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AIを使えばペットと話せるようになるかもしれない

AI(人工知能)を使って動物との会話と試みる研究や製品開発が進んでいる。ペットと会話ができる世界は、どのようなものだろう。

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AI(人工知能)の分析能力をもってすれば、動物の言葉も簡単にわかるようになる。だからペットと話すこともできる。

――このようなことが現実のことになりそうだ。

というのも、AIを使わなくても、そもそも「動物と意思疎通を図ることは可能」だ。そこにAIの力が加わるのだから、十分期待できる。

動物とのコミュニケーションに取り組むAI研究の現状を探った。

動物 会話 仕組み

動物の感情が分かる仕組みとは

動物が感情を持っていることと、動物がコミュニケーションを取ることができることはわかっている。ただ「普通の接し方」では人と動物はコミュニケーションを取ることはできない。

これはなにも人と動物に限った話ではなく、犬は猫とコミュニケーションを取ることはできない。

なぜなら、それぞれの動物には、同じ種類の動物でしか通じない言葉があるからだ。このような現象が生じるのは、動物の種類ごとに脳や神経などの構造が異なるからだ。

例えば人間は、言葉、顔の表情、ジェスチャーなどで相手とコミュニケーションを取ろうとする。しかし言葉、表情、ジェスチャーは人間の脳に都合のよいコミュニケーションツールにすぎないのである。

動物 会話 仕組み

動物に意図があるので推測すればよい

ただ、ここまでの解説は「普通の接し方」をした場合の話である。「特殊な接し方」をすれば十分、人は動物とコミュニケーションを取ることができる。

例えば日本のチンパンジー研究では、研究者がチンパンジーに「赤鉛筆を5本」持たせると、チンパンジーは「赤鉛筆が5本描かれた絵」を選ぶことができる。

アメリカのゴリラ研究では、ゴリラが手話で「猫、好き、柔らかい」と人間に伝えることができるという。

もちろんこれらのチンパンジーやゴリラは選りすぐりの1頭であり、どのチンパンジーやゴリラでもこれらのことができるわけではない。

宇都宮大学バイオサイエンス教育センター特任助教で、株式会社CrowLab代表取締役塚原直樹氏は、「カラスの言葉がわかる人」だ。

塚原氏はカラスを15年以上研究し、40のカラス語を発見した。塚原氏はいま、カラス語を駆使してカラスを人に迷惑がかからない場所に誘導する研究を行っている。要するに、カラスに「ここにいると迷惑だけど、向こうに行けば平和に暮らせるよ」と教えようとしているのである。

塚原氏が解明したカラス語のうち、「こんにちは」「餌をみつけたよ」「危ないよ」「安全だよ」はNHKの以下のサイトで聞くことができる。

https://www3.nhk.or.jp/news/contents/short_news/2017_1030_2.html

チンパンジーとゴリラとカラスの研究からわかること

チンパンジーとゴリラの研究からは、動物たちも人間とコミュニケーションを取りたがっていることがわかる。知能が高い動物は、食べることや危険回避といった生存に関すること以外のことにも関心を持っているのである。つまり、すべての動物が本能にしたがって生きているわけではなく、「自身の言動」に意図を持たせている動物もいる、というわけだ。

これはペットの犬や猫にもみられる「言動」だろう。飼い主であれば日常的に「ペットから愛されている」と感じているはずだ。

動物たちが人間に関心を示しているのであれば、AIを使って動物たちの鳴き声や行動から意図を突き止めることができそうだ。

一方、カラスの研究は、カラスの行動とカラスの鳴き声を結び付けてカラス語を割り出している。ただこれは簡単なことではない。というのも、カラスの鳴き声を文字にすることが難しいからである。

例えば、「お腹がすいた」は「カーカー」、「不機嫌だ」は「ガーガー」、「逃げよう」は「ギュィーギュィー」と表記しても、第三者には伝わらないだろう。

しかし、だからこそカラス語の解明にはAIが活躍できそうだ。AIは音声認識が得意だ。

動物の行動をAIで言語に変える?

アメリカの北アリゾナ大学のジョン・プレイサー教授(コンピュータ科学)は、AIを使って、プレーリードッグが天敵の接近を仲間に知らせていることを突き止めた。しかもそのとき、天敵の色や形も伝えているという。

プレーリードッグは、人間をみつけたときはかん高い鳴き声を発して仲間に危険を知らせ、スカンクやアナグマなど危険がない動物をみつけたときはそれとは異なる鳴き方をする。

また、プレイサー教授が青いシャツを着てプレーリードッグに近付けば、それに気が付いたプレーリードッグは仲間に「青いものが近づいている」と知らせ、黄色いシャツを着ていれば「黄色いものが近づいている」と知らせるという。

プレイサー氏は、人間の言葉を動物語に翻訳する装置の開発に、生物学の研究者とともに取り組んでいるという。

感情分析が動物に与えるメリットとは

人間と動物が会話できるようになり、人間が動物の感情がわかるようになると、動物にはどのようなメリットがあるだろうか。

ペットの犬や猫には「飼い主にかまってもらいたい」という欲求があると推測できるので、彼らにもメリットがあるだろう。例えば、いつも散歩をねだる犬であっても、たまに「外に出たくない」と考えることがあるかもしれない。それがわかれば、犬が外に出たくないとき、ちょうど飼い主のほうでも疲れているかもしれない。それならその日の散歩を中止にすることができる。

また、家畜の牛や羊と意思疎通ができれば、酪農家はより快適な環境を提供できるようになるかもしれない。家畜は「集団生活」を強制されているが、それを猛烈に嫌がっていることがわかれば、酪農家も改善策を考えるようになるだろう。

AIで乳牛の健康管理

アメリカでは実際に、乳牛の健康管理にAIを使っている。

画像認識ができるAIは、映像のなかから特定のものを探すことができる。この技術を空港の防犯管理に使えば、監視カメラの動画に映った群衆のなかから犯人を割り出すこともできる。

この技術を乳牛管理に使うと、顔や体の大きさ、黒白模様のパターン、行動パターンなどから、乳牛を1頭1頭特定することができる。

AIに乳牛の一日の行動の動画をみせると、「餌を食べた」「寝転がった」「興奮している」といった行動も認識できるようになる。

これらの情報を組み合わせると、乳牛1頭1頭の行動を完全にデータ化することができる。

ここまで牛たちを分析できると、そのなかから病気の牛が発生したら、行動のなかに病気の前兆を発見できるようになる。それがわかれば前兆行動を起こしたらすぐに獣医にみせることができ、病気を予防できるというわけだ。

似たようなAI利用は、札幌市の円山動物園でも行われているので紹介する。

円山動物園での活用例

札幌市の円山動物園は2018年に、北海道大学や札幌市のベンチャー企業、株式会社テクノフェイスと共同で、AIを使った動物管理の検討に着手した。

AIの活用法は、先ほど紹介した乳牛の場合と同じ。まずはチンパンジーに対し、普段の様子を撮影した動画からAIで固体を特定する。

次に1頭1頭の行動パターンをやはりAIで捕捉して、普段と異なる行動を取ったら飼育員に知らせるシステムを構築していく。

Anicallの紹介

横浜市に本社を置く株式会社Anicallは、動物の行動を解析しているベンチャー企業である。同社が開発した動物コミュニケーションツールはとてもユニークだ。

「しらせるアム」はペットの犬や猫の活動量や食事内容を計測・分析するツールで、首輪のように装着する。

ペットの行動から「気持ち」も解析する。

「しらせるアム」はまだβ版(試作品と量産品の中間の状態)だが販売していて、価格は税込15,660円となっている。この料金にはデータの保管や解析にかかる1年分の費用も含まれている(*)。

http://www.anicall.info/order.html

まとめ~動物の気持ちがわかりすぎることも問題ではないか

ペットと会話ができたり、ペットの気持ちがわかったりすることは、人間にも動物にもよいことだろう。お互いの「愛情」は深まるに違いない。

またペットの排泄のしつけや、他人への迷惑行為の予防も容易になるかもしれない。

しかし動物の気持ちがわかりすぎることは、倫理的な問題を生むのではないだろうか。例えば、豚や肉牛や競走馬の「気持ち」がわかることは、とても残酷なことになりはしないか。人間が酷使している動物の気持ちは、人間は知らないほうがいいかもしれない。


<参考>

  1. カラス語講座(NHK)
    https://www3.nhk.or.jp/news/contents/short_news/2017_1030_2.html
  2. どうして動物は(人間と)話ができないの(学研キッズネット)
    https://kids.gakken.co.jp/kagaku/110ban/text/1135.html
  3. Naoki TSUKAHARA 塚原直樹(株式会社CrowLab)
    http://tsukaharanaoki.net/
  4. “カラス語”でカラス撃退?(NHK)
    https://www.nhk.or.jp/ten5/articles/17/003434.html
  5. 動物の「言語」体系を解析――人工知能とファジー理論を応用(WIRED)
    https://wired.jp/2005/06/14/%e5%8b%95%e7%89%a9%e3%81%ae%e3%80%8c%e8%a8%80%e8%aa%9e%e3%80%8d%e4%bd%93%e7%b3%bb%e3%82%92%e8%a7%a3%e6%9e%90%e2%80%95%e2%80%95%e4%ba%ba%e5%b7%a5%e7%9f%a5%e8%83%bd%e3%81%a8%e3%83%95%e3%82%a1%e3%82%b8/
  6. 札幌・円山動物園、AIで動物管理実験(日本経済新聞)
    https://www.nikkei.com/article/DGXMZO26093060U8A120C1L41000/
  7. 事業内容(株式会社テクノフェイス)
    http://www.technoface.co.jp/business/index.html
  8. 新ビジネス創出と円山動物園の機能強化に向けた技術確立のための検討会(第2回)(札幌市)
    http://www.city.sapporo.jp/somu/machikiso/documents/h29toshisei_08maruyamait03.pdf
  9. ペット事業(Anicall)
    http://www.anicall.info/cn4/pet_intro.html
  10. しらせるアム初回β版限定販売予約(Anicall)
    http://www.anicall.info/order.html
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