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農業自動化におけるAI活用事例(海外)

農業従事者の減少が問題となっている一方で、農業は人工知能によって大きく進化を遂げている。今回は、農業自動化における人工知能の活用について、海外の事例を紹介する。

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農業に従事する人の数は、減少の一途をたどっている。そのような状況下で農業の生産性を向上させるためには、人工知能の活用が必要不可欠だ。今回は、農業自動化における人工知能の活用について、海外の事例を紹介する。

事例1:ビッグデータの活用で生産管理を効率化

アメリカでは、農業分野でのビッグデータの活用が広がっている。ミシガン州に拠点を置くFarm Logs社は、ベンチャー企業としてその取り組みを牽引する存在だ。同社は、人工衛星によって撮影された画像や気象データ、IoTデバイスなどのデータを組み合わせることで、人工知能による分析を行うサービスを提供している。具体的には、作物の成長の具合、土壌の栄養状態などを管理し、収穫量や時期の予測などを行うことが可能だ。

農業従事者は、同社が開発したスマートフォンアプリを利用することで、潅水や肥料の使用頻度といった作業内容を細かく記録することができる。スマートフォンの位置情報と衛星画像を組み合わせることにより、実際に行った作業の内容を自動で記録させることも可能だ。衛星画像をリアルタイムに解析し、過去5年分の情報と突き合わせることで、正確な記録ができるという。

同社のサービスは、アメリカの農家の3分の1が利用しているといわれている。2015年8月には、より細かい記録を行うことができる「Farm Logs Flow」というIoTデバイスを発表した。今後のサービスの向上や展開に、アメリカ国内では大きな期待が寄せられている。

さらに、ビッグデータを農業に活用するサービスを提供しているベンチャー企業としては、Farmers Business Network社がある。同社は農業従事者が抱えるジレンマに着目した。農業従事者は、より品質のよい作物を作るために、さまざまな種子や肥料を使用している。それには多額の費用がかかっている一方で、実際の地域や土地の性質に合わせた最適な利用方法に関する情報は少ない。確かに、大学の研究機関などが農業に関する実験を行い、その結果を公表してはいるが、それには企業の利益が反映されていることもある。そのため、実際には、それぞれの種子や肥料がどれほどの効果をもっているのか定かではないという問題がある。

同社は、こういった従来の不安を解消するため、農家が実際に使用している種子や肥料などの情報を収集してデータベース化した。そして、それぞれの農家の情報を比較したり、分析したりすることによって、農家の生産を向上させるための情報を提供することを可能にした。具体的には、収穫量を向上させるための方法や肥料を削減するためのヒントを提供したり、類似する土壌や種子を使用している農家どうしの生産性を比較した報告書を作成したりしている。これらの情報は、農業データベースとして匿名で共有される仕組みとなっている。このことにより、農業従事者は、実際の農業についてよりリアルな情報を手にすることができるようになった。

農家は、種子や肥料に多くの費用をかけているが、地域や土壌といった条件に適した情報を事前に入手できれば、無駄な出費をおさえることが可能になる。それができれば、農業による利益を向上させることにもつながるだろう。同社のサービスもまた、農業を効率化させるための「必需品」としてアメリカの農業従事者の間で評判を呼んでいる。

事例2:細かな農作業に対するロボット活用

農業への人工知能の活用としては、ロボットの利用にも注目が集まっている。従来の農業用ロボットは、機械的で単純な作業を行うことしかできなかった。しかし、最近は、人工知能によりロボット自身が作物の特徴をとらえ、その状況に合わせた作業ができるようになっている。

たとえば、カルフォルニア州のベンチャー企業であるBlue river technology社は、画像認証や機械学習を利用して、レタスの間引きを行う農業用ロボット「LettuceBot」を開発した。LettuceBotは、レタスの間引きを行うだけではなく、畑の雑草を除去することもできる。LettuceBotは、トラクターの後ろに取り付けて使用する。一見ごく普通の農業機械のようにも見えるが、その能力は従来の機械とは一線を画している。具体的には、トラクターを走らせると、後方部に取り付けられたカメラデバイスが画像認証を行い、植えられたレタスを識別する。レタスが密集している地点を見つけると、どのレタスを間引くべきか判断し、実際にレタスを間引いていく。同時に、雑草についても自動的に除去する。LettuceBotを使用することで、農薬の使用量を5分の1から10分の1までに減らすことが可能だという。

また、同社は、LettuceBotの技術をさらに発展させた「Zea」も開発している。Zeaは、3次元画像認識によって作物をより正確に測定することが可能だ。ZeaもLettuceBot同様、トラクターの後方に取り付けて使用する。3次元画像認識を利用すれば、トウモロコシのように高さがある作物でも、正確に分析を行うことができる。また、より詳しく植物の状態を観察し、それぞれの作物に適した対応をとることができるようになるという。

さらに、マサチューセッツ州のベンチャー企業Harvest Automation社では、複数のロボットが協同して働くことができる農業用のロボットを開発した。たとえば、同社が提供する農業用小型ロボットの「HV-100」は、鉢植えなどを運ぶことができる。複数のHV-100を使用すると、それぞれがセンサーを利用して互いを認識するため、動きを合わせて作業を行うことができる。たとえば、バラバラに置かれた鉢植えを隙間なく並べる、複数の鉢植えをベルトコンベアまで運ぶといった作業を同時にこなすことが可能だ。さらに、HV-100は、植物に水や肥料を与えるといった作業も行うことができる。HV-100は、主に、花の鉢植えを栽培する農家向けに提供されており、すでに複数の農家で活用されている。

農業は人工知能によって進化していく

農業従事者の減少が問題となっている一方で、農業は人工知能によって大きく進化を遂げている。この動きは、今後ますます盛り上がりをみせるはずだ。人工知能を活用することで、より効率的に食料を作ることができるようになれば、世界的な食料不足の問題を解決することにもつながるはずだ。今回はアメリカの事例を紹介したが、日本でもより積極的に人工知能の活用を進めるのが望ましいといえるだろう。


<参考>

  1. 米国における農業とITに関する取り組みの現状(JETRO)
    https://www.ipa.go.jp/files/000052085.pdf
  2. 農業分野におけるAIの活用事例13選(ITiger)
    http://itiger.jp/case/752.html
  3. 農家自身による情報ネットワークFarmers Business Networkが$15MをGoogle Venturesなどから調達 (TechCrunch Japan)
    https://jp.techcrunch.com/2015/05/20/20150519farmers-business-network-raises-15m-from-google-ventures/
  4. 米国のレタス生産 農業ロボット(機械人Z)
    http://kikaijinz.com/?p=3556
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