国内で人気SNSのLINE。そのLINEがスマホ決済とともに力を入れるのがAI(人工知能)だ。AIに力を入れだした。そこで、LINEが展開するAI事業や、AIを活用できるLINEのサービスについて紹介する。
続きを読むAI搭載のLINE Clovaとは
国内で人気をもつSNSアプリ
LINEは韓国インターネットサービス会社のNAVER傘下のNHN Japan(現LINE)が開発したSNS用のアプリケーションである。無料でメッセージのやり取りや通話が可能になるのがLINEの特徴であり、2011年6月にサービスが開始された。LINEの月間アクティブユーザー数は2016年12月の段階で、2億1700万人にも及び、その8割は日本人だという。
メールと異なり宛先や件名の入力がなくても簡単にメッセージを送信可能なため、LINEが従来のメールに取って代わられている。とりわけLINEの成長のきっかけとなったのが、チャットで使うイラストスタンプだ。テキストだけでは味気ないところが、スタンプのおかげで華やかになる。このスタンプの影響もあってか、広告収入は大幅に伸びたのだという。
LINEがスマートスピーカー販売を手掛ける
このLINEが力を入れだしたのが、スマートフォンを使った決済とAI(人工知能)である。スマホによる決済としては、LINE Payが2014年12月に開始した。もうひとつのAI分野では、2017年10月にスマートスピーカーであるClova WAVEが発売開始された。このClova WAVEに搭載されているAIアシスタントがLINE Clovaだ。
AIアシスタントの特徴は、発話者の呼びかけを音声認識によって解釈することである。これにより、スマートスピーカーの操作だけでなく、ネットワークに接続された家電製品のコントロールも可能になる。
AIアシスタントを搭載したスマートスピーカーには、GoogleによるGoogle HomeやAmazonが販売するAmazon Echoなどが有名で操作できる家電やサービスの数も増加傾向にある。一方LINE Clovaもまた、家電への対応をすすめている。ClovaによるIoTサービスClova Homeを2018年4月に提供が始まった。遠隔に設置されたクラウドAI「Clova」が、音声認識などの操作を行なうという。
対応製品も徐々に増えており、シャープが販売する空気清浄機や洗濯機、エアコン、東芝が販売する4Kテレビ・レグザへの対応を完了している。これにより、機器のオンオフ操作はもちろん、チャンネル変更などの操作も可能になる。
LINEのAI研究への取り組みとは
LINEは、ほかの企業や研究機関ともAIの共同研究を行ない、LINEを活用した新しいサービスを研究・開発している。
LINEとトヨタは提携してAI研究
自動車とAIとのつながりは深い。無人でも操作可能な自動運転を実現するためには、AIが不可欠である。障害物や人、動物を認識するために、自動車にセンサーを取りつけ、収集したデータをAIで分析、自動車の経路を決めていく。
自動車をネットワークに接続するコネクテッドカー。機器をネットワークで接続するIoT(モノのインターネット)を実現するのにも、AIは欠かせない。ネットワークに接続されたスマートスピーカーによって、自動車にさらなる利便性が与えられる。
LINEによるAIプラットフォーム「Clova」もまた、自動車への対応を検討している。トヨタ自動車は「SDL(Smart Device Link)」と呼ばれるスマートフォンのアプリとカーナビゲーションシステムの連携をオープンソースですすめている。2017年にLINEのClovaとSDLを活用した協働の可能性を検討するため、LINEとトヨタ自動車は合意書を締結した。
2019年夏に、SDLと車載AI「Clova Auto」とを統合したアプリが提供される予定だ。これにより、たとえばドライブしながら家の電気を消したり、目的地の天気を調べるといった操作が音声で可能になる。またClovaに目的地までのルートを質問するなど、音声によるカーナビゲーションも可能になる。
国立情報学研究所との共同研究
国立情報学研究所はAIの研究で実績のある研究機関だ。東京大学の入試に合格させるAI「東ロボくん」もまた、国立情報学研究所による研究成果のひとつである。東京大学に入学させる前にプロジェクトは中断されてしまったが、大学入試センター試験の模擬試験で偏差値57.1をはじき出すなど、その実力はなかなかのものだ。
LINEは国立情報学研究所とともに、教育や高齢者・弱者支援、公共インフラの分野で共同研究することを2017年に発表した。LINEと国立情報学研究所が注目するのが、「RI(ロバスト・インテリジェンス)」と呼ばれるものだ。ディープラーニングに代表されるAIは、囲碁を打つやスピーカーから入力された発話を音声認識するといった用途特化型のAIだ。これに対し、RIはもう少し幅広いAIを想定している。
用途に特化したAIだと、少し外れた場合に対応できない。とりわけLINEが着手するAIアシスタントClovaの場合、想定外の質問がAIスピーカーに対し投げかけられることもある。そこで想定外の質問でもAIに考える余地を与え、柔軟な対応をするRIに取り組むという。
防災科学技術研究所と共同研究
LINEと防災科学技術研究所は2018年に、防災・減災分野でインターネットやAI技術を積極的に活用することによって、災害対応能力の高い社会の構築を目指した共同研究を行なうことを発表した。
LINEと防災科学技術研究所は、新たに防災向けのAIチャットボットアカウントを開設し、発災時の情報を収集するという。「SIP4D」と呼ばれる災害関連情報をデジタル地図に集約したシステムとLINEから収集される情報を連携し、災害状況を素早く把握、伝達することで、災害対応に活かそうというのだ。
また国立研究開発法人情報通信研究機構が開発する「対災害SNS情報分析システム」や「災害情報要約システム」とも連携させることで、Twitterなど幅広いSNSの情報を取り込み、システムの高精度化に取り組むという。
AIを活用したチャットボット5選
チャットボットとLINEの取り組み
チャットボットとは、問いかけに対して解釈や返答を自動的に生成を行なう仕組みを指す。この問いかけの解釈や返答を行なうのがAIだ。LINEは「LINE BOT API」を公開し、LINEアプリでチャットボットが作成可能なプラットフォームを提供している。
以下ではAIを活用したチャットボットのなかで、興味深い5つを取り上げよう。
LINE@スクールプレミア
就職情報や進学情報の提供を行なうDiscoが手掛けるのが、「LINE@スクールプレミア」だ。Discoは、LINE公式アカウント「進学情報サービス by キャリタス進学」を開設し、大学や専門学校の情報を配信している。その友達数は2019年3月現在、410万人にも及ぶという。
「スクールプレミアAIチャットボット」は、LINE上で高校生や在学生からの質問に自動的に回答できるサービスである。チャットボットによって、高校生の応募意欲をかきたてるのが狙いだ。また在校生向けに「証明書の発行」や「学生証の紛失」など、定型で回答できる質問をセットすることで、いつでも回答が可能になる。これにより、学校の事務スタッフの業務が軽減されるという。
AIりんな
マイクロソフトからリリースされたのが、女子高生AIりんなだ。ユーザーとのつながりをコンセプトに、2015年に提供が開始された。友達のような感覚で、まるで本当の女子高生のようにカジュアルな返事が送られるという。
りんなの会話モデルには、第3世代めに当たる「共感モデル(α)」が搭載されている。会話をできるだけ長く続けるために、会話の文脈を踏まえてAIがその場で返答を臨機応変に生成するのが特徴だという。
ローソン
ローソンは、マイクロソフトの女子高生AIりんなとコラボし、「ローソンクルー♪あきこちゃん」を提供している。りんなの開発に用いられたAI技術を提供するクラウドサービス「Microsoft Azure」を利用し、LINE上で自然な会話が可能になる。
たとえばローソンについて分からないことがあった場合に、よくある問い合わせに対しあきこちゃんが回答する。このほかにも、あきこちゃんとリバーシなどゲームを対戦することも可能だ。あきこちゃんに話しかけるとクーポン券が提供されたりするなど、エンタメ要素の強いAIチャットボットに仕上がっている。
エアトリ 公式LINE
オンライン旅行事業を手掛けるエボラブルアジアが運営するのが、LINE公式アカウントの「エアトリ国内航空券カスタマーサポート」だ。アカウントのチャットボットに使用されているプラットフォームが、hachidoriである。
エボラブルアジアは、人工知能技術チャットボット開発支援のhachidoriに資本参加を行なっている。hachidoriが提供するチャットボットのプラットフォームにより、プログラミングをすることなく、チャットボットが作成されるという。
予約受付やカスタマーサポートも自動化できるだけでなく、チャットで得た顧客の情報を活かして、必要な情報をユーザーに送るなど、マーケティングにも貢献可能だ。
任天堂
任天堂が提供するチャットボットでは、ゲームキャラクターのひとつ「キノピオくん」が、任天堂の案内役をする。単語を話しかけると、キノピオくんがその単語について教えてくれるという。ゲーム会社らしく任天堂の開発したゲーム機や花札、麻雀の役についても教えてくれるなど、エンタメ要素が強いチャットボットに仕上がっている。
まとめ
LINEは日本で特に人気の高いSNSである。プラットフォーマーにとってのSNSの魅力は、ユーザーから送受信されるメッセージ群だ。このビッグデータをもとに、GoogleやFacebookなどがマネタイズを行なっている。LINEも同様で、AIを使ったチャットボットや有用な情報通知など、研究・開発を行なっている。日本初の面白いAIサービスが完成することが今後期待される。
<参考>
- LINEのAIアシスタント「Clova」によるホームIoTサービス「Clova Home」連携メーカーおよび対応機器が続々追加(PR TIMES)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001361.000001594.html - LINEとトヨタ、協業基本合意書締結のお知らせ(トヨタ)
https://global.toyota/jp/detail/17119496 - LINE、トヨタのナビ基盤と車載AI「Clova Auto」を統合したアプリを2019年夏に提供へ(CNET)
https://japan.cnet.com/article/35127010/ - トヨタのカーナビからLINEを送れる、オープンソースのSDL対応カーナビを日本投入(MONOist)
https://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/1810/16/news037.html - 国立情報学研究所とLINEが共同研究するAIならぬ「RI」とは何か(ZDNet Japan)
https://japan.zdnet.com/article/35111174/2/ - 国立情報学研究所・LINE株式会社が共同研究へ/覚書を締結して共同研究部門設置など協議(国立情報学研究所)
https://www.nii.ac.jp/news/release/2017/1127.html - 【コーポレート】LINE、防災科学技術研究所と「インターネット・AI技術を活用した防災・減災に向けた連携協力に関する協定」を締結(LINE)
https://linecorp.com/ja/pr/news/ja/2018/2394 - 防災情報共有システム(SIP4D)と その利活用技術の最新研究(防災科学技術研究所)
http://www.nict.go.jp/resil/bosai-ai/4otfsk00003u12z4-att/a1508228336771.pdf - LINE公式アカウント「進学情報サービス by キャリタス進学」(DISCO)
https://www.disc.co.jp/service/public-info/line-shingaku/ - ローソンLINE公式アカウント:便利機能を使いこなそう!(ローソン)
https://www.lawson.co.jp/lab/tsuushin/art/1296352_4659.html - 人工知能技術チャットボット開発支援のhachidori社への資本参加~チャット×AI(人工知能)を使った技術を活用し、顧客満足度向上へ~(Evolable Asia)
https://www.evolableasia.com/news/811 - 国内航空券販売におけるチャット×AIでの問い合わせ対応開始 ~LINE・Facebook Messengerにていつでもお問い合わせが可能に~(Evolable Asia)
https://www.evolableasia.com/news/735 - 任天堂LINEがすごい キノピオくんがネタを仕込まれすぎている(ASCII.jp)
https://ascii.jp/elem/000/001/113/1113207/ - 「女子高生AI「りんな」」(『人工知能』2015年1月号)
- 「「現地化」でグーグルに対抗」(『NIKKEI BUSINESS』2018年1月22日号)
- 『日経業界地図 2018年版』(日本経済新聞社 編)
- 『LINE BOTを作ろう!』(立花翔 著)
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