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中国AI(人工知能)のリーダー「バイドゥ、アリババ、テンセント」は米国と真っ向勝負

中国のAI(人工知能)に新勢力が登場した。アイフライテック(科大訊飛、iFLYTEK)だ。先行するBAT(バオドゥ、アリババ、テンセント)を猛追している。

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アメリカのIT界にFAGA(フェイスブック、アップル、グーグル、アマゾン)があるように、中国のIT界にはBAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)がある。

米中IT戦争は、トランプ米大統領が仕掛けた米中貿易戦争より、ある意味で熾烈だ。なぜなら貿易戦争はトランプ氏次第で収束できるが、米中IT戦争は次代の世界経済の趨勢を決めかねないだけに、どちらも引けないからだ。

そしてIT戦争の次に控えているAI(人工知能)分野での競争でも、大きくリードするアメリカを中国BATは猛追している。

しかもBATにはアメリカ優位を覆すだけの強みが2つある。

それは中国政府が全面的に後押ししていること。そして「ITのBAT」が「AIのBAT」にそのまま移行することだ。

ITプレイヤーとAIプレイヤーが微妙に異なるアメリカ勢に比べると、中国勢はITからAIに素直に進化していくことができる。その連続性のよさはアドバンテージなるはずだ。

BATの動向はしばらく注視し続ける必要がありそうだ。

中国_人口知能

バイドゥはチップ開発で自前主義をゆく

バイドゥは中国で最もアクセス数が多い検索サイトを展開していて、中国のグーグルと呼ばれている。そのほか、ビッグデータ、機械学習、画像識別、顔認識、音声認識、会話ロボットなどAIの実用化に欠かせない技術に余念なく投資・研究している。

そしてバイドゥは2018年7月に、自社で開発したAIチップ「クンルン(Kunlun)」を発表した。AIを人に例えると、バイドゥはこれまで手足や胴体、消化器官、血液などをつくってきたが、とうとう「脳と心臓」まで自前でつくってしまったわけだ。

脳と心臓までつくってしまうことの意義

チップとは、複数の半導体を組み合わせて特殊な機能を持たせた集積回路のことで、パソコンやスマホをパソコンやスマホたらしめている極小の部品だ。

AIチップとは、AIが賢く動くために開発されたチップである。

バイドゥがわざわざAIチップを自社開発したのは、AI開発のスピードを上げ、AI開発コストを下げるためだ。

中国は「遅れてやってきたIT大国」なので、半導体産業が脆弱だ。よって現状は、中国IT・AI企業は、アメリカや日本や韓国などからチップを買わなければならない。中国はアメリカからだけでも、年間約21兆円(約2,000億ドル)分のチップを買っている。

このままでは中国IT・AIの開発のスピードは、他国の半導体開発スピードを超えることができない。

さらに、もし日米韓が半導体包囲網を築き、中国向け半導体の値段を上げてしまったら、中国IT・AI企業は多額のコストを支払わなければならない。

バイドゥのAIチップ自社開発は、アメリカに勝つために当然に必要な投資といえる。

自動運転バスや寄生虫診断もAIで

本家のグーグルが自動運転車の開発に力を入れているように、中国のグーグルであるバイドゥも、発電所内を走行する自動運転バスの開発を進めている。さらにバイドゥは人の体内に侵入した寄生虫の検査で、医師をサポートするシステムをつくった。

いずれもAIや深層学習ツールを使っている。

バイドゥのAIチップ製造が軌道に乗れば、このような実験的なAI活用法を短期間で実用化できるだろう。

バイドゥはすでにAIで儲けている

日本のAIは、実用化しているといっても事務を効率化したり、単純作業をAIに置き換えたものが多い。もちろんそれは画期的な取り組みであり、世界を驚かせている。しかし日本のAI関連企業で、「当社はAIで儲けている」と胸を張れる会社は何社あるだろうか。

いや、もしかしたらAIで利益を上げている日本企業もあるかもしれないが、しかし3カ月で3,577億円も売り上げているAI関連会社はさすがにないだろう。

バイドゥの2018年第1四半期の売上高は3,577億円で、純利益は1,146億円だった。売上高は前年同期比31%増、純利益に至っては同227%増だ。

そしてバイドゥは、この好業績は「AIの商用化が前進したため」と胸を張って発表したのである。バイドゥの李彦宏CEOは「AI時代を勝ち取る」と宣言した。

アリババはBtoCでAI化を進める

バイドゥが中国のグーグルなら、ネット通販(Eコマース)の中国最大手アリババは中国のアマゾンである。

アリババも自社でAIチップ「アリ-NPU」を開発した。既存の画像処理装置(GPU)の10倍の性能を発揮すると報道されている。

まずはファッションでAI店を提案

アリババがAIに力を入れているのは、自社サイトで販売している1,500万アイテムの商品を効率よく売るためだ。

例えばアリババは2018年7月、イギリスの学会で「ファッションAI」という近未来のリアル店舗を提案した。

ファッションAI店の内装は、普通のセレクトショップと同様に、服が展示され試着室がある。ただ客は、ファッションAI店に入るときにスマホでID登録をしなければならない。ID登録によりファッションAI店側は顧客の過去の買い物の記録を入手できる。

試着室には全身を映す鏡があるが、これはスマートミラーになっていて、客が前に立ったら商品を映し出す仕組みになっている。そう、入店時に入手したこの客の過去の買い物記録によって、AIが「この客が好みそうな服」を選び、スマートミラーに映し出すことができるのだ。

客は、スマートミラーに映し出された服を気に入ったら、その画像をタップする。するとバックヤードからその服を持った店員が現れ、客は試着をすることができる。

リアル店舗で試しているところがポイント

アリババが中国のアマゾンと呼ばれるのは、アマゾン並みの商品を用意しているからだが、リアル店舗に食指を動かしている点もアマゾンと酷似している。

アマゾンは本のネット通販で急成長し、「なんでも売る」ことで世界企業になったわけだが、最近はリアル店舗の高級スーパーマーケットチェーンを買収したり、アマゾン自体がリアル店舗の書店を開いたりしている。

アリババがファッションビジネスのAI化をリアル店舗で実施しているのは単なる偶然ではない。アリババもアマゾンも、Eコマースだけでは届かない顧客にリーチしようとしているのだ。

しかもアリババは、単にリアル店舗回帰をするのではなく、AIでバージョンアップしてからリアル店舗市場に打って出るのである。

テンセントはアメリカに乗り込んだ

テンセントはメッセージングアプリ「WeChat」で急成長した会社だから、いわば中国のLINEである。テンセントは電子決済事業やゲーム事業も手掛けている。

そのテンセントはAI進出で、バイドゥやアリババに後れを取ってしまった。挽回をしなければならないテンセントが取った策は、アメリカの頭脳を拝借することだった。

2017年に米シアトルにAI研究所を開設する準備に着手し、元マイクロソフトの首席研究者をヘッドハンティングした。

消費者データをひたすら集める戦略か

バイドゥは、AI活用の王道といえる自動運転車や医療分野を行く。

アリババは、消費活動をAIで牛耳ろうとしている。

それに対しテンセントは、WeChatのユーザーたちが残した膨大な量の会話データをAIで分析することで、人々の心を探ろうとしている。

個人情報保護施策が中国でどの程度進むかわからないが、会話データは、商品の販売にも広告にもマーケティングにも使うことができる。消費者データはドル箱(元箱)だ。

WeChatの月間ユーザー数は約9億人に達する。経済アナリストは、それだけの量の会話データとAIが組み合わせれば、イノベーションは一気に加速するとみている。

中国_人口知能

まとめ~AI企業を買いあさるBAT、怒るアメリカ

ここ4~5年でBATが買収または投資したIT・AI・ロボット企業は以下のとおり。

・バイドゥ:アメリカ2社と中国1社を買収、アメリカ5社と中国12社とイスラエル1社に投資

・アリババ:アメリカ2社とフランス1社と中国12社に投資

・テンセント:アメリカ6社とカナダ1社と中国14社に投資

まさに爆買いの様相を呈している。

トランプ氏は日欧を含む全世界に貿易戦争をしかけているが、本命は中国とされている。トランプ氏は中国を追い込む理由について「中国がアメリカの知的財産権を侵害しているから」と説明している。

しかし当然ながら、中国企業がアメリカ企業を買えば、侵害することなく知的財産権を入手できるわけである。トランプ氏はまさに自国の経済を身を挺して守っている、といえなくもないのである。


<参考>

  1. AI企業への転換急ぐバイドゥ、初の専用チップを発表https://www.technologyreview.jp/nl/chinas-google-releases-its-first-ai-chip/
  2. チップ
    https://it-words.jp/w/E38381E38383E38397.html
  3. 百度の第1四半期、利益277%増加 AI事業成長で
    http://www.afpbb.com/articles/-/3173925?cx_module=latest_nav
  4. 中国検索最大手企業バイドゥ(百度)のAI事情とは?
    https://artificial-intelligence.ne.jp/428/
  5. アリババとは?中国のAmazon”Alibaba”徹底解説します。
    https://ec-orange.jp/ec-media/?p=19075
  6. アリババもAIチップを開発へ、米国依存を下げるのが狙いかhttps://www.technologyreview.jp/nl/alibaba-is-developing-its-own-ai-chips-too/
  7. 一日で売上2.8兆円の中国アリババ「独身の日」の衝撃データhttps://forbesjapan.com/articles/detail/18828
  8. アリババが人工知能を活用した「ファッションAI」を発表!未来のファッション店舗像か?
    https://glotechtrends.com/alibaba-fashion-ai-180708/
  9. 中国が独自のICチップ・サプライチェーンの確立を目指す 米メディアhttp://japanese.china.org.cn/business/txt/2017-07/13/content_41209001.htm
  10. 時価総額34兆円の中国テンセント「AI研究所」を米国に設立https://forbesjapan.com/articles/detail/22518?n=1&e=16182
  11. 中国テンセントの囲碁AIが、「世界最強の棋士」に勝利した理由──猛攻の影には「AlphaGo」あり
    https://wired.jp/2018/01/27/tencent-go-ai/
  12. 3分で分かる「WeChat (Weixin)」とは?
    https://www.clara.jp/media/?p=609
  13. バイドゥ、アリババ、テンセント(BAT)のAI投資に拍車、米中2国の争い鮮明に?https://zuuonline.com/archives/185808

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