働き方改革の流れの中で、コンピュータに置き換えることができるところは置き換えていこうという動きが出ている。特に人工知能が発達したことにより、問い合わせ対応をAIと搭載したチャットボットシステムで行うという動きが出てきている。ここでは対話型自動応答AIサービス「CAIWA」を導入したTBSの事例をもとに、その特徴と仕組みを説明する。このコラムを読めば、自動応答AIサービスについて理解できるはずである。
続きを読むTBSテレビが対話型自動応答AIサービス「CAIWA」導入
株式会社TBSは昨年7月に社内システムの大きな見直しを行う際、社内のヘルプデスクへの問い合わせが増加することを見込み、チャットボットシステムを導入し社内各所からの質問に自動回答できるようにした。
チャットボットシステムの利用ニーズが高まったことで、より丁寧に回答できて、社員に優しく、業務内容に滞ることなく問題を解決できる性能を求めて日立システムズの対話型自動応答AIサービス「CAIWA(カイワ)」を導入することを決めた。
システム部の対応業務削減を目的として働き方改革の一環として導入されたこのシステムだが、社内各所からの問い合わせ対応をチャットボットが自動回答して解決してくれることでこれまでよりも大幅に業務の効率化を図ることに成功した。
社内ユーザーが一度システムにログインすると、24時間365日いつでもTBS社内のみならず社外のどこにいても簡単に安全にPCやスマートフォンからCAIWAへのアクセス可能なシングルサインオンも実現し、社内ユーザーの満足度は高いようだ。
チャットボットキャラクターがTBS社内で作成された「AoI(あおい)かなえ」が採用されている。「AoI(あおい)かなえ」がユーザーの質問に迅速に答え必要な情報を提供することが可能となった。
CAIWAとは
「CAIWA」は株式会社イクシーズラボによって開発されたシステムである。「CAIWA」は、Communication Agent with Intelligent Word Analyzerの頭文字からとられた言葉だ。2001年から開発が始まり、現在に至っており、さまざまな企業とパートナー契約をしている。前述した日立システムズも販売パートナーのひとつである。民間企業だけでなく、厚生労働省でも利用されている人工知能である。
「CAIWA」とは人工知能を活用した会話型コミュニケーション(チャットボット)によって、お客様の質問に回答し必要なサイトのページへと誘導してくれるシステムである。よくあるお問い合わせへの回答など、事例やページへの誘導が掲載されていても電話やメールで同じような質問が寄せられることが多い企業はその対応に多くの時間を割かなければならない事態が起こる。そうした対応を一手に引き受けて業務の削減、効率化を図ってくれるのがCAIWAの自動回答システムである。
問い合わせピーク時には対応が全く行き届かない、営業時間外の問い合わせに対応できないなどの問題を解決してくれる。また、迅速な情報提供によってウェブサイト利用者の満足度を向上させたい、対話型だからこそうかがえるお客様の生の声から潜在ニーズを掘り起こしたいなど企業の希望に対応するシステムだ。
また製薬業界向け対話型自動応答AIサービス CAIWA Service for Medicalもある。こちらは製薬業界向けの対話型自動応答システムで、人工知能が正しい医療情報を提供する。医療情報は日々更新されているので、専門的な知識を迅速にしかも正確に伝えてくれれば、利用者の満足度は向上する。実際に導入した企業では1万3千件を越える問い合わせに対応できたという。今後、さらに専門的な問い合わせに関しても人工知能が活躍するようになるはずだ。
CAIWAの特徴とは
その特徴は高い言語認識精度である。長い時間をかけて学習を行ってきた高度な辞書概念と自然言語処理アルゴリズムが組み込まれていることにより、入力された会話の中にある単純なキーワードマッチングから回答する従来のチャットボットとは違い、入力文全体の意味をとらえた後、最も適した回答を返すことが可能となった。
例えば「~したい」というのは願望だが、「~したくない」というのは願望の否定を表す。こうした会話は人間同士であれば簡単に理解できるが、人工知能が内容を認識するには文章の意図と肯定なのか否定なのかを判断できなければならない。その判断が可能な人工知能がCAIWAなのだ。
また単語同士の関係を理解し、文章全体の意味を捉えられるようになっている。そのうえ「頭が痛い」と「頭痛」が同じ意味であるという成句判定を行うこともできる優れた人工知能である。こうした判断ができるのがこれまでのチャットボットとは大きく違うところである。
CAIWAの仕組みとは
チャットボットに入力された言葉はCAIWAサーバーに送られる。入力文の意味を解釈し、その言葉に最も意味が近い質問を自分の「知識データベース(ナレッジーベース)」から見つけ出し、対応している回答を返す仕組みである。「知識データベース」とはユーザーから入力された質問にどう返すか定義付けAIに覚えさせる知識のデータベースだ。
もう少し詳しく仕組みみついて見ていこう。入力された言葉はCAIWAサーバーというところに送られる。このサーバーには先ほど出てきた「知識データベース(ナレッジーベース)」「意味認識エンジン」「会話制御エンジン」の3つが内蔵されており、まず文章が入力されると「意味認識エンジン」入力された単語を摘出し、句を認識し、文章の認識し文章解析を行う。次に「会話制御エンジン」が言い回しを処理し、文の修飾関係を解析、単語の親子関係・重要度判定、肯定否定かを判定して補完処理をしていく。
最後に「知識データベース(ナレッジーベース)」にて基本知識との照合、ユーザー設定知識との照合、回答文の決定を行ってチャットボットからユーザーへ返信となる。CAIWAの仕組みによってこうした複雑な処理を瞬時にて行うことができるようになったのだ。
まとめ
これまでチャットボットでの会話型対応はユーザーの会話から単純な言葉を拾いあげ、そのキーワードから対応している返答を探す形だった。しかし単語の読み取りだけでは文全体の意味を把握することに限界があった。
文章自体が単純な質問であれば返答は難しいものではなかったが、TBSのようにシステム刷新による社内の人間からの質問に対応するとなるとその内容はより専門的かつ複雑な内容となってくる。CAIWAは高度な言語認識精度を保つことで様々な文章を解析し、ユーザーの意図をとらえたうえで質問に回答することが可能となり、TBSでの業務大幅削減に成功、効率化アップの功績は他の企業からも注目を集めることとなった。
ただ効率化を狙っただけの導入だとしたらここまでの生かは出なかったかもしれない。「従業員の負担を減らそう」社員の方に寄り添った発想とCAIWAがマッチングした結果がもたらした成果だろう。日立システムズはTBSでの事例を生かして、さまざまな企業へ「CAIWA」が導入されるよう働きかけていくだろう。
<参考>
- TBSテレビが「対話型自動応答AIサービス」の導入により働き方改革を推進社内システムや業務に関する問い合わせ対応を自動化するとともに、運用管理者の負担も軽減(Ledge.ai)
https://ledge.ai/2019-03-27-1568686925c9b8eff77e6c/ - 対話型自動応答AIサービス「CAIWA Service Viii」(日立ホームページ)
https://www.hitachi-systems.com/solution/s0307/caiwa/ - CAIWAエンジン(イクシーズラボホームページ)
https://www.exiis-lab.com/platform-plat/caiwa-plat/#KB - 会社情報(イクシーズラボホームページ)
https://www.exiis-lab.com/company-company/ - 製薬業界向け対話型自動応答AIサービス CAIWA Service for Medical(日立ホームページ)
https://www.hitachi-systems.com/digitalization/service/caiwa/
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