夢の技術だったAI(人工知能)はすでに、特定の企業にとっては、なくてはならない技術になっている。AIを使う企業が「進んでいる」のではなく、AIを使っていない企業が「遅れている」とみなされるようになった、といっても過言ではない。
金融業、製造業、サービス業、流通業、医療分野で使われているAIの活用例と成功例を紹介する。
「AIなんて我が社にはまだ縁遠い」と考えている経営者や管理職こそ、AIの導入を知っておいたほうがよいだろう。
続きを読むAIを導入するデメリットはない?
企業にとって、AIを導入するデメリットはないかもしれない。
例えば、AIシステムはまだ高額なので、コストはデメリットといえそうだ。しかしパソコンの購入費や光回線の利用料、Webサイトの維持費をデメリットと呼ぶだろうか。それらは「投資」や「経費」と呼ばれ、むしろ経営にとってポジティブな要素といえる。
AIは、経営基盤に必要なものになるので、導入コストはデメリットと考えるべきではないだろう。
AIは、企業に導入することも使いこなすことも難しい。しかしこれもデメリットと考えるべきではない。
なぜなら、企業の業務を機械やコンピュータやシステムによって自動化したり省力化したりすることは、常に難しかったはずだからだ。しかしその難題を乗り越えたからこそ、厳しい競争に勝ち残れたのである。
AI導入はデメリットではなく、越えなければならない壁と考えたほうがよい。
そしてAI導入には次のような大きなメリットがある。
・作業の自動化
・省力化、省人化
・データ収集・管理・分析の自動化
・将来予測
これらはすべて、売上維持と売上増にとって不可欠なものばかりである。AIは企業経営を左右するツールになるであろうし、すでになっている。
AI導入に必要なこと
ITに詳しくない企業がAIを導入することは簡単なことではない。そのような企業は、どのようにAIを導入していけばよいのだろうか。
企業が最初に取り組むべきことは、社内の課題や問題やトラブルの総ざらいである。そしてそれらの課題のなかから、AI以外で解決できないものを探す。
なぜなら、AIを搭載しない「普通のシステム」で解決できるのであれば、そのほうが安上がりであるし操作が簡単だからである。
そして、どのような手法でも解決できない課題が残ったら、AIコンサルタントに相談するとよいだろう。
そして経営者や管理職には、自社の業界におけるAIソリューション事例の収集をおすすめする。
次の章でその一部を紹介する。
さまざまな業界のAI事例
続いて、金融業、製造業、サービス業、流通業、医療分野におけるAI活用例とAI成功例をみていこう。
金融業のAI
NECは「AIが金融サービスを変革する」と宣言している。NECは、AIで次の金融関連業務を自動化、簡素化できるとしている。
・企業への融資や個人の住宅ローンの審査
・クレジットカードやキャッシュカードの不正利用の検知
・マーケティング
・業績予想
・投資アドバイス
・社員採用時の適正判断
・ヘルプデスクの対応
NECのようなAI開発企業の動きに呼応するように、銀行ではすでに人員削減に取り組んでいる。上記の業務に人を割く必要がなくなるからである。
製造業のAI
日経XTECHは2019年7月に、製造業の経営者たちにAIに関する意識調査を行った。
「AIはものづくりに役立つか」という質問に対し、「非常に役立つ」との回答した人は35.6%、「ある程度役立つ」は53.6%にのぼった。つまり製造業の9割が、AIを肯定的にとらえている。
そしてすでにAIは、品質検査、事故予防、故障予測、製造計画の最適化の領域で使われ、成果を出している。
製造業はITをいち早く導入した業界のひとつである。そしてネットとモノをつなぐIoTの導入も早かった。
したがって製造業は、AIとの親和性が高い業界といえる。
サービス業のAI
サービス業では、接客にAIを使う事例が増えている。
例えばAIの重要技術である自然言語技術は、コールセンターにおける顧客対応に使われている。顧客が電話やチャットで質問をすると、AIを搭載したロボットが回答する。
AI接客はこれまで「客の意を汲むこと」や「正確に回答すること」に注力しているが、その課題はクリアされつつある。
現代のサービス業AI、急いでいる客にスピーディに対応したり、時間をかけて知りたい人に丁寧に回答したりすることができる。
サービス業AIは人の心に迫ろうとしている。
流通業のAI
流通業では、仕入や在庫の量の予測にAIを使っている。
仕入量と在庫量は、コスト上昇と機会損失がせめぎ合うため、常に流通業の重要課題になってきた。
仕入や在庫を増やせば、ビジネスチャンスは逃さないが、コストが上昇する。仕入や在庫を減らせば、コストダウンできるがビジネスチャンスを逃すことになりかねない。
AIは過去のデータから未来の需要を予測できる。そしてAIは今、消費者の購買行動データを次々「飲み込んでいる」。AIの需要予測の確度は、まだ上昇する余地がある。
最適な仕入量と在庫量は、流通業の利益の最大化に貢献するだろう。
医療のAI
医療ではAIの画像認識技術が重宝されている。
シーメンスヘルスケアは2019年5月に、AIを使って胸部CT画像を分析する画像解析処理サービスを始めるとアナウンスした。
CT画像とは、人の体内を「輪切り」にした画像を撮影する医療機器である。X線を使っている点では、レントゲン写真と同じである。胸部CT画像によって医師は、心臓や肺や大動脈の病気を発見する。
AIによる胸部CT画像解析処理サービスとは、「医師の目」をコンピュータに持たせたことに他ならない。
AIは、病気を発症している人と健康な人の胸部CT画像を大量に読み込み「病気の状態と健康の状態を学ぶ」ので、病気があるCT画像なのか、健康なCT画像なのかがわかる。
まとめ~明確な目的を持つことが大切
企業が自社にAIを導入するとき、明確な目的を持つことが大切である。それは、AIコストはまだ高額だからだ。
そのためには、自社の課題をAIで解決できるかどうか検討する必要がある。もし自社にITに強い社員がいなければ、ITコンサルティング会社に相談してもよいだろう。
そしてITコンサルタントに意見を求めるときも「これを解決したい」「AIはソリューションになるか」の2点を集中して尋ねたほうがよいだろう。
<参考>
- AIがもたらす金融サービスの変革(NEC)
https://jpn.nec.com/techrep/journal/g16/n02/160204.html - 製造業にAIは役立つのか、現場の本音を徹底調査(日経XTECH)
https://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/column/18/00001/02644/ - 「営業・接客系」の働き方はAI登場で変わるか(東洋経済)
https://toyokeizai.net/articles/-/179723 - AIを使いたい小売・流通業へ、データサイエンティストが教える機械学習活用法(ビジネス+IT)
https://www.sbbit.jp/article/cont1/36591 - 胸部CT画像が対象のAI技術による解析サービスのトライアルを提供(MONOist)
https://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/1905/09/news027.htm
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