AI(人工知能)をマーケティングに応用する動きが国内で広がっている。キーワードは、Webサイト、広告、接客だ。
WebサイトAIは、Webサイトのよし悪しを分析する。そしてどこが悪いかも指摘してくれる。そしてコンバージョンの増やし方まで指導してくれるのだ。
広告AIは、最も効果的な広告の出し方をアドバイスする。広告はとかく効果がみえにくい。それだけに企業は広告費のかけかたや広告の出し方に苦慮している。広告AIは広告に悩む企業にソリューションを提供する。
接客にもAIが使われていて、小売店でベテラン店員並みのおもてなしが可能になる。顧客満足度を上がる起爆剤となるはずだ。
詳しくみていこう。
WACULのWebサイト分析サービス「AIアナリスト」
株式会社WACUL(本社・東京都千代田区)のマーケティングAIは「AIアナリスト」といい、このAIが行う具体的な「仕事」はWebサイトの分析だ。AIアナリストは2017年にグッドデザイン賞を受賞した。
AIアナリストが想定する顧客は、すでにアクセス解析ツールを入手している企業である。一般的なアクセス解析ツールは難解で、「入手したが使いこなせない」企業は少なくない。
そこでWACULは、次の3つのソリューションを提供するAIアナリストを開発した。
・サイトの改善提案
・わかりやすいレポート
・気になるページの調査
つまり、アクセス解析の必要を感じつつも独自に解析できない企業や、アクセス解析に取り組んだものの成果が得られない企業をAIでフォローするのがAIアナリストだ。
AIアナリストの具体的な「仕事」とは
AIアナリストは、サイトを分析して改善点を提案する。分析結果を日本語で提示していることにもこだわりがある。多くのアクセス解析ツールは英語で分析結果を出すので、これが企業の「つまずき」の原因になっていたのだ。日本語で分析結果が出るだけで、企業の担当者の作業負担が減るはずだ。
さらにAIアナリストを導入した企業は、リアルタイムでWebサイトの状況を把握できるようになる。コンバージョン(成約などの最終成果)に関わるデータを毎週、または毎月集計してレポートとしてクライアントに提出する。
またAIアナリストは、対象のWebサイトのページが「よいか悪いか」を瞬時に判断する。ヒトのWebサイトコンサルタントだと、どうしてクライアントに気兼ねして「改善が必要な箇所はあるが強みもある」といった無難な評価になりがちだ。スピーディかつドライな判定はAIの強みといえる。
AIアナリストに内蔵されているAIの動き
AIアナリストに内蔵しているAIは、クライアントのサイトの過去のデータを機械学習し、どのようにしてコンバージョンにつながっているかを理解する。
そしてAIはどこに「のびしろ」があるか考え、提案する。AIアナリストはさらに、その「のびしろ」を確実な成長につなげる方法を提案し、さらにその方法に取り組むとコンバージョンがどの程度増えるかまで予測する。
つまり、分析、提案、手法の検討、結果の予測までをAIが行うのだ。クライアント企業にとってはWebサイトコンサルタントについてもらうようなものだ。
リスティング広告プラットフォーム「THREe」
株式会社ロックオンは東証マザーズに上場している企業だ。同社のマーケティングAIは「THREe」といい、これが提供するソリューションは、リスティング広告の適切な運用である。
リスティング広告とは
リスティング広告とは、消費者がグーグルやヤフーなどの検索エンジンで検索したときに、検索結果画面に表示される広告のことだ。グーグルもヤフーも、検索ワードによって表示させる広告を変えている。
消費者が検索エンジンを使うのは「知りたい」または「買いたい」という欲求があるからだ。そこでグーグルやヤフーは、その欲求に応えることができる広告を出せば購買につながりやすく、広告主に貢献できると考えた。
したがって広告主(企業)は、「こういう欲求を持っている消費者(ネットユーザー)に向けてPRしたい」という狙いを持って、リスティング広告を出稿することになる。
それではTHREeがどのようにリスティング広告を最適化していくのかみていこう。
THREeの「ヒト型ポートフォリオ」とは
THREeの特徴は「ヒト型ポートフォリオ」だ。リスティング広告の出稿では、最適な入札単価を調整したり、キーワードを追加したりといった作業をしなければならないが、THREeはこの作業を自動化する。
まるでヒトのようにポートフォリオを改善していくので「ヒト型ポートフォリオ」という。
極力単純に解説すると「ベテラン広告マンの広告代理の仕事をAIにやらせる」のがTHREeである。
実際にロックオン社は、大手広告代理店でリスティング広告運用をしていたベテランをAIのAIの教師に据え、AIに機械学習させた。ベテラン広告マンの頭脳をAIに移設したイメージだ。
THREeは自動入札単価調整や自動キーワード追加だけでなく、毎月の広告予算を把握して残予算のなかで最適なポートフォリオをつくることもしてくれる。
チャット接客システム「OK SKY」
株式会社空色(本社・東京都品川区)はAIを搭載したチャット接客システム「OK SKY」を開発した。
OK SKYは、小売店が顧客にチャット接客サービスを提供し、そのチャットログ(対話履歴)から顧客の好みを割り出す。
OK SKYのクライアントは小売業だ。小売店がOK SKYを使うと、顧客に「顧客がほしがりそうなもの」を提案することができるようになる。
顧客の「ほしい」を先取りする
小売業は、顧客にモノを「買ってもらった」ことで目標を達成するわけだが、それで終わるのでは売り上げは安定しない。
それでどの小売店でも、一度買ってもらった顧客に次も買ってもらうことで、売り上げを安定させようとする。
しかし小売店がリピーターを確保することは簡単ではない。というのも顧客のほうでは、その店が「確実に自分が求めるモノを提供してくれる店」でなければ、できれば次回は別の店で買ってみたいと考える。
そこで小売業としては、「確実に顧客が求めるモノを提供する」ことを目指すことになる。
OK SKYはAIで顧客の購入履歴やチャットログから、顧客の好みを割り出す。さらに顧客の購入意欲が高まる時期も予測する。
つまり小売店側は、OK SKYの提案にしたがって、特定の顧客に特定の時期に特定の商品の情報を流しさえすれば、顧客にしつこいダイレクトメールを送ることなく、確実なリピート購入につなげることができるようになる。
顧客が購入意欲を高めるタイミングや好みの商品は、ベテラン店員であれば把握することができる。しかし新人店員はそうはいかない。
またベテラン店員でも、例えば別の地域の店舗に人事異動になれば、その店の顧客のデータをあらためて頭のなかにインプットしていかなければならない。
OK SKYは各店に1人ベテラン店員を配置するようなものだ。
まとめ~記憶力のよさと情報の使い方を知っている
AIがマーケティングに向いているのは、記憶力がよく、入手した情報の使い方を知っているからだ。
記憶力については、AIはコンピュータなので説明するまでもないだろう。
問題は情報の使い方だ。膨大な予算をかけて大規模マーケティングをしかけても成功しないことがあるのは、情報の使い方が間違っているからだ。
その点AIは、ベテラン社員のノウハウを無限に吸収することができる。また一度マーケティングに失敗したら、それも自己学習して「次は間違えないようにする」こともできる。
もうAI抜きのマーケティングは考えられない時代がそこまで来ているのかもしれない。
<参考>
- 機能紹介(AIanalyst)
https://wacul-ai.com/function/ - ヒト型ポートフォリオ(THREe)
https://three.ne.jp/feature/ - OK SKY(株式会社空色)
http://www.ok-sky.jp/ - AI(人口知能)でマーケティング担当者の仕事は、分析業務からクリエイティブ業務に重点が置かれるようになる。(エムタメ)
https://mtame.jp/martec/ai_marketers - WebマーケティングにおけるAI活用事例を一挙紹介!【Web担当者・マーケター必読】(AIanalyst Blog)
https://wacul-ai.com/blog/marketing/marketing-terms/web-marketing-ai/ - 人工知能(AI)でマーケティングはこう変わる! ~成果を挙げている事例に学ぶ~(TIS)
https://www.tis.jp/special/marketingit/concept_ai_marketing/
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