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「ジャパニーズAI」を世界に導く研究者たち

日本のAI研究と比べアメリカや中国のAI研究の勢いはものすごい。ただ特定の分野をみていくと世界と伍している研究者たちもいる。今回は日本のAI第一人者たちを紹介する。

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日本のAI(人工知能)は残念ながら、アメリカと中国の背中を見ている状態だ。もしかしたら周回遅れを重ねているのにさらに引き離されているのかもしれない。

ただ特定の分野をみていくと世界と伍している日本人の研究者たちもいる。日本を世界に導いてくれそうな、日本のAIの第一人者たちを紹介する。

大学AI研究

東京大学特任准教授、松尾豊氏

松尾豊氏の肩書はとても長い。

東京大学大学院工学系研究科技術経営戦略学専攻消費インテリジェンス寄付講座共同代表兼特任准教授、である。

日本のAIのほとんどすべての知見は一般社団法人人工知能学会の会員たちが持っているが、同学会が2016年に松尾氏に全国退会優秀賞を授与した。

松尾氏は東大に松尾研究所という機関を持っている。松尾研究所のミッションは「新技術開発」「共同研究」「ベンチャー創出」「コミュニティ形成」「教育」「論文と書籍の執筆」である。

真のAIをつくろうとしている

松尾研究所のミッションのうち新技術の開発では、「真のAI」づくりを目指している。キーワードはWEBマイニング。

この場合のWEBは、インターネット上のあらゆる情報のことを意味している。マイニングとは「鉱山の鉱物を掘り起こす」という意味である。

いまやWEB上の情報の数はほぼ無限で、それでもまだ膨張し続けている。その中から有益な情報を収集し、分析し、新たな価値を創造する、それがWEBマイニングである。

「情報収集」「分析」「価値の創造」といっても、いずれも世界最高レベルで実行しなければならない。そのためにはAIの選別能力を高め、分析能力を高め、洞察力を高めなければならない。そこが世界のAI研究機関との競争になる。

真の天才

松尾氏がAIをどのように見ているかを紹介する前に、松尾氏の略歴を紹介したい。1993年に香川県の高校を卒業し東大に進学した。専攻は工学部電子情報工学科だった。それからわずか5年で博士号を取得している。

2002年に独立行政法人産業技術総合研究所の研究員になった。独立行政法人は省庁の管轄だから、いわば「国家公務員のような人」になったわけである。

アメリカ留学ののち、2007年に東京大学大学院工学系研究科総合研究機構の若手育成プログラムスーパー准教授に就任する。

東大を卒業してわずか10年で東大の准教授になったわけである。まさに天才である。

生産ロボットのAI化はフライング気味に取り組め

松尾氏は日本の製造業やビジネス界に対し、AIへの取り組みは技術が成熟するのを待っているのではなく、フライング気味に進めていかないと世界に勝てない、と檄を飛ばしている。

この発言は、製造業におけるロボット生産について言及したもの。

松尾氏によると、医療現場における画像診断やセキュリティでの顔認証では、もはやAIが人間を超えている。つまりCT検査画像を正しく見る目は医師よりAIのほうが上回っているし、監視カメラで群衆の中から犯人を特定する目も警備員よりAIカメラのほうが優れているというわけだ。

ただロボットを使った生産だけは、AI化が遅れている。それはロボットにAIを搭載することにコストがかかりすぎているからだ。

そこで松尾氏は、深層学習(ディープラーニング)をより強化した深層強化学習を開発すべきであると考えている。

例えばグーグルは、ロボットに80万回「つかむ」練習をさせて「つかむ」を覚えさせた。この練習回数の多さはコストに直結する。

しかしディープラーニングのバージョンアップ版の深層強化学習なら、シミュレーションができる。シミュレーションとはいわば「実際には練習しないけど実際に練習したときと同じ効果が得られる練習法」である。

実はこれと同じことを、世界トップ棋士に勝った囲碁AIロボットも行っている。囲碁AIロボット2体に「AI囲碁対決」をさせたのだ。囲碁AIロボは実際に碁石を動かさないから、これもシミュレーションの一種である。

松尾氏は、シミュレーション技術を高度化させて、そのシミュレーションで鍛えたAIを産業ロボットに搭載すれば、日本のAIは世界で戦えると見ている。ただそのためには「フライング気味」でどんどん試行錯誤を繰り返さなければならないのである。

株式会社ABEJAのCEO、岡田陽介氏

AI関連企業、株式会社ABEJAは2012年に設立したばかりの従業員50人ほどの、新しくて小さな会社である。

しかしこの会社を、経産省が注目している。そしてトヨタやホンダにAI技術を提供している米エヌビディアもABEJAに出資している。

ABEJAの顧客はすでに大手製造業やイオンなど100社を超える。

AIプラットフォームを販売

ABEJAが顧客に提供するのは、AIプラットフォーム(基盤)である。

具体的には、例えば店舗を複数持つ企業であれば、ABEJAのAIを使えば来店客の行動をすべて可視化できるようになる。生産工場なら、「AIの目」で自動検品を行ったり、機械が自分で故障を予測したりすることができる。

グーグルに友人がいる

同社の創業者にして現CEOは岡田陽介氏。10歳からプログラミングを始め、高校生では文部科学大臣賞を受賞している。

大学卒業後企業に就職するがしばらくして渡米。そこでグーグルやフェイスブックのエンジニアたちと知り合いになり、AIやディープラーニングと出会った。その後帰国してAI企業、ABEJAを設立したのである。

AIがつくる未来を見据える

その岡田氏は、あるサイトのインタビューで次のようなことを言っている。

AIをやりたいのではなく、未来を創造したい

AIをこねくり回すのではなく、AIで問題を解決する

この言葉を直訳すると「AIは目的ではなく手段」となるだろう。岡田氏はAIの未来ではなく、AIが変える未来を見据えているのである。

まとめ~天才が必要

最初に紹介した松尾氏はいわば「東大生まれ東大育ちの東大教官」である。2番目に紹介した岡田氏は10歳でプログラミングを初めてAIの寵児になった。

いずれも注目すべき人物である。AIという新しい時代の産業は、この2人のようなAI研究者を必要としているに違いない。


<参考>

  1. 松尾豊プロフィール
    http://ymatsuo.com/japanese/vita.html
  2. 小泉進次郎、人工知能を語る(対談)内閣府大臣政務官 小泉進次郎氏、東京大学大学院 松尾豊准教授(日経ビジネス)
    http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/278917/082000001/?P=2
  3. Missions & Activities(松尾研究所、東大)
    http://weblab.t.u-tokyo.ac.jp/about/
  4. 【東京大学大学院・松尾豊 特任准教授インタビュー】AI応用ロボット、日本企業は得意なはず(METI Journal)
    https://meti-journal.jp/p/122
  5. けん引する若きベンチャーたち(METI Journal)
    https://meti-journal.jp/p/257
  6. 起業家インタビュー株式会社ABEJA | 代表取締役CEO兼CTO  岡田 陽介 (Amateras)
    https://amater.as/founder-interview/ai-abeja/
  7. IoT×BigData×AIによる新時代のビジネスエコシステム(ABEJA)
    https://abejainc.com/ja/services/
  8. 会社情報(ABEJA)
    https://abejainc.com/ja/company/
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