農業自動化におけるAI活用事例(国内)

具体的にどのようにして農業へAIが導入されていっているのか。アメリカのHarvest Automationによる温室栽培向けの自動化AIと日本のパナソニックによるトマトの自動収穫ロボット、クボタの自動耕運機を例にとって紹介する。

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現在、日本をはじめ世界で農業従事者の減少と高齢化が問題となっており、それに加えて経験によって培われる知識を要することから、この課題は年を重ねるごとに肥大化している。それに伴ってダムをはじめとしたインフラも老朽化していっているため、その点検を行わなければならないという課題も大きくなりつつある。農林水産省によると、日本における労働従事者の数は8年前(平成22年、2010年)までは260万人であったのだが、昨年(平成29年、2017年)は181万人と徐々にその人数は減少中だと報告している。また、作業者の平均年齢は66歳~67歳で第一次産業の中で主要な位置を占める農業の存続危機が以上から見て取れる。

そこで考えられた解決策が“AIの導入”だ。現在、世界中で農業へのAI適用が研究・推進されていて、GPSや画像認識といった技術を利用した無人走行農機の開発や収穫作業を自動で行うロボット等の開発が進められている。日本では「第4回 未来投資に向けられた官民対話」で「2018年までに圃場(作物を栽培する田畑)内での農機の自動走行システムを市販化し、20年までに遠隔監視で無人システムを実現できるよう制度整備などを行う」という方針を取り決め、今後より一層の開発促進が期待できそうだ。

では、具体的にどのようにして農業へAIが導入されていっているのか。アメリカのHarvest Automationによる温室栽培向けの自動化AIと日本のパナソニックによるトマトの自動収穫ロボット、クボタの自動耕運機を例にとって紹介する。

アメリカが開発した協力型花卉(かき)栽培マシーン

アメリカの企業であるHarvest Automationは農園や温室での栽培作業を自動化させる花卉(かき)栽培農家向けのHV-100の開発に取り組んでいる。
このHV-100は農園や温室の中を自律的に移動し、水やりや農薬・除草薬・肥料等の散布をすることが可能で、企業によると、HV-100によって労働力不足の農業をサポートし、生産性を高めることができるであろうと発表している。

さらに、このロボットはただ自動的に散布を行うだけでなく、AIにとって得意な深層学習を行うことによって、人間にはできない作物の状態解析や土壌の解析をする。また、このロボットの大きな特徴である複数のロボット同士による協力型の作業に取り掛かり、センサーを使いながら互いの可動域に侵入しないよう効率的に作業を行う。
これにより、複数の鉢植えを別の場所に置いたり、隙間なく複数の鉢植えを設置したりベルトコンベアに運んだりと、今まで従来では人間の手で行ってきた一連の作業を自動的に行うことによって生産費用や労働費用の削減に大きく貢献する。このロボットは既にいくつかの農家で導入が始まっており、成果も挙がっている。これがより普及されると、その農家は少ない費用で別の農作物に取り組むことが容易となったり、旬の季節になると従来より飛躍的に収穫高が高くなったりと数多の恩恵が農家に与えられるのである。

パナソニック発の超現代的トマト栽培マシーン

日本を代表する大企業のパナソニックもAI搭載の農業ロボットに力を入れている。現在パナソニックはAIを使ったトマト収穫ロボの開発を行っており、距離画像センサーと搭載カメラによってそのトマトの色や形、場所を特定し、適切な収穫時期をAIが判断した上で自動的に収穫を行う。また、収穫を行う際、収穫するトマトの表面を傷つけないよう、果実と花梗を引きのばし、離層で切断する仕組みを取り入れている。もちろん夜間にも稼働させることができるので、昼間の作業負担や労働における効率性の向上にも一役買うのだ。

このロボットは2017年に開催された「2017 国際ロボット展」で出展され、大きな注目を集めた。パナソニック生産技術本部ロボティックス推進室の安藤氏は「距離画像センサーによって、赤いトマトだけを収穫し、緑色のトマトは収穫しないといったことが可能である。これにAIを導入することで従来は約80%の収穫率だったものを96%にまで向上させることができた。今後も深層学習によって、収穫率はさらに高まることになる。何度もロボットが自動的に移動して、すべてを収穫できることや、夜間の作業も行うことができるため、収穫量を増やす効果を期待することができる」と言及している。収穫を行う際の所要時間は6秒で最大連続稼働時間は10時間となっており、選別から収納までの行程にこのロボットが大きな貢献をもたらしてくれる。

“スマート農業”を実現させるクボタ初の自動耕運ロボ

産業機械生産会社のクボタは圃場の広さや形状を分析し、そのデータを用いて耕運機の無人走行技術の研究を行なっている。このロボットを活用する際、まずは人間がこのロボットを運転して農地を走行し、その間搭載されているAIはGPSの位置情報からその農地の地図情報を作成する。運転と同時に行われている地図生成作業が完了した後、そのデータから最適な作業経路を見出し、機体の制御システムと連携をとってエンジンの回転数や変速などを自動的にコントロールすることによって無人走行を可能とするのである。

クボタが掲げている「スマート農業」(テクノロジーを駆使して作業効率化を目指す農業のあり方)は農機の自動化によって農業ビジネスを支援している。
スマート農業における推進活動の先陣に立つ取締役専務執行役員研究開発本部長の飯田聡はクボタの公式サイトでこのように語っている。

「日本の農業は農業人口が大幅に減少し高齢化する一方で、5ha以上の担い手農家と呼ばれるプロ農家が増加、農地は集積し大規模化しつつあります。全耕地面積の内、担い手農家の占める割合は現在の58%から2023年には80%を占めるようになるとも言われています。農地集積が加速し労働力が減少する状況の中、農家は多数圃場の適切な管理、収量向上や高品質化、生産コストの削減、生産品の高付加価値化など多様な課題を抱えています。クボタは、データ活用による営農支援と農機自動化による超省力化を柱としたソリューションの提供によって、新たな価値の創造を目指しています。」 (クボタ飯田聡) 

まとめ

人工知能が搭載されたロボットが繰り出す機能によって今までは人間の手で行われてきたさまざまな作業が自動化され、さらにはそれをも上回る、人間だけではできないような作業も実現されつつある。

2016年に農林水産省は人工知能未来農業創造プロジェクトを開始し、これまで経験や口伝によって伝承されてきた老舗農家の技術や判断を形式知としてリストアップさた。

また、業者の視線と行動を観察することによってAIがそれらを学習教材として学ぶことで、次世代を担う未来の農家の学習に役立たせる活動も行われている。最新テクノロジーによって暗雲たちこめていた農業の世界が段々と活性化していき、徐々に今まで抱えていた大きな問題が縮小していくことであろう。


<参考>

  1. 独立行政法人情報処理推進機構 AI白書編集委員会 編『AI白書 2017 人工知能がもたらす技術の革新と社会の変貌』(2017年、アスキー総合研究所)
  2. 米国における農業とITに関する取り組みの現状 (JETRO)
    https://www.ipa.go.jp/files/000052085.pdf                                           
  3. Harvest Automation
    https://www.public.harvestai.com
  4. データ活用と農機自動化による営農支援ソリューションでの新たな価値創造 (Kubota)
    https://www.kubota.co.jp/globalindex/precision-farming/02.html
  5. パナソニックから夜に自動でトマトを収穫するロボット (PC Watch)
    https://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/1094057.html