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電力需要予測でも進むAIの活用

AIをエネルギー事業に活用することで、発電量の高効率化やCo2の低排出効果による環境面の効果が期待できる。今回は海外のAI活用を活用したエネルギー事業を紹介する。

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今現在、エネルギー開発事業において電力自由化の影響もあり、再生可能エネルギー開発が増加している中、国内外問わずさまざまな企業がエネルギー事業に力を入れている。エネルギーインフラを整備していくうえで、効率的な発電と安定的な電力需給は必須である。

AIをエネルギー事業に活用することで、発電量の高効率化やCo2の低排出効果による環境面の効果が期待できる。発電量の高効率化を行えば電気量の値下げの可能性も模索でき、市民にもメリットをもたらすこととなる。国内でも民間会社、電力会社等がAI活用による効率化を模索し、発電事業やエネルギー事業 に取り入れ始めている。今回は海外のAI活用を活用したエネルギー事業を紹介する。

 エクソンモービルの取組み《海外》

エクソンクソンモービル社はアメリカのテキサス州アーバインに本社を置く大手石油・天然ガス生 産・流通業者の総合エネルギー企業である。 同社は2016年1月、飛行機・宇宙船の製造、国防産業向けのハイテク技術機器の開発・製造を手掛ける ロッキードマーチンに、自動化システムのプロトタイプ開発を委託することを発表した。自動化システ ムのプロトタイプ開発は次世代の精製・化学工場での利用を想定した自動システムである。

シェプロンの取組み

シェブロン社はアメリカのカリフォルニア州サンラーモンに本社を置く大手石油・天然ガス生産・ 流通業者の大手石油開発企業である。シェブロン社はAIの活用も積極的に行っている。本社を置くカ リフォルニアでは、AIを用いた油田の監視によって、石油の収集効率を上げ、機器の故障を未然に防いでいる。新規油田の探査においても、石油貯留層を採掘すべきか否かの判断にディープ・ラーニングを 活用している。過去にもデータ分析により業務を改善した実績を持ち、成功例・失敗例の分析による人 的エラーや不必要な作業の削減を行い、油田の探査・採掘における自主的な作業の効率化を促したこ ともある。AIの活用によりさらなる効率化効果を狙う。 

ディープマインド社の取組

イギリスの人工知能会社であるグーグルディープマインド社(GoogleDeepMind)Googleと社名にもある通り、2014年に同社に買収された子会社である。DeepMind社ではすでに機械学習によってGoogleの電力を15%削減し、数億ドル(数百億円)のコスト削減を見込んでいる。さらに新たにAIを用いてイギリス全体を最適化することでインフラ投資を必要とせずに電力コストを10%カットする取り組みに挑戦している。それ以外にも、イギリスのNationalGrid(送電網会社)と提携し、電力コストを削減する取り 組みも発表し、積極的に電力データ分野で機械学習を活用する姿勢を強めている。 

東京電力フュエル&パワー株式会社と三菱日立パワーシステムズ株式会社の取組

日本企業の東京電力フュエル&パワー株式会社と三菱日立パワーシステムズ株式会社が業務提携 し、国内外火力発電所の効率化に向けAIやIotを活用するとしている。 火力発電設備を対象に、IoTやAIを駆使し高度化した遠隔監視などの最新技術を活用し、稼働率の向上 や性能の改善、メンテナンスの最適化などによる燃料費や保守費の削減といったトータルソリューショ ンを提供すると発表している。

両社は、フィリピンのティームエナジー社(TeaM EnergyCorporation) が運営するパグビラオ(Pagbilao)発電所での遠隔監視の試験導入を足がかりに、東南アジアをはじめ とする海外や国内の発電事業者を対象として、運転データの分析、運用方法の改善、設備改造のアドバ イスなどに取組む予定だ。

三菱日立パワーシステムズ株式会社は関西電力の取組

また三菱日立パワーシステムズ株式会社は関西電力と共同で国内外の火力発電所向け運用高度化サー ビスを開発するとしている。実際の発電所の運転データとディープラーニング等のAI技術を用いて、 コンピュータ上に仮想発電所を構築し最適な運用をシミュレーションにより最適運用を検証する。そ の結果を実際の運用し適応していく仕組みである。このシステムを国内外に事業者向けにサービス提供 していく見通しだ。  

また関西電力は日本の電力会社初の海外発電事業(IPP事業)として1998年にサンロケ水力プロジェ クトに参画。現在、フィリピン、タイ、台湾、シンガポール、オーストラリア、ラオス、インドネシア、 米国、アイルランドと9カ国13件のプロジェクトを展開中で、出資割合分の発電容量は約257万 kWであり、当該国における電気の安定供給の一翼を担っている。それらに対し、今後AIの活用も模索 していくことだろう。

丸紅の取組

丸紅は、同社の完全子会社でイギリスにある電力販売会社スマートエナジーでIoTや人工知能(A I)を活用する事業に乗り出す。英国スマーテストエナジーは太陽光などの再生可能エネルギーを中小 発電事業から電力を買い取り、販売している企業である。また多様な再生エネの電源があり、全体の 7割を占め、企業として着実に成長している。  

電力を最も必要としている顧客に利益の出るタイミングで販売できる仕組みをつくるためにAIやIot を用いる。天候による予測や市場動向を分析させることで、同社総発電量310万キロワットを2020年ま でに500万キロワットに引き上げる計画だ。スマートエナジーによる英国での実績とノウハウを将来的 には日本でのエネルギー事業に生かす見通しだ。

まとめ

海外の企業がAI活用に取組む事例の他、日本企業が海外にて行う事業も紹介した。 エネルギー事業においてAIは有効に活用することができる。 AIによる遠隔監視や情報の分析よる最適な操作制御、また労働環境の整備や無駄の削減など効率化に フォーカスした取り組みが中心とされる。 ビックデータにてAIのディープラーニング等の技術を活用することで、仮想空間でのシミュレーショ ンをすることが可能になり、運用パターンや発電効率等の検証を可能にできるとともに運用における リスクも示唆・検証していくことができる。

エネルギー資源をより効果的に使用することで、発電量 を最大のパフォーマンスに近づけることができる。また通常人間レベルで行う検証より圧倒的短期間 でかつ膨大な量を学習することができる。個人の裁量が介入しない分標準化、マニュアル化といった 部分でも優位性を発揮できると言える。またAIによる効率化によって発電コストの低減も期待でき、そ うすることで一般向けの販売価格の値下げも検討できることになる。

エネルギー事業においてもAIの 活用は有効的だ。また再生可能エネルギー開発に注目が集まるなか、AIを活用することはさまざまな メリットを及ぼすであろう。


<参考>

  1. 米国の新ビジネスの動き IoT、AIなどの活用事例調査(JETRO)
    https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/01/41f2ea19eaa8009f/20160154.pdf
  2. 今、AI分野で最も注目される”デミス・ハサビス”氏と電力ビッグデータの未来について議論しました (エネチェンジ株式会社、Wantedly)
    https://www.wantedly.com/companies/enechange/post_articles/57826)
  3. 国内外火力発電所の効率化に向けた業務提携について基本合意(東京電力)
    http://www.tepco.co.jp/fp/companies-ir/press-information/press/2016/1326703_8623.html
  4. 関西電力と三菱日立パワーシステムズ、AI活用の次世代火力運用サービスの協働開発で基本合意書を締結(日本経済新聞)
    https://www.nikkei.com/article/DGXLRSP457106_T10C17A9000000/
  5. 丸紅、電力小売りでAI・IoT活用 英国で展開(日本経済新聞)
    https://www.nikkei.com/article/DGXMZO27507210Y8A220C1TJ2000/)
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