある。

まとめ

介護業界は人間が人間をケアするということに重きを置いてきた業界である。そのため、まだまだ人力に頼っている部分が多く、ロボットやAIを介護に活用しようという動きは始まったばかりである。

ロボットに関しては介助者の肉体的負担を下げるためのものが中心であり、まだまだAIを使ったものは出て来ていないと言って良い。ただし、見守りやメンタルヘルスケアを助ける意味合いで、自動で会話を行える音声アシスタントとしてのAIを提供しているところは出始めている。本来であれば感情分析まで備えていると、要介護者向けとしては良いのだが、まだそこは開発中である。他のAIの導入方法としては、介助者を助けるためにケアプランを生成するAIが開発の俎上に登っている。とはいえ、まだまだデータが少ないのと、要介護者にケガを負わせるような誤作動があってはいけないため、実証実験をしっかりと行うことでエビデンスを作らないと、現場には受け入れてもらいにくい。
もちろんそれ以外にも価格面の問題もあるだろうが、何と言っても
「人間は人間がケアしなければいけない」
という現場の雰囲気をどこまで和らげ、人間とロボットそしてAIが共同でケアを行い、要介護者のQOLをあげていくのかを考える必要がある。


<参考>

  1. 日本の超高齢社会の特徴(健康長寿ネット・公益財団法人 長寿科学振興財団)
    https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/tyojyu-shakai/nihon.html
  2. 介護ロボット導入のメリットって何?今後の課題と問題点(介護ロボットONLINE)
    https://kaigorobot-online.com/carerobot/type
  3. AIが介護業界の人材不足を救えるか(三菱電機ビジネスシステム)
    https://www.melb.co.jp/column/column_124_876.html
  4. 熟練者の介護ノウハウAIが伝授エクサウィザーズが提案する「コーチングAI」(CNET Japan)
    https://japan.cnet.com/article/35116681/
  5. 介護ロボットが更に進化 AI(人工知能)が介護を救う?(シニアのあんしん相談室)
    https://www.senior-anshin.com/news/kaigo/20161116/
  6. DFree
    https://dfree.biz/
  7. 全自動排泄支援ロボット「ドリーマー」(介護ロボットONLINE)
    https://kaigorobot-online.com/contents/38
  8. Pepper(ペッパー)に搭載された「感情マップアプリ」とは?(未来を変えるプロジェクト・パーソルキャリア)
    https://mirai.doda.jp/series/point-of-view/pepper/