人工知能は機械学習の技術によって発展し、今回の人工知能ブームを起こしている。このコラムでは今回のブームに至るまでの歴史と、機械学習の仕組み、さらには今後どのように進化していくかについて説明している。機械学習に興味がある人はこのコラムを読んで、さらに人工知能に対する理解を深め、これから来る「人工知能の民主化」に備えてほしい。
1. これまでの人工知能とは
人工知能という言葉は最近出てきてものではない。実は今回の人工知能ブームは第3次ブームである。第1次ブームは1956年~1960年代に起こったものであり、1958年に開発された「パーセプトロン」によって起こったのである。人間がモデルを与えなくてもコンピュータが入出力できると考えられたことで、ブームになった。しかし、その限界が露呈されて、ブームは沈静化した。確かに当時のコンピュータでは、その能力に限界があったのは仕方がないだろう。第2次ブームは1980年代に起こった。第2次ブームは記号処理を発展させて推理能力を持たせようとしたが、思った以上にコストがかかり、処理する時間もかなりかかることが分かり、一気に収束した。そして今回の第3次人工知能ブーム。今回の人工知能ブームには機械学習の進化が関係しているのである。
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2. 機械学習とニューラルネットワーク
機械学習が今回の人工知能ブームにかなりの影響を及ぼしているのはすでに述べたが、具体的にどのようなものだろうか。もちろん今回の人工知能ブームコンピュータそのものの進化が関係しているが、この機械学習によって人工知能が急速に進化したのは間違いない。ここでは機械学習とその進化について説明する。
機械学習とは
機械学習とは、人間が「特徴量」を人工知能に教えておき、それを繰り返し学習することで、より正確な判断を人工知能自身できるようになるという仕組みだ。例えば犬を犬だと認識するためには、あらかじめ犬の「特徴量」を教えておき、それをもとに人工知能が犬だと判断できるようになる。人工知能は学習をすればするほど判断が正確になり、しかもその学習スピードは人間の比ではない。こうした正確な判断ができるようになるためには、大量の画像が必要であったが、今はインターネットを使って大量の画像を手に入れることができるようになった。人工知能が自ら画像を収集し、学習していくことができるため、すぐに人間の認識能力を上回ることができるのである。
ニューラルネットワークと機械学習
現在の機械学習を理解するためには、ニューラルネットワークについて知る必要がある。ニューラルネットワークというのは人間の脳神経を真似た学習方法である。人間の脳はニューロンという神経細胞のネットワークでつながっており、ニューロンにつながっているシナプスから電気刺激を受け取り、それぞれの刺激に重みづけを行い、その刺激がある一定の値を超えると別のニューロンに刺激を送るという仕組みである。これをモデル化し、機械学習に応用したのである。この仕組みの中で重要なのは重みづけだ。重みづけはデータによって変化するだけでなく、学習が進むごとに変化することで、さらに正確な判断ができるようになるのだ。
こうした仕組みは手書き文字認識の分野の例が有名だ。人間の手書き文字を認識のするのは思った以上に困難だ。「3」と「8」を区別するのは思った以上に難しい。「3」を「8」と判断してしまった場合、重みづけが間違っているわけだから、重みづけを調整していく。この学習を繰り返すことで、正確な判断ができるようになるのである。こうした学習には一定の時間はかかるが、このニューラルネットワークによる機械学習がしっかりとできるようになっていれば、予測は簡単にできるようになるのである。
機械学習の特徴量を自ら見つけだす
そんな機械学習にも課題がある。それは特徴量をどのように設定するかということだ。これまでこの「特徴量」は人間が考えて入力するしかなかった。しかし、最近では「特徴量」を自動化する技術が開発されている。例えばNECは「dotData, Inc.(ドットデータ)」を設立し、人工知能市場に参戦している。実際に「三井住友銀行で実施された実験では、従来2~3カ月かかっていた「金融商品を買ってくれそうな顧客分析」について、同等以上の結果を1日未満で得ることができた」という(NECが新会社設立 -「北米が独占するAI市場に対する日本企業の反撃だ」)。こうした技術はますます発展し、ディープラーニングとも組み合わせ、さらに進化していくだろう。
3. 機械学習のこれから~人工知能の民主化~
現在の機械学習と人工知能についてここまで述べてきたが、機械学習はこれからどのように進化していくのだろうか。そこでのキーワードは「人工知能の民主化」である。「人工知能の民主化」とは人工知能を誰でも使えるようになるということである。これまで人工知能を開発することが目的となってきたから、これからは人工知能をどのように使うかが重要になってくるというのだ。そのためには「特徴量」を人工知能が自動で判断できるようになる必要があるのだ。前述したように、すでにこうした技術は開発されているため、「人工知能の民主化」が実現するのももうすぐなのかもしれない。
まとめ
機械学習は人工知能の進化に大きく貢献することになった。今後も機械学習はさらに発展し、誰でも人工知能を使うことができるようになる時代がくることだろう。その時のために、人工知能や機械学習の知識についてしっかりと理解しておくべきである。
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<参考>
- 『マンガで分かる人工知能』(藤木俊明著)
- 『人工知能が変える仕事の未来』(野村直之著)
- 『人工知能は人間を超えるか』(松尾豊著)
- 機械学習の特徴量抽出設計を自動化、NECが北米に新会社設立(ZDNet Japan)
https://japan.zdnet.com/article/35118412/ - NECが新会社設立 -「北米が独占するAI市場に対する日本企業の反撃だ」
https://news.mynavi.jp/article/20180426-622798/ - 実現しつつある「人工知能の民主化」、何がビジネス上の価値になるのか
https://www.sbbit.jp/article/cont1/34830
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