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教育(適応学習)におけるAI活用事例 〜海外編〜

アダプティブ・ラーニング(適応学習)について、その意味と海外における事例を紹介。ゲームで楽しく学ぶ手法、この分野で世界をリードするサービス・企業、国の取り組みの事例を取り上げる。

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AI(人工知能)の活躍する分野は、大きく裾野を拡げている。“人間の学習”の分野も例外ではない。ここでは教育分野での「アダプティブ・ラーニング」と呼ばれる新しい手法をご紹介する。

アダプティブ・ラーニングとは、日本語では「適応学習」と呼ばれ、学習する個人の習熟度に合わせることが可能なビッグ・データやAIなどの技術を使った新しい教育手法だ。

これまでは教育クラス全体の学習の習熟度に個人が合わせなくてはならず、学習に遅れてしまったり逆に早すぎたりした生徒は置いていかれてしまっていた。

アダプティブ・ラーニングはその問題を解消し、個人に特化した教育を提供する。さらにアダプティブ・ラーニング以外との組み合わせで、様々な先進的技術の恩恵が、(多くは無料で、インターネット回線があればどこにいても)受けることができるようになっていく。

日本でも近年アダプティブ・ラーニングに参入してくる企業も増えているが、よりアダプティブ・ラーニングの先進的なアメリカなどの海外の事例を取り上げてみよう。

アダプティブラーニング_AI_学習

ゲームをしながら数学を楽しく学習できる、アメリカのスタートアップ企業のアプリ

子供が算数/数学を学習していく上で、最初につまずきやすいと言われているのが「分数」だ。特に数学ではこのような「つまずき」をそのままにしていると、その後の学習スピードに大きな影響が出てしまう。アメリカのスタートアップ企業が提供するサービス「Motion Math」は、子供の数学の習熟を、ゲームなどをすることで楽しく乗り越えようというものだ(*1)。

「ゲームで遊んでいたら子供の勉強が進むなんて、そんな都合良いことってあるの?」と思う向きもあると思うが、このサービスを作ったのは、スタンフォード大で新しい教育の研究をしていた人たち。

科学的にしっかりとした根拠があるようだ。からだに結びついた知識経験」、つまり遊びを通すことによって子供の学習がより進むということだ。

「Motion Math」は、こどもの遊んだデータを分析し、その学習の進み具合に合わせて次の学習(=遊び)を提供する。学習者本人だけでなく、親御さんや先生たちもこども一人ひとりの進捗を把握することができる。

勉強を嫌がりがちなこどもが、かえって自ら喜んで勉強してくれるとしたら、これほど素晴らしいことはないだろう。

AI学習_Motion Math社_画像

世界中で進むアダプティブ・ラーニングによる学習効率化

「Motion Math」は、低年齢向けで数学に特化したサービスだが、もっと教育全般を広く扱うサービスももちろんある。たとえば、「Knewton」(ニュートン)もそのひとつだ(*2)。

「Knewton」はニューヨークに本社がある、世界中に広く展開しているアダプティブ・ラーニングの先進企業で、世界中で1,400万人以上に利用されているという。

日本にも支社があり、ベネッセやZ会なども「Knewton」のサービスを導入している。「Knewton」のラーニング・アナリティクス(学習状況分析)という機能では、「つまずいている学習者や先に進む準備ができている学習者の情報も把握でき、適切なタイミングでの個別サポートが可能」とし、学習者個人の理解度に合わせた学習サービスを提供する。

この企業は、「世界のために学習をパーソナライズする」を使命としていて、まさにアダプティブ・ラーニングに特化した企業・サービスだ。

また、「出身地などのプロフィールに基づいた個別化を行うしくみ」があるなど、非常にきめ細かいパーソナライズされた技術を持ち、「途中脱落率が56%減少」などの実績があるという。

韓国も、アダプティブ・ラーニングに注目している

日本のお隣の韓国は、子供の教育には熱心な親御さんが多いことは有名だ。

その韓国でも、アダプティブ・ラーニングを含めたICT学習の新しい取り組みが、国をあげて行われている。「日本より先駆的な取り組みを続ける、韓国の「教育の情報化」」という記事によると、「オーダーメイド個別型の学習」という言い方ではあるもののアダプティブ・ラーニングに韓国政府が力を入れていることが記されている。

「韓国ではデジタル教科書、サイバー学習を軸に、(中略)本人の関心、需要、興味、水準などに合わせ、自ら学習を選択できることが理想のかたちでしょう。」 

                                                                                                    出所: Edtech Zine

「デジタル教科書は学生一人ひとりの学習結果を分析し、学習内容に応じてカスタマイズ」するという。韓国でこれだけ新しい教育方針を取り入れようとする背景には、AIに関してしばしば言われている、「将来には人間の仕事が○○%失われる」という心配があるからのようだ。

これまでの教育の仕組みや内容のままでは、こどもたちが大人になった時に仕事に就けるかどうか不安、という親御さんの気持ちを反映している。

AIによってもたらされた将来の不安を、AIを用いた教育の仕組みで解決しよう、というわけだ。アダプティブ・ラーニングなどの新しい教育手法は、どの国でも取り入れざるを得ないような状況になっていると言えるのかも知れない。

まとめ

世界中で、教育手法に関する新しい流れが生まれてきている。その新しい流れの基盤となっているのは、ビッグ・データやAR/VR、そして、ディープ・ラーニングや機械学習をはじめとしたAIだ。ディープ・ラーニングもマシーン・ラーニング(機械学習)も、どちらもコンピュータの学習手法であるが、アダプティブ・ラーニングは人間の学習の手法のことである。

AIの学習手法の革命が人間の学習手法の革命をもたらすというのも、なにやら皮肉めいていて面白く感じる。

こどもか大人かに関わらず、特化した高度な学習でも一般的な広い教育分野でも、アダプティブ・ラーニングはどこでも誰にでも、公平にできるような仕組みを提供する。

国の垣根や貧富の差による教育を受ける権利の制限も、アダプティブ・ラーニングは少しずつ解消しようとしているのだ。AIが学習してくれるから人間は楽をして良いのか、それともさらにもっと人間は学習するべきなのか・・・。

人によって意見はさまざま。その答えを知るためにも、やはりAIについて学ぶことが必要であることは、間違いなさそうだ。いずれにしても、この世界規模の教育界の大きな変革の流れにに注目したい。


<参考>

  1. 教育と学習の最新理論に基づく「ゲーム=学習」アプリMotion Math(TechCrunch Japan)
    https://jp.techcrunch.com/2011/04/08/20110407500-startups-demo-day-motion-math-looks-to-make-learning-fun-again/
  2. Knewtonとは【ひとことで言うと?教育ICT用語】(ライブドアニュース)
    http://news.livedoor.com/article/detail/11796172/
  3. すべての学習者一人ひとりに最適な学習を(Knewton)
    https://japan.knewton.com/
  4. KNEWTONのアプローチ(Knewton)
    https://japan.knewton.com/our-approach/
  5. Knewton Day Tokyo 2017- Adaptive Learning Summit – レポート(gihyo.jp)
    http://gihyo.jp/news/report/2017/04/0301
  6. 日本より先駆的な取り組みを続ける、韓国の「教育の情報化」(EdTechZine)
    https://edtechzine.jp/article/detail/143
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