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画像認識でAIを活用する海外の犯罪対策事例

この防犯カメラたちはただ映像を記録や転送しているだけなのだろうか。もしからしたら違うのかも知れない。人工知能「AI」技術を駆使した防犯カメラが活用されつつあるのをご存知だろうか。

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最近街を出歩くと防犯カメラが至る所に設置されていることに気付く。年々その数は増してきており路上から電車の車内、更にはビル内の各所や店舗の中にも見られる。オフィスに設置している企業も多いだろう。

この防犯カメラたちはただ映像を記録や転送しているだけなのだろうか。もしからしたら違うのかも知れない。人工知能「AI」技術を駆使した防犯カメラが活用されつつあるのをご存知だろうか。

防犯カメラが捉えた映像をAIが解析、データベースとリンクするというものだ。ディープラーニングというAIによる画像解析の技術が応用されている。

さらにデータベースは一個人や一企業が単独で保有しているのもに限られない。ビッグデータと呼ばれるインターネット上にある膨大なデータとも連携しており、多くの人々が普段利用しているSNSのデータも含まれる。さらには公にされていないシークレットデータとも連携している。

中国で展開されるAIを駆使した最新の防犯対策

中国では「ポリスクラウド」というシークレットデータの構築が進んでいる。すべての国民の犯罪歴、病歴。旅行の予約記録やオンライン決済の履歴、さらにはSNSのコメントまで多くにわたるデータベースの構築が目的だ。

着目すべきはこれらのデータが顔認識によって得られる「フェイスデータ」とリンクされつつあることだ。

同時に「スマートアイ」というプロジェクトが進行している。フェイスデータをシェアし、犯罪防止に役立てるというものだ。もともとは人の目による相互監視を念頭にしたプロジェクトだったが、AIの登場で大きな変化をしている最中だ。

フェイスデータの取得方法はいくつか考えられる。大きく三つ述べると、「防犯カメラからの映像」「ビッグデータ」「シークレットデータ」からである。

これらの全てにAIにおけるディープラーニングが活用されている。防犯カメラから得た情報をディープラーニングで解析し、例えば性別や体格、年齢などの情報を推定する。もちろんフェイスデータが主となる解析対象であり、これらのデータを連鎖的に顔と名前を公開しているSNSのデータへとリンクし、公にされている身分証のデータへと次々にリンクすることを目的としている。

とあるレポートによると集合住宅を含む住宅における犯罪の90%は住民として登録されていない者によって引き起こされるとされる。

防犯カメラにおけるAIを活用した顔認識システムは登録住民と非登録の者を識別し、マークすることも得意とする。広く解釈すると「スマートアイ」に情報として登録されていない者はマークすべき対象ともいえる。空港やホテルなど外からの来訪者が多い場所にも積極的に防犯カメラは導入されている。

また行動パターンから不審な動きをみつけマークすることもできる。これらは万引きから、強盗、テロ防止まで広く応用できる。

イギリスにおける顔認識システムの活用による逮捕劇

顔認識技術が犯罪者の確保に使用されたケースもある。

2017年5月にイギリスではじめて顔認識システムを活用した犯罪者の逮捕劇があった。サウスウェールズで2015年頃から導入されている「NeoFace Watch」と呼ばれる日本のNEC社が開発した防犯カメラシステムの働きによるものだ。

いくつも配置されたカメラによって人混みの中から指名手配犯や、行方不明者を登録データをもとにAIを用い識別するプログラムである。

逮捕劇の詳細は公開されていない。これは既に顔認識システムが実務レベルで稼働し、様々な利害関係が生まれていることを意味するだろう。

顔認識システムの商業利用の未来

顔認識システムが商業的に利用されようとしている例もある。野球場やサッカー場、コンサート会場やイベント会場での導入だ。

導入例は多々考えられるが、まず第一にこれらの会場に共通しているのはチケットが必要とされることだ。チケットの転売が問題として取りただされる中、顔認識により購入者を入り口で識別できれば転売を防ぐことができる。あらかじめ決まっている席のグレードの振り分けにも活躍する。

防犯カメラのAIによる顔認識と組み合わせることでフーリガンのようなマナーが極端に悪い来場者をフェイスデータと適合すれば、リストに入れて注意を促すことができる。出口で顔認識を再度行い、表情から感情を分析することで、満足度を調査しデータを取ることができる。

この感情を分析する感情認識の技術を応用すれば、様々な店舗における顧客満足度の調査への活用が将来的に見込まれる。

店舗に防犯カメラがあることは既に一般化しており、防犯カメラから顧客の表情を読み取り解析できれば様々なデータが取れるだろう。ラーメン屋の大将が一人一人に目を配らせ様子を頭に焼き付けるという作業を本部のAIで自動化できる。人の手で行なっていると膨大な作業だが、ある程度自動化して振り分けることによって極端に不満足または満足な顧客を振り分けられる。

もし企業のオフィスに導入した場合、防犯カメラの映像から業務外の行動や、飲酒や喫煙、不正行為を自動的に検出するといった応用が近々実現できるかもしれない。

まとめ

情報社会において情報が適切に管理されるかは重要な争点である。AIによる顔認識システムはただ街を歩いているだけ、ただビルの中に居るだけで人々の情報を得ることを可能とする。

これらは一見すると恐ろしいことであるが、ネット上に限らずリアル社会でも適切な行動をしていれば問題のないことである。「見ざる言わざる聞かざる」や「ポーカーフェイス」のような古典的な技術を活用しつつ行動すれば、AIが勢力を伸ばす社会はより安全で快適な世界になる。AIは情報革命後の世界の申し子かもしれない。


<参考>

  1. British police use facial recognition tech to arrest a man (Mashable)
    https://mashable.com/2017/06/07/south-wales-police-facial-recognition-technology/
  2. What Are the Implications of Facial Recognition Security at Stadiums? (BizTech)
    https://biztechmagazine.com/article/2018/04/what-are-implications-facial-recognition-security-stadiums
  3. In China, facial recognition is sharp end of a drive for total surveillance (Chicago Tribune)
    http://www.chicagotribune.com/news/nationworld/ct-china-facial-recognition-surveillance-20180107-story.html

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