AIxロボット ついにアトムやドラえもんのいる世界へ近づいてきた
SoftBank(株式会社ソフトバンクロボティクス)のヒト型ロボット、Pepperはテレビなどのメディアでもよく取り上げられているため、知っている人も多いだろう。人間との会話もこなすコミュニケーション能力はもちろん、Pepperは相手の感情を分析してリアクションを変えることもできるという、非常に優れたロボットだ。日本での会話をするロボットの代表格にような存在だ。
また、Pepperに比べて小さいサイズのロボット、sotaも有名だ。2足歩行ロボットの開発者として一躍世界に名を馳せたロボットクリエイター・高橋智隆氏がデザインした、お馴染みの愛くるしい顔立ちも、親しみやすい。もともと高橋智隆氏のデザインは、『鉄腕アトム』に影響されているというから、日本人が親しみやすさを感じるのも当然、と言ってもいいかも知れない。
これらのPepperやsotaのような、人間とのコミュニケーションを目的とした人工知能ロボットも、一般の人々の身近な
存在になってきつつある。このような状況にあって、ロボットの能力を存分に発揮され、ビジネスに活かす活動をしている企業もある。その一つが、株式会社ヘッドウォータースだ。
接客サービスでも活躍するAIコミュニケーションロボットの面白い事例があるので、その概要や人工知能の仕組みについて、見ていこう。
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株式会社ヘッドウォータースとは、どんな会社
株式会社ヘッドウォータースは、ロボットとAIを組み合わせたサービスに強みを持っており、その開発実績は日本国内でもトップクラスだ。2005年の会社設立依頼、これまでに250件以上の開発実績があるという(*4)。体脂肪6%のアスリートだという代表取締役の篠田庸介氏は、エンジニアと海外経験を重視して新しいビジネスを生み出すという熱い気持ちの持ち主だ(*5、 *6)。2018年初頭の時点で、累計の資金調達総額は約3.9億円を獲得した。
ロボットやIoT製品のハードウェア開発によくありがちな問題に、限られたスペックの制約がある。その制約を、ヘッドウォータースではクラウドのAIプラットフォームを強化することで解決する。さらにクラウドを中心に据えることで、各デバイス、ロボットやIoTのみならず、スマートフォンやスマートスピーカーなど、多様な端末を連携することができる。クラウドを中心として、各デバイスを連携する技術、そして開発スピードに優れた会社だ。
Microsoftと組んだ、ヘッドウォータースのユニークなAIxロボット活用事例
ヘッドウォータースの提供する面白いサービスの一つに、ラーメン店でのキャンペーン「コグニメン」がある。マイクロソフトと提携し、同社の提供している「Microsoft Azure コグニティブサービス」とヘッドウォータースのコラボによって実現したサービスだ。Microsoft Azure コグニティブサービスは、クラウドで人工知能開発を支援するプラットフォームで、個人でも一部無料で利用することも可能だ。「コグニメン」とは、コグニティブ(認知)サービスとラーメンとから名付けられたという(*7)。
ラーメン店を訪れるお客さんとのインターフェースの役割は、前述のsotaがつとめる。sotaがお客さんの顔をおぼえ、3回目の来店だと判断するとラーメンのトッピングをサービスをするといったキャンペーンだ。単にトッピングをサービスするだけではなく、人件費や店舗内でのオペレーションの効率化(*8)、そしてもちろん、愛らしいsotaの話題性による広告効果も大きい。
AIとロボットの組み合わせが実現するためのメカニズムとは
2005年設立のスタートアップであるヘッドウォータースは、前述の通りすでにロボットとAIの組み合わせによる開発実績において日本国内でもトップクラスだ。その開発実績のスピード感は、どのように実現されているのだろうか。
その秘密の一つは、開発の敷居が非常に低くなっているからだろう。Pepperやsotaは、一般の人でも気軽にコーディングできる環境が整っている。また、Microsoft Azure コグニティブサービスやIBM Watson(BlueMix)など、AIを気軽に利用できる基盤となるサービスが充実している。プログラムがわからない人でも、GUI操作でAI開発をすることも不可能ではない。
AIや組み込みにおけるプログラミングでも、敷居は非常に低くなっている。現在、海外でのプログラミング教育によく使われていると言われる言語の一つがPythonというプログラミング言語だ。Pythonは近年の人工知能で使われる言語としては定番となっている言語だが、もともと教育用言語として設計されていたため、(C言語やLispなどに比べれば、ずっと)理解しやすく、とっつきやすいオープンソースの動的スクリプト言語だ。PepperやMicrosoft Azure コグニティブサービスなどでも、PythonでAI開発を気楽にできる環境がすでに整っている。Pythonさえ覚えれば、多くの分野で先端の技術が使える。
従来の組込み開発では、C言語を主に、それぞれの環境で異なる言語を習得しないといけないということも珍しくなかった。しかし現在では、誰もが少ない習得コストで人工知能やクラウドAIサービスに参加できるような環境が整ってきているのだ。
さらに、クラウド連携やPC、スマホとの通信に必要となる、WifiやBluetoothなどの通信規格についても、少電力化やコストが押えられた組込み製品も一般市場に出回るくらいになっている。ArduinoやRaspberry Piなどの登場も、若年の組込み系人材の育成に大きく貢献している。
こうした、社会全体の基盤整備が充実してきたことが、AIとIoT、クラウドをともに組み合わせたスピード感のある開発体制が整えられているのだ。代表取締役・篠田庸介氏も、そのインフラを活用し、新しいイノベーションを作り出す人材としてのエンジニアに期待を寄せる。
クラウド基盤でAI開発するメリット
ヘッドウォータースの特徴として、クラウド型のAIプラットフォームの強化が謳われている。また、今後の展開として、”ロボットインテリジェンス”、”コミュニケーションの自動応答化”にも継続して注力されていくという。
そして、そのAIプラットフォームがより洗練され、高度な判断や接客能力さえも学習し備えたAIxロボットが、ラーメン店などの飲食業界でも比較的簡単に導入できるようになってきたことの証が、前述のsotaのコグニメンだ。日本の工学面での技術の確かさ、ものづくりという伝統、そして”おもてなし”文化とAIとの融合は、非常に競争の激しい世界の人工知能業界での生き残り戦略の、一つの有力な方策だと言えそうだ。
今後の日本のAIxロボットは
日本人は特に、鉄腕アトムやドラえもんのような人間のような高度な知能を持ったロボットを夢見てきた。現在、人工知能研究で第一線を走る研究者にも、アニメのロボットへ憧れてこの分野に進んだという人も、少なくない。
しかし、ひとくちにAIとロボットの組み合わせと言っても、そう簡単に実現できるものではない。ロボットはハードウェア、組込みの知識や経験が必要で、勝手の大きく違うソフトウェアと組み合わせるのはなかなか大変な作業なのだ。
しかし、ソフトウェアの世界ではもちろん、ハードウェア・組込みの世界でもインターフェースの簡易化が進み、とても敷居が低くなった。通信ネットワークとクラウドの仕組みの整備も、非常に大きい。
これらの動きが、ロボットの脳にAIを組み込むという、意外に難題なことを実現できる基盤になっている。結局、AIといえども、ハードウェアに依存している存在なのだ。しかしAIを支えるインフラの進化はまだまだ続くため、AIの進化もまだまだ止まらない。ここに挙げたヘッドウォータースも、そのAIの進歩を支える企業だ。
クラウド型AIサービスもや、最近では一般のプログラマが無料で量子コンピュータ上でプログラムできる環境もある。量子コンピュータによるAI処理が実用できるようになれば、現在AI処理の高速化に使われているGPUで行うよりも、圧倒的な速さが期待できる。量子プログラミングを一般・個人プログラマが書けるようになってくると、さらにAIの社会に与えるインパクト、威力は飛躍的に伸びていくだろう。
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<参考>
- ロボット(ソフトバンク)
https://www.softbank.jp/robot/ - 普及型社会的対話ロボット「Sota(ソータ)」(ヴイストン株式会社)
https://www.vstone.co.jp/products/sota/ - 高橋智隆(Wikipedia)
https://ja.wikipedia.org/wiki/高橋智隆 - ロボット×AIアプリ開発実績トップクラスのヘッドウォータース、総額約2億円の第三者割当増資を実施(PR TIMES)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000017.000018045.html - 株式会社ヘッドウォータース 篠田 庸介「日本人エンジニアの持つ高い価値を世界に発信する」(LISTEN【リスン】)
https://listen-web.com/yosuke-shinoda/ - ヘッドウォータース / その他,業務支援,AI,食,ロボット(STARTUP DB)
https://startup-db.com/companies/4277 - コグニメン for 鶏ポタ – 人気ラーメン店とコラボした 全てのお客さまを覚える顔パスアプリ(株式会社ヘッドウォータース)
https://www.headwaters.co.jp/service/ai/cognitive_men/ - ラーメン屋でマイクロソフトのAIとロボットを導入。大将なしで「顔パス」実現。 ラーメン屋さんで「大将、いつもの!」をロボットとAIで実現目指す(IoT Today)
http://iottoday.jp/articles/-/4259
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