AI(人工知能)に関する基本的な情報は、ビジネスパーソンの「マスト知識」になってきた。つまり、AIビジネスに直接携わっていない会社員でも「AIくらい知っていなければならない」時代が到来したわけだ。
しかしAIはおろか、その基礎的理論である機械学習についてすらうろ覚えという人は少なくないはずだ。
そこで機械学習を効率よく学ぶことができる本を紹介したい。
2019年のゴールデンウィークは、4月27日から5月6日までの10日間もある。これだけ長いと、遊び尽くすことも大変なはずだ。
この機会に次の6冊を一気読みすることをおすすめする。
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「仕事ではじめる機械学習」
●タイトル:仕事ではじめる機械学習
●著者:有賀康顕、中山心太、西林孝 ●出版社:オライリージャパン ●税込価格:3,024円 ●URL: |
AIの開発部門にいるわけではない一般のビジネスパーソンは、「要するにAIで仕事がどう変わるのか」を知りたいはずだ。20年前に携帯電話が出始めたころ、電話が常に手元にあるだけで仕事があれほど激変するとは思っていなかったはずだ。同じことはインターネットやIT、スマホについてもいえ、これまでの常識では便利さを想像できないほど画期的なモノが職場や生活に浸透するには時間がかかる。
2019年現在のビジネスシーンでは、既にAIを導入している職場であっても、従業員たちは「AIが入ってきてなんとなく便利になったかもしれないが、なくてもなんとかなる」と感じているのではないだろうか。
しかしAIは、確実に仕事を変えるだろうし、それに伴って人々の働き方も変わる。
本書「仕事ではじめる機械学習」を読めば、機械学習を仕事の道具としてどのように使っていくべきかがわかる。
例えば、自分が上司から「社長がAIを導入して業務を効率化せよと言っている。現行のシステムをAIシステムに更新することはできるだろうか」と相談されたとする。そのとき本書を開くとヒントが載っている。
1章は「機械学習プロジェクトのはじめ方」、2章は「機械学習で何ができる?」といった内容になっている。一応章を2つ設定しているが、「序章」といったレベルなので、予習なしに読み進めることができる。
3、4章には技術的な話が出てくるが、こちらもそれほど難しい内容ではない。
5章は「学習のためのリソースを収集しよう」、6章は「効果検証」となっていて、実務ですぐに使える知識が並ぶ。
7章以降はプログラミングの予備知識がないと理解するのはやや難しいかもしれない。
技術系の人間でなければ6章まで読み込んでおけば十分ではないだろうか。それだけで機械学習と現代ビジネスの関係性を把握できるので、本書を購入する価値は十分ある。
「60分でわかる! 機械学習&ディープラーニング 超入門」
●タイトル:60分でわかる! 機械学習&ディープラーニング 超入門
●著者:機械学習研究会、株式会社ALBERT データ分析部、安達章浩・青木健児(監修) ●出版社:技術評論社 ●税込価格:1,058円 ●URL: |
「機械学習」という単語を目にして、AI用語であることすら知らなかった人は、本書「60分でわかる! 機械学習&ディープラーニング 超入門」から始めてはいかがだろうか。
これを一読すれば、機械学習とAIとディープラーニングの違いがしっかり理解できるようになる。また、教師あり学習や教師なし学習といった、独特な言い回しが用いられるAI用語もしっかり頭のなかに入るだろう。
自分がAIを開発するわけではないが、AIや機械学習について何も知らないと仕事に支障が出る人は、本書に目をとおしておいたほうがよい。
確かに本書に書かれてあることは、ネット上に掲載されているかもしれない。ネットで調べれば無料だが、情報の確度が低いうえに、いちいち検索しながら学習していくのは非効率であり、ビジネスパーソン向きではない。本書を購入すれば1時間で、確かな情報を自分のものにできる。
技術系の人はもちろんのこと、AIや機械学習についてしっかりした予備知識がある人は、本書は不要だろう。しかし、機械学習の基礎知識について少しでも「あやふやな」部分がある方は、この機会に本書でしっかり基礎固めしておいたほうがよい。
「やさしく学ぶ 機械学習を理解するための数学のきほん アヤノ&ミオと一緒に学ぶ 機械学習の理論と数学、実装まで」
●タイトル:やさしく学ぶ 機械学習を理解するための数学のきほん アヤノ&ミオと一緒に学ぶ 機械学習の理論と数学、実装まで
●著者:立石賢吾(LINE Fukuoka株式会社) ●出版社:マイナビ出版 ●税込価格:2,786円 ●URL: |
機械学習やAIという言葉を聞いただけでアレルギー反応を起こしそうな人には、この「やさしく学ぶ 機械学習を理解するための数学のきほん アヤノ&ミオと一緒に学ぶ 機械学習の理論と数学、実装まで」をおすすめする。
プログラマーのアヤノが、友人のミオに機械学習や数学を教える、という設定で解説が進む。
2人が展開するストーリーは、「なぜいま機械学習が世間の注目を集めているのか」「機械学習で何ができるのか」「回帰とはなんなのか、分類とはなんなのか」など、機械学習素人が知りたい内容から始まる。
ただ、タイトルに「やさしく」「きほん」といったひらがながあるからといって、本書をあなどることはできない。
基礎部分の解説が終ると、「回帰と分類による解決方法の考え方」「数式での表記」「ブログラムの形態」といった、機械学習の核心部分に入る。
章のタイトルは次のとおり。
- Chapter1 ふたりの旅のはじまり
- Chapter2 回帰について学ぼう~広告費からクリック数を予測する
- Chapter3 分類について学ぼう~画像サイズに基づいて分類する
- Chapter4 評価してみよう~作ったモデルを評価する
- Chapter5 実装してみよう~Pythonでプログラミングする
- Appendix 総和の記号・総積の記号/微分/編微分/合成関数/ベクトルと行列/幾何ベクトル/指数・対数/Python環境構築/Pythonの基本/NumPyの基本
Appendixは「付録」という意味。あえて難解部分を付録に閉じ込めることで、第5章までを平易な内容にしている、という編集方針のようだ。
本書を流し読みして難しいと感じた人が2回目の通読に挑めば、読み終えたときに「機械学習の知識がしっかり身についた」と実感できるはずだ。
「機械学習スタートアップシリーズ ベイズ推論による機械学習入門」
●タイトル:機械学習スタートアップシリーズ ベイズ推論による機械学習入門
●著者:須山敦志、監修杉山将 ●出版社:3,024円 ●税込価格:講談社 ●アマゾンURL: |
AIが出す答えは、必ず正しいわけではない。もしAIが必ず正しい答えを出すことができたとしたら、それは神に似た存在になってしまう。
ただAIが出す答えは、人が出す答えより正しいことが多い。その多さはときに、「圧倒的に多い」ことがある。だからAIはこれほど世の中でもてはやされているのである。
ではなぜ、AIは正しい答えをより多く、しかも素早く出すことができるのだろうか。それは大量の情報を取り込み、それを分析するからだ。
つまりAIの能力は確かに驚異的ではあるが、大量の情報から推測「しているだけ」ともいえる。
推測とは、統計的推測や確率のことである。
本書「機械学習スタートアップシリーズ ベイズ推論による機械学習入門」にあるベイズ推論とは、観察した情報から、推定したい事柄を確率論的に推論する理論だ。
本書を読めば、機械学習の学問領域のひとつ「ベイズ主義機械学習」の基礎が身につく。
本書ではさらに、機械学習のアルゴリズムのつくり方を学ぶことができる。
章立ては次のとおり。
1 機械学習とベイズ学習
2 基本的な確率分布
3 ベイズ推論による学習と予測
4 混合モデルと近似推論
5 応用モデルの構築と推論
ベイズ推論は、マイクロソフトやグーグルが活用していることで知っている人もいるだろう。ベイズ推論には、「データが少なくても推定できる」「データ量を増やすことでより正確になる」「入力情報を増やすことで推測のアップデートを自動で行うことができる」といった強みがある。
本書の最大のメリットは、ベイズ推論と機械学習の関係について「日本人が書いた日本語で」読めることだろう。これまでベイズ推論の基本書といえば、翻訳版しかなかった。
著者は2人。須山敦志氏はデータ解析のプロ。杉山将氏は理化学研究所・革新知能統合研究センター長兼、東京大学大学院新領域創成科学研究科教授である。
「機械学習入門 ボルツマン機械学習から深層学習まで」
●タイトル:機械学習入門 ボルツマン機械学習から深層学習まで
●著者:大関真之 ●出版社:オーム社 ●税込価格:2,484円 ●アマゾンURL: |
ビジネスシーンで用いられている機械学習の主流は、本書「機械学習入門 ボルツマン機械学習から深層学習まで」で紹介しているボルツマン機械学習であるとされている。
本書では、そのボルツマン機械学習の基礎知識を獲得することができる。さらに、深層学習の実装方法についても知ることができる。そういった意味では読み応えがある本といえるが、あくまで「入門」編である。数式がほとんど出てこないのは著者の優しさか。
初学者が興味を持ちやすい話題から解説を始めているところも好感できる。「美しいとは何か」という問いを解決するために、ディープラーニングがどの程度貢献できるのか、といったストーリーは読ませる。
一般的な機械学習は、入力に対して出力が決まる。一方、ボルツマン機械学習では、安定している数値の組み合わせを記憶することで、欠けている情報を推論することができる。
本書のメーンイベントであるこのボルツマン機械学習の解説は第6章から始まる。したがって第1~5章までは、ボルツマン機械学習を理解するための予備知識の解説ととらえることもできる。
「クラウドではじめる機械学習 Azure MLでらくらく体験」
●タイトル:クラウドではじめる機械学習 Azure MLでらくらく体験
●著者:脇森浩志、杉山雅和、羽生貴史 ●出版社:リックテレコム ●税込価格:2,808円 ●アマゾンURL: |
マイクロソフトが提供している機械学習サービス「Azure ML」を解説したのが本書「クラウドではじめる機械学習 Azure MLでらくらく体験」だ。MLはマシンラーニングの略で、つまり機械学習である。
「AIや機械学習の説明を受ける前に、とにかく機械学習に触れてみたい」という人向けの本だ。
Azure MLは、企業や個人が手軽に機械学習を使って予測分析を行えるサービスである。クラウドで機械学習のソフトを提供しているイメージだ。
どれくらい気軽かというと、マイクロソフトによると「数分でデプロイできる」という。デプロイとは、アプリなどのシステムを利用可能な状態にすること。
本書はAzure MLの解説書であり、入門書であり、そして操作マニュアルでもある。本書のコンセプトは、非エンジニアがマウスだけで機械学習の仕組みを構築すること。
説明が反復されているので、初学者はストレスなく読み進めることができる。
まとめ~いつかやるなら今やろう
「文系の仕事」をしているビジネスパーソンでも、もうAIや機械学習から逃げることはできない。したがっていつかはガッチリと腰を据えて勉強する必要がある。
仮に2019年のゴールデンウィークに勉強しなくても、夏休みには関連書籍に目をとおす必要がある。夏に読まなければ年末年始休暇に参考書と格闘しなければならない。
次の連休で片付けてしまうのも、先延ばしするのも、苦労は同じである。そうであるならば、今学んでしまえばストレスを生まなくて済む。先延ばししている間中ずっと「勉強しなければならない」というストレスを受け続けることになるからだ。
<参考>
- データサイエンス、データ分析、機械学習に必要な数学2(Qiita)
https://qiita.com/aokikenichi/items/229f2886578f5eee4649 - 5分でスッキリ理解するベイズ推定(Qiita)
https://qiita.com/HiromuMasuda0228/items/2dc62cf4f9dbdf373627 - ボルツマンマシン(AI-MASTER WIKI)
http://ai-master.jp/wiki/index.php?%E3%83%9C%E3%83%AB%E3%83%84%E3%83%9E%E3%83%B3%E3%83%9E%E3%82%B7%E3%83%B3 - マイクロソフトAzure(マイクロソフト)
https://azure.microsoft.com/ja-jp/services/machine-learning-studio/
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