AI(人工知能)は働き方改革や、生産性向上を推し進める企業において、なくてはならない存在となりつつある。しかし一方で、高度なAIを自社で開発するのは、多くの企業にとっては人的リソースも、資金面でも不足している。
しかしAmazonなどの大手は、これまで自社で開発してきたAIをAPIという形でレンタルを始めている。企業はこれを利用することで、迅速かつ的確に、そして少ない投資でAIを自社サービスに組み込めるようになった。
続きを読む企業にAIを導入すると企業にはどのような変化が起こるのか?
AI(人工知能)を企業で活用しようという動きが活発化しつつある。様々な展示会では、自社の商品やサービスの紹介に「AI」「人工知能」という言葉が表示されるブースが増えている。また、AI(人工知能)に関連する展示会、例えばリード・エグジビジョン・ジャパン社が主催する「AI・人工知能EXPO」は2、017年の初開催以来、毎年規模を拡大しており、2019年は233社が出展、48739人が会場に足を運んでいる。
出展している各社は自社開発のAIや、大手企業が開発したAIを活用して開発したサービスなどを紹介している。自然言語処理系AIであればチャットボットが数多くの企業からサービスとして紹介されているし、画像認識系AIを搭載したサービスとしては、工場内の製品検査工程で利用できるもの、OCRによる書類のテキスト変換サービス、顔認証による入店チェック・学校などの出席チェック、商品のピックアップなどが出ている。その他にも、音の特徴から打音法による非破壊検査をロボットにやらせようというソリューションなどもある。さらには、レーザーや太陽光の反射スペクトルから、水質検査を行うというサービスまで展開されている。
これらのサービスは、一部はRPAにも組み込まれ、単純作業の自動化・効率化に寄与しており、働き方改革が叫ばれている昨今、生産性の向上に寄与するものとして期待されている。つまり、人材不足が深刻化しているという状況で、企業が成長をするには単純作業のために割いている人的リソースをAIやそれを使ったRPAなどで代替し、人間は単純作業以外の仕事を行う様にすることが重要だということである。今後も、業績の伸長を目指す企業は、必要な部分にAIを導入していくこととなるのだ。
Amazonが始めたAIレンタル「AWS」
とはいえ、実際にAIを自前で開発するのは大変である。またAIを利用したソフトウェアやサービスが数多くあるとはいうものの、自社に合うようにカスタマイズするのは大変である。そこで、AIを使ったサービスを利用したい企業に向けて、AIを開発している企業はAPIとして自社で開発したAIを利用できるサービスを展開している。日本国内で利用できるものとしては、IBMのWatsonや、MicrosoftやGoogle、そしてNTTコミュニケーションズのCOTOHAが有名であるが、AmazonもAWSの一環としてAIを提供している。ちなみに上で先に紹介したチャットボットや画像処理系のサービスも、これらのAIをベースとして利用しているサービスは少なくない。ここではAmazonの提供するAIを紹介しよう。
最初に提供を始めたのはテキストの読み上げ機能である「Amazon Polly」、自然言語処理を行う「Amazon Lex」、そして画像認識を行う「Amazon Rekognition」である。現在ではさらに「Translate」「Transcribe」「Textract」「Comprehend」「Forecast」「Personalize」が増えている。
これらを使えば簡単に様々なAIを使ったサービスが構築・展開できる。例えば音声による自動対応を行うサービスを作りたい場合、「Transcribe」で音声をテキスト化し、そのテキストを「Lex」で処理した上で返事となる言葉をデータベースから探し出し、「Polly」でテキストを読み上げれば良い。これで、自動的に会話による対応が可能な音声チャットボットを構築できる。さらに「Translate」を組み合わせて使えば、外国人に対する対応も可能となる。
これらのサービスをクラウドベースのAPIとしてAmazonは有償で提供している。そして企業はこれを利用することで、高度なAIを安価で利用でき、かつ開発期間も大きく短縮して自社サービスに組み込めるため、必要なタイミングで必要なサービスを迅速に展開できるようになる。
意外!?「AWS」は幼稚園でも活用されている
AmazonのAWSを使ったサービスは様々なところで展開されているが、一例を紹介すると、幼稚園や小学校向けのサービスとして利用されている。開発したのは千株式会社であり、本業は卒業アルバムの制作や記念写真撮影、インターネットでの写真販売を手がける企業である。ここが開発したのは保育園・幼稚園を始め、学校などのイベントを写真撮影し、インターネット経由で24時間いつでも閲覧・購入が可能なサービス「はいチーズ!®」である。このサービスの中で、AmazonのAIは画像認識「Rekognition」が組み込まれ、子どもの顔を特定するのに利用されている。
数多くの写真の中から、自分の子どもが写っている写真をすべて選ぶというのはかなり大変な作業である。そこで「はいチーズ!®」では顔検索機能と導入し、検索性を上げている。利用者は事前に顔検索したい人物の顔写真を登録しておけば、システムが写真群の中から、その顔が含まれている写真をリストアップしてくれる。この顔検索機能にAmazonのAIが利用されているのだ。
実際にこの機能をAI部分まで含めてすべて自社で開発するのは難易度が高い。開発コストも相当な金額になるし、それだけの人材を集めるのも大変である。そこで、このようなすでに開発されているAIをAPIとして利用することで、安価にかつ短期間で新しい自社サービスとして展開することができるわけだ。
「AWS」のレンタル料金はいくらくらい?
ではこのAmazonのAIはどれくらいの金額で利用することができるのだろうか?AmazonのWebサイトで確認すると、AWSと同じく無料利用枠と従量課金制を用意している。例えばチャットボットの構築で必要な自然言語処理を行う「Amazon Lex」では12ヶ月間、毎月10000件のテキストリクエストは無料であるとしている。それ以降もそれほど高額ではない。1000件のテキストリクエストでは$0.75であるから、日本円ではだいたい80円($1=106円換算)でしかない。音声リクエストでも1000件だと$4でしかない。金額としては相当安いと言って良い。同じく自然言語処理を行うIBM Watson NLCでは、1000件のテキストリクエストに対しては392円であるので、約5分の1で利用できることとなる。そう考えると、他のAIサービスと比較しても破格の価格であるということが理解できるだろう。
ちなみに、他のAIと組み合わせたい場合、開発が面倒になるように思われるが、RAKUDO社が「AI interface」という、様々な企業のAI APIを組み合わせて開発するための開発ツールを提供している。興味がある方は調べてみると良いだろう。
ソフトバンクが始めたお掃除AIロボットレンタル「Whiz」とは?
もちろんAmazon以外にもAIをレンタルしている企業は存在する。その一つがソフトバンクの「Whiz」である。これはソフトバンクロボティクスが開発・提供するもので、オフィスや業務フロア向けのバキューム型AI搭載清掃ロボットである。「バキューム」とある通り、ゴミを吸い取る方式の掃除ロボットであり、カーペットやフローリングの床で性能を最大限に発揮する。最初に清掃スタッフが清掃ルートを手で押して学習させておけば、次回からは完全に自動で清掃を行ってくれる。もちろん清掃ルート状に障害物がある場合や人がいた場合には、停止する・避けるなどの行動を自動で取ることができる。
この掃除ロボットを保証サービス(月額4800円)付きで提供しており、そのレンタル価格は1台あたり、1年契約で月額10万4800円、3年契約だと3万9800円、5年契約だと2万9800円となる。長期で契約した方が安くなるわけだが、保証サービスを除けば、契約した全期間で120万円ほどを支払うこととなる。
これまでに実証実験では森ビル株式会社が六本木ヒルズ森タワーで、三菱地所株式会社がザ・ロイヤルパークホテル東京汐留で行っている。もちろんそれ以外の例もあるが、人の多いところでも問題無く使えたというのは大きい。現在ではビルの清掃などを請け負っているグローブシップ株式会社などが導入し、実際の現場で利用している。
ただし、段差があるところや傾斜があるところ、または屋外では利用できない。あくまでも床が平らな屋内のみが利用可能であり、ものによっては吸い込めない場合がある。この辺は通常の掃除機でも同じであるため、そこは利用者側で使えるシーンをしっかり想定しておく必要がある。
まとめ
AI(人工知能)の利活用は、成長を続けようとする企業にとっては、なくてはならないエンジンとなりつつある。その際に自社でAIを開発するのは大変だ。そこで、すでにAIを開発している大手は、自社開発のAIをクラウド上で利用できるAPIとして展開している。
その中でもAmazonはそのコストの安さで他のAI APIをシェアで圧倒している。これらを利用したサービスがすでに様々な企業からリリースされているので、マッチするものを導入すれば良い。もちろんぴったりマッチングするサービスがなければ自社で開発しても良いが、その場合もAIを一から開発する必要はなく、Amazonの展開するAWSから必要なAI APIをレンタルして利用すれば良い。とはいえAmazonにも得意な分野、不得意な分野があるので、他社が展開するものも含め、最適なAI APIを組み合わせることで、自社に必要なサービスを構築できるだろう。
<参考>
- AI 駆動のアプリケーションを構築します。(Amazon)
https://aws.amazon.com/jp/machine-learning/ai-services/ - Amazonの侵略。AWS AI ソリューション『Polly』『Rekognition』の凄さ(Ledge.ai)
https://ledge.ai/amazonai/ - 王者アマゾンを脅かす「クラウドAI」開発競争(東洋経済ONLINE)
https://toyokeizai.net/articles/-/210977 - AmazonがAIをレンタル!?どんなサービスなの?料金は?調べてみた(なんだか気になるはなし)
https://thedieiscast4.com/worldbusiness-amazonai-526 - [WBS] アマゾンの「AI」レンタルとは?幼稚園での意外な活用法!(ビジネスニュースで学び仕事とお金について考えるブログ。)
https://lovely-lovely.net/business/amazon-8 - アマゾン “御社にAI貸し出します”(NHK)
https://www.nhk.or.jp/ohayou/biz/20180419/index.html - 千株式会社
https://sencorp.co.jp/service/ - AI interface(RAKUDO)
https://www.ai-interface.com/ - ソフトバンクがAI清掃ロボット「Whiz」のレンタルサービスを開始、料金プランも発表(ロボスタ)
https://robotstart.info/2019/05/16/whiz-rental-price.html - Whiz事例紹介(ソフトバンクロボティクス)
https://www.softbankrobotics.com/jp/product/whiz/cases
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