【この記事は約 5 分で読み終わります。】

融資審査はAIの活用でコスト削減、リスク軽減、地域活性化を実現

AIの技術の活用によりコスト削減、リスク軽減、地域活性化といった面で多方面で成果を上げている。そんな中、融資審査に活用されているAIについて国内での具体的事例と共に紹介する。

シェアする

  • RSSで記事を購読する
  • はてなブックマークに追加
  • Pokcetに保存する

人工知能(AI)は今やすべての産業で、活用が開始されてきたといっても過言ではないといえる。特に金融業界でも、海外からの影響が強まり国内でも、AIの活用が始まってきている。今回は金融業界の中でも、融資審査に活用されているAIについて国内での具体的事例と共に紹介していくとする。

J Scoreの「AIスコア・レンディング」

2017年の9月25日国内の個人向け融資サービスとしては、初となるビッグデータとAI技術を利用した「AIスコア・レンディング」が開始した。このサービスは、みずほ銀行とソフトバンクが共同出資で設立した株式会社J Scoreが運営をしている。

これまで、審査通過の可否や借入上限金額の設定は、金融機関の独自の審査で行っていたため消費者に分かりづらく不透明であった。しかし、AIスコア・レンディングは、AIが自動で融資申込者の信用情報をスコア化するため、一目見るだけで借入限度額がわかり、さらに審査通過の可否の参考にまで活用できるものである。

また、金融機関側としても、毎回審査の際に確認していた膨大な項目をAIスコアという一つの情報に収縮できるようになった。さらに、スコアを参照して、最低ラインに到達していないものは、申込み資格がないため審査数を減らすことができ、審査の総数を減らしコストを削減することに成功している。

以上のことから、J Scoreの「AIスコア・レンディング」は消費者、企業どちらに対してもメリットの多いサービスであるといえる。

さらに、AIスコア・レンディングは、スコアを使って審査の手間を省くという技術改革意外にも、これまで個人向け融資で当たり前であった常識を幾つも変えようとしているようだ。

今まで、個人向けの融資を行う際には、店舗への訪問やキャッシングカードの受け取り、ATMでの現金の振込や受取りといったリアルでの取引を欠かすことができなかった。しかし、AIスコア・レンディングでのキャッシング取引は、全てインターネット上で完結をすることが可能となった。これに伴い、店舗やローン契約機といった設置型の機械を置かずに済むため、徹底的にコストを削減することができる。

その結果として、AI非導入の金融機関の融資と比べて、かなり低い金利に抑えることに成功している。J Scoreの共同出資会社であるみずほ銀行の個人向け融資は、年率2.0%~14.0%である。この金利は、銀行からの個人向け融資としては平均よりもやや低い金利となっている。

対して、AIスコア・レンディングの金利は、0.9%~12.0%のさらに安い金利を実現することを可能にした。特筆すべきは、最低金利の0.9%という数字である。この低金利は個人向け融資では考えにくく、住宅ローンやマイカーローンといった長期間に渡る目的型の融資と比較しても遜色のないものとなっている。

従来では考えることができない低金利の原因は、先ほど説明したAIによるコスト削減や店舗型の設備のカットなどにあると、簡単に想像することができる。

AIを導入することで実現できるコストカットは、消費者、企業どちらからの目線でも目に見えるほどの効果があると言えるようだ。

住信SBIネット銀行と日立の共同開発AIの事例

国内の金融事業のAIの活用について、住信SBIネット銀行と日立の共同事業の例もあげられる。

日立は、住信SBIネット銀行の協力の元、融資後に発生する稀なリスクについての予測が審査時に観測できるAIの研究に成功しているのである。融資後の稀なリスクとは、倒産による貸し倒れや詐欺などの不正取引を指す。

このような、発生件数の少ない稀なリスクは避けたいものであるが、件数が少なく統計データからの予測がコンピュータを使っても難しかった。

しかし、日立の新たに開発したAIは、学習機能を活かすことで発生頻度の少ないリスクを予測し、予測した根拠を提示することが可能だ。その結果、今まで人はもちろん、コンピュータにも正確に予測することが難しかった頻度の少ないリスクにも高確率で予測が成功するようになった。このように、学習機能が高いAIは、審査のリスク回避にも使えるようにもなっている。

日立の開発した技術を、住信SBIネット銀行は今後住宅ローンの審査に利用する他、地域の金融機関にサービス提供をすることで、地域創生の取り組みにも生かしていく方向性であるようだ。現在は融資事業目的での利用であるが、住信SBIネット銀行は地域金融機関の活性化など、日立は、他事業での展開といった多目的な産業や事業での展開も期待している。

新生銀行とグリフィン・ストラテジック・パートナーズの共同事業

個人向け融資の中でも人気の商品「レイク」を取り扱っていた新生銀行も、融資事業にAIを導入している。新生銀行は、データ解析の会社であるグリフィン・ストラテジック・パートナーズという会社と共同出資を行いセカンドサイトの設立を行った。

セカンドサイトは、データの解析のためのAIの作成に着手しており、開発結果のAIは、もともと新生銀行の投資部門で使われていたが、2016年以降は個人向け融資にも活用されている。

セカンドサイトの開発したAIは、他社よりも細かい個人データからの予測を可能としているようで、パーソナルデータとして、服装や筆跡などの詳細なデータから購買予測などを行うことが可能である。

さらに、詳細なパーソナルデータからは、利用者の潜在的な購買意欲も予測することも可能だ。住宅ローンや投資事業など新生銀行の他事業の顧客が持つ潜在的購買意欲を読み取ることで、適格な個人向け融資の商品を紹介することができ、新たな顧客の創造にも一役を買っている。

新生銀行も先ほどの住信SBIネット銀行の例と同じく、セカンドサイトが開発したAIを地方金融企業へと販売を行い、地方活性化を開始しているようで、AIを利用した地域再生は、メジャーな手段として確立しつつあるようだ。

まとめ

AIを使った国内の共同事業を紹介してきたが、これらの例は一部で地方金融機関の人工知能の活用を含めるとさらに事例が存在する。しかも、すべての事例がコスト削減、リスク軽減、地域活性化といった面でかなりの成果を上げている。これまで人工知能やAIとは無縁であった産業でも、AIを導入することで明確なメリットをもたらすことができるため、融資事業以外の様々な産業での活躍が期待されるであろう。

<関連記事>
AIの活用で融資審査はどう変わるのか(海外事例)


<参考>

  1. みずほ銀行とソフトバンクの合弁会社J.Scoreが 日本初のFinTechサービス「AIスコア・レンディング」を本日より提供開始(みずほ銀行)
    https://www.mizuhobank.co.jp/release/pdf/20170925release_jp.pdf
  2. 住信SBIネット銀行と日立、AIを活用した金融機関向け審査サービスの創出に向け検討を開始 (住信SBIネット銀行)
    https://www.netbk.co.jp/wpl/NBGate/i900500CT/PD/corp_news_20171226
  3. 人工知能を活用したモデルのリテールバンキング業務への本格導入について(新生銀行)
    http://www.sxi.co.jp/pdf/20161128_press_release.pdf#search=%27%E6%96%B0%E7%94%9F%E9%8A%80%E8%A1%8C+AI%27
  4. 新生銀、AIで融資可能額算出 取引明細などデータ活用(日本経済新聞)
    https://www.nikkei.com/article/DGXLZO03238810U6A600C1NN1000/
シェア

役にたったらいいね!
してください

シェアする

  • RSSで記事を購読する
  • はてなブックマークに追加
  • Pokcetに保存する