訪問客に最初に接触する受付担当者は「企業の顔」といわれる。なぜなら、人の顔がその人の第一印象を決めるように、受付担当者の印象は初来訪者に大きなインパクトを与えるからだ。
受付担当者の受け答えがよいと、来訪者は「いい会社だな」と感じるようになるし、受け答えがまずいと「なっていない企業だ」と思われてしまう。だから優良企業は受付担当者を厳選し、おもてなしを強化している。
その重大業務をAI(人工知能)に任せてよいのだろうか。AIは確かに賢いが、しょせんはコンピュータでありロボットにすぎない。AI受付は、冷たい印象を来訪者に与えてしまうのではないだろうか。
しかしその心配はないようだ。むしろAI受付には、人による受付にはない利点がある。
AI受付のメリットと仕組みを解説し、実際のAI受付システムを紹介する。
続きを読むAI受付の特徴と仕組み
AI受付とは、企業の受付業務を担うAIのことで、ディスプレー型やアンドロイド型などがある。アンドロイドとは人の外観に似せたロボットのことで、その代表格は鉄腕アトムである。
ディスプレー型とアンドロイド型は外観はまったく異なるが、特徴や仕組みは似ている。
AI受付の仕組みを紹介する前に、そもそも人間の受付担当者が行っている業務内容をおさらいしておこう。受付業務には第一義的な仕事と副次的な仕事の2種類があり、どちらも重要である。
第一義的な仕事とは、受付担当者が最低限行わなければならない内容である。そして副次的な仕事は、第一義的な仕事に付加価値を与えることである。
AI受付システムの開発企業も、「第一義的な仕事」だけでなく「副次的な仕事」までできるAIを目指している。
AIがこの5つの仕事をどうやってこなしているのか、詳しくみていこう。
AIはどのように来客者を迎えるのか
AIは来客者の迎え入れが得意だ。
AI受付にはカメラとセンサーが搭載されていて、来客者が現れたことを検知すると同時に、誰が来たのかまでわかる。
AIの人物を特定する能力はすでに人間の脳力を超えていて、例えば監視システムに搭載されたAIは、数万人のなかから1人の人物を探しだすこともできる。
人間の受付担当者は、顔や印象などから得意先や連客や社長の友人などを記憶する。だから常連の来訪者がなんらかの意図を持って変装をして現れたら、人間の受付担当者はその変装を見破れない限り、初見者への対応を取るだろう。
しかしAIは印象では来客者を識別しない。AIは人の顔を認識するとき、左右の眉毛の距離や鼻と口の位置などの客観データを使う。さらに優れたAIになると、サングラスをした人物の特定も瞬時に行うことができる。
AIはどうやって来客者を面会希望相手に取り次いでいるのか
企業の訪問者の大多数は、その企業の従業員や経営者に会いにくる。したがってAI受付は、来客者を正確に面会希望相手(社員や経営者)に取り次がなければならない。
AIはパターン認識が得意なので、来客者が何回か同じ社員に会いに来ていれば、来客者から面会希望相手の名前を告げられる前に「いつも面会する社員」に取り次ぐことができる。
AIはどのように来客者に社内を案内するのか
大企業の場合、自社ビルを持っていたり、オフィスビルの複数フロアを使っていたりする。その場合、来客者はどこに行ったらいいのか迷う。
またビル内に喫茶店やコンビニがあれば、来客者は訪問先企業の受付担当者にそれらの行き先を尋ねるだろう。
そこでAI受付もビル内のことについて知っておき、それを来客者に案内できなければならない。
AIの音声認識を使えばそれも可能だ。来客者がAI受付に「喫茶店に行きたい」と話しかければ、AI受付は喫茶店がある階を教えることができる。
AIはどのようにして来客者によい印象を持ってもらうのか
AI受付の第一義的な仕事は、ディスプレー型でもこなすことができる。しかし、あえてコストをかけてアンドロイド型のAI受付を置くメリットは、エンターテイメント性を追求しているからだ。
人間そっくりのアンドロイドが受付にいれば、来客者は驚くに違いない。来客者にとってはちょっとした「未来体験」になる。
またAI受付のなかには、外国語の音声を理解し、外国語で話すこともできるものもある。これは外国人来訪者から歓迎されるはずだ。
外国語を話せる人材を受付に置こうとすると、プラスアルファの人件費が発生するだろう。外国語を操る特殊なスキルを持つ人材には、外国語を話せないスタッフより高い賃金を支払わなければならないからだ。しかも多言語を操ることができる人材を確保することは困難だろう。
AIはどのようにスピーディーかつ正確に処理して来客者のビジネスをサポートするのか
AIは音声認識や顔認識を瞬時に行う。人の受付担当者でも、優秀な人材であれば常連客と初見の客を瞬時に見分けるが、その域に達するには相当な訓練が必要になる。その優秀な受付担当者が退職してしまったら、次の受付担当者が育つまで「受付のパフォーマンス」は落ちることになる。
AI受付であれば仮にコンピュータが故障しても、代替機に置き換えるだけで済む。スピーディーかつ正確な受付業務は、来客者のビジネスもサポートするだろう。
AI受付のメリット
AI受付の最大のメリットはコストダウンだろう。人の受付担当者を置かなくてよくなるので人件費を削減できる。企業がAI受付を置く場合、AI受付の開発会社からシステムを購入したりレンタルしたりすることになるが、その料金は人件費よりも低く設定してある。
またAIには自己学習能力が備わっているので、初期設定や初期学習を終わらせれば、あとはAI受付自身がスキルアップしていく。つまり社員教育コストも不要になる。
そのほかにもAI受付には、「外国語で対応できる」「新しい技術の導入に積極的であることをPRできる」「おもてなし効果」といったメリットを期待できる。
「AI受付嬢」の実力
株式会社レッツ・コーポレーション(本社・名古屋)が開発した「AI受付嬢」は、ディスプレー型のAI受付システムである。
AI受付嬢は、初見の来訪者が現れると名刺の提示を求める。AI受付嬢は来訪者の名刺をスキャンする一方で、内蔵カメラで来訪者の顔を撮影する。これでAIは、名刺のデータと初見の来訪者の顔画像データを記憶する。
名刺のスキャンは来訪者が行うが、所定の位置に名刺を置くだけなので複雑な操作は不要である。
名刺のスキャンと顔撮影が終わると、AI受付嬢はディスプレーに部署名や担当者名を表示する。ディスプレーはタッチパネル式になっていて、来訪者は画面を操作して面会希望相手を探す。面会希望相手が特定されると、AI受付嬢と連動した内線電話を使って面会希望相手を呼び出すことができる。
名刺と顔を登録した来訪者が2度目にその会社に現れたとき、AI受付嬢はその来訪者を認識することができる。AI受付嬢はその来訪者に、前回と同じ社員に面会を希望するのか尋ねる。面会の取り次ぎがスムーズになるわけである。
「協栄アイ(AI)」の実力
協栄産業株式会社(本社・東京都渋谷区)が開発した「協栄アイ(AI)」は、アンドロイド型のAI受付システムだ。
アンドロイドは女性をモチーフにしていて、来客者が現れると丁寧にお辞儀をして挨拶する。協栄アイはさらに、内線で面会希望者を呼び出したり、ビル内の案内をしたりすることもできる。天気情報も教えてくれる。さらに、日本語のほか英語、中国語、韓国語も操る。
協栄アイも一度やってきた客の顔を「忘れない」。
アンドロイドを開発したのはサンリオグループの株式会社ココロ(本社・東京都羽村市)で、恐竜ロボットなども製作している。
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1801/17/news124.html
まとめ~無人システムだが温かい
企業によっては、受付窓口にわざわざ人を置いていない。社屋の入口に内線電話機と電話番号表だけ置いておけば、来訪者が内線電話機を使って面会希望者に電話をかけることができるので用は足りる。
この無人システムでも最低限の受付業務は行えるが、味気ないことこのうえない。
もちろんAI受付も無人システムだが、AIのコミュニケーション機能によって「無人さ」が減っている。
そしてもしかしたら、企業の来訪者は、AI受付システムを使うことを楽しみにするようになるかもしれない。「人間味」を出せるかどうかが、AI受付の今後の課題かもしれない。
<参考>
- 顔認識/名刺認識受付システム AI受付嬢(レッツ・コーポレーション)
http://www.lets-co.jp/lets/uketsuke/ai-uketukejo.html
http://www.lets-co.jp/lets/top/gaiyo.html - 受付・案内ロボットシステム(協栄産業)
https://www.kyoei.co.jp/product/division/robot/service-robot.html
https://www.kyoei.co.jp/company/information.html - kokoro(ココロ)
https://www.kokoro-dreams.co.jp/
https://www.kokoro-dreams.co.jp/rt_rent/
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