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調達物流でのAI活用事例(海外の事例)

世界では物流分野でAIを活用した様々なイノベーションが起こっている。世界最先端の事例に触れ、日本企業もどのようにAIを活用していくか考える必要がある。

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今回は海外における調達物流分野でのAI活用の最新事例を紹介する。海外では積極的に物流分野においてAI活用が進んでおり、日本企業にとっても参考になることが多いはずだ。近い将来、海、陸、空の全てにおいてAIが物流革命を巻き起こすことになるかもしれない。

英国から無人貨物船がいよいよ登場か!? ロールス・ロイス社の事例

造船業を営むイギリスのロールス・ロイス社が中心になって海上における物流にイノベーションが起こりつつある。

ロールス・ロイス社では2014年に無人船構想を打ち出し、2015年から本格的に船の設計やシステムの研究に乗り出してきた。

2016年6月の時点で、ロールス・ロイスのオスカー・レヴァンダーは「2020年までに遠隔操作できる無人船を運用開始できる見込みだ」と発表していたが、その動きをさらに加速するために2017年10月に世界1のAIカンパニーと言っても過言ではない、Googleと提携し、自律運航型の商用船開発に本格的に乗り出した。

具体的にはGoogleと手を組み、Googleクラウドの機械学習を活用して海の物体(魚や、岩)の位置を把握する技術を強化する目的でこのプロジェクトは開始された。 

目指すモデルは陸からの遠隔操作と、自動航行を組み合わせた形であるという。

すでに、海のデータを分析するための機械学習モデルは完成しており、両社が提携してこれからも運航管理の最適化を行っていくようだ。

仮に2020年に実用化が開始されたとすれば、我々はどのような恩恵を受けることができるだろうか。

会社経営において最も重要な利益は、「売上高ーコスト」で算出されるが、この無人貨物線が実用化されれば、コスト面において2つの効果が期待できる。

1つ目はAIによって無人船が実現できることにより居住設備や操縦デッキが不要になり、その分貨物積載量も増やすことができる点、2つ目は、これまで船舶管理費の50%を占めていた人件費をほぼ全てカットできる点だ。

これら2つにより、大幅にコストを削減でき利益が増加するのは間違いない流れである。今後海運業においてはAIを活用する企業と、そうでない企業の競争力の差がさらに顕著になることだろう。

自律走行トラックで安全性と生産性を向上させる米国企業の挑戦 オットー社の事例

2016年1月に創業したスタートアップであるオットー。同年8月にはすでに従業員が90名超え、かのイーロンマスク率いるウーバーテクノロジーズに同年8月に680万ドルで買収されたことにも話題になったスタートアップだ。

元GoogleやAppleのAIエンジニアが集い、既存のトラックに搭載可能な自動運転システムを開発している。

オットーのシステムをトラックに装着すると3次元で360度全方位を捉えることができ、信号、車、歩行者など交通に関する情報をリアルタイムで正確に把握できる。

すでに、カリフォルニア州、アリゾナ州、ネバダ州でこのシステムのテストは行われているが、まだ安全性を考慮し原則、高速道路での自律走行のみに注力している。テスト走行は順調で、2016年10月にはすでにコロラド州高速道路を190kmを自律走行することに成功した。

この新たなAIが実用化されることになると2つのメリットがあると言われている。

1つ目は安全面に関するものである。

米国においてトラックは全車両の1%m、全走行距離の5%mだが交通死亡事故車の9%を占めている。毎年約4000人がトラックに関する事故で命を落としており、その大半は人為的な運転ミスによるものだと言われているが、AIの進化により、この人為的ミスを全てなくすことができるかもしれない。

2つ目は効率性に関するものである。

もしこの自律走行システムが完成すれば、事実上24時間運行可能になり、ドライバーも不要になるので人件費削減にもつながる。さらに将来的には運転席自体も不要になり、さらに1度で運べる積載量が増加する可能性もありうる。

つまり、自律走行の実現により、陸上物流分野で安全性と効率性が高まることになる。

注文してから30分で空から荷物が届く未来

世界の5大テックカンパニーの一角を占める米国アマゾン社もAIの力で物流革命を引き起こそうとしている。

アマゾン社は2013年にドローンを用いた、宅配サービスの開発を行っていることを公式に発表した。そのサービスではGPS機能をフルに活用して各地に点在するアマゾンの物流センターから半径16km以内の家までなら、注文後30分以内に玄関まで届けるという非常に画期的なものとなっている。

「Prime Air」と名付けられたそのサービスだが、英国と米国の一部ではすでに公開テストに成功し期待が高まっている。

もちろん、落下事故や衝突事故の危険性を指摘する声も上がっていたが、障害物を発見したら自動で自爆するAIシステムや、ドローンに向かって身振り手振りで自宅に着陸させるAI技術も特許化された。

アマゾンのこのサービスが実現すれば、配達分野の物流にとっても大きなイノベーションとなることは間違いない。

ユーザーの利便性をAI の力で高めようとする巨大テックカンパニーに習うことは多いのではないだろうか。日本でも近い将来規制緩和次第でドローンが空を飛び回っている光景が当たり前になるかもしれない。

<関連記事>
AIとドローンが物流を変える国内ネット通販事情

まとめ

海外の物流分野における最先端の事例を今回は3つ紹介した。AIが作る未来に心が踊ったのではないだろうか。陸、海、空、全てで加速するAI活用の波に乗ることが、今後の日本の物流企業の重要なターニングポイントになることは間違いないといえるだろう。


<参考>

  1. ロールス・ロイス、グーグルと共同で無人貨物船の開発を目指(ASCII)
    http://ascii.jp/elem/000/001/565/1565111/
  2. 英ロールス・ロイス、無人輸送船構想を本格始動 (ASCII)
    http://ascii.jp/elem/000/001/026/1026014/
  3. 無人船が示す未来、「全地球IoT網」のインパクト(日本経済新聞)
    https://www.nikkei.com/article/DGXMZO08847140X21C16A0000000/
  4. Remote and Autonomous ships The next step (ロールス・ロイス)
    http://www.rolls-royce.com/~/media/Files/R/Rolls-Royce/documents/customers/marine/ship-intel/aawa-whitepaper-210616.pdf
  5. UBER’S SELF-DRIVING TRUCK MAKES ITS FIRST DELIVERY: 50,000 BEERS(WIRED)
    https://www.wired.com/2016/10/ubers-self-driving-truck-makes-first-delivery-50000-beers/
  6. 元Google技術者の集結したOtto、トラックの自動運転に挑戦 (Tech Crunch Japan)
    https://jp.techcrunch.com/2016/05/18/20160517otto-founded-by-ex-googlers-is-bringing-self-driving-technology-to-trucks/
  7. ウーバーが買収「Otto(オットー)」の自動運転技術で、クルマは最大のモバイルになる (ビジネス+IT)
    https://www.sbbit.jp/article/cont1/33381
  8. UberのOtto自動運転トラックの最初の積み荷はビール5万本 (Tech Crunch Japan)
    https://jp.techcrunch.com/2016/10/26/20161025ubers-otto-self-driving-truck-delivers-its-first-payload-50k-beers/
  9. アマゾン、ついに「ドローン配送」を実施 (WIRED)
    https://wired.jp/2016/12/15/amazon-first-drone-delivery/
  10. 緊急事態措置に自爆…? Amazonのドローン配送システム、いよいよか (GIZMODO)
    https://www.gizmodo.jp/2017/12/drone-amazon-deli.html
  11. アマゾンの「Prime Air」、米国で初めてドローン配達の公開実験に成功(CNET)
    https://japan.cnet.com/article/35098750/
  12. Amazon drone deliveries may involve lots of shouting and frantic arm-waving (Digitaltrends)
    https://www.digitaltrends.com/cool-tech/amazon-drone-deliveries-gestures-patent/
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