AI(人工知能)をコンビニで活用しようという動きが活発化している。無人レジの導入により、人手を削減しながら存続していく方向を目指していくものと考えがちだが、実は大手3社のAI導入は各社各様である。今回は無人レジの仕組みを解説するとともに、大手コンビニがどの様にAIと向き合っているのかを詳しく紹介しよう。
続きを読む自動で会計金額を行うスーパーワンダーレジとは
2016年に発表され、世界的にも話題になったアメリカAmazonの運営する無人店舗「Amazon GO」。まだシアトルの店舗だけではあるものの、これを期に、日本でもコンビニを中心に、各社が無人レジをはじめとするAI(人工知能)の活用に参入してきている。
まず、無人店舗の実証実験を行ったのがJR東日本である。2017年11月20日~26日の5日間限定で、大宮駅で行った無人店舗の実証実験では、サインポスト社のAI搭載無人レジ「スーパーワンダーレジ」が利用された。
このシステムでは顔認証とSuicaなどのICカードを連動させる。来店客はまず入り口のゲートで設置されている機器にSuicaをかざして入場する。この際、カメラによって顔認証が行われ、Suicaと来店客の顔が紐付けられる。
入店時の手続きが終わると、実際に買い物を行う。商品を手に取り、買い物カゴや自分のバッグに入れていくだけだ。店内に配置されたカメラが、「顔」と「商品」とを紐付け、購入予定リストに商品の種類と数が追加されていく。棚に戻せば購入予定商品一覧から自動で削除される。これはオンラインでのネットショッピングであれば、ログインした後に買い物カゴに商品を追加したり、削除したりするのと同じ意味合いを持つ。
つまり買い物は商品棚から必要なものを取り出すだけであり、これは「Amazon GO」と同じ仕組みである。当然のことながら、商品を買い物カゴに入れるということは、商品棚に残っている商品の在庫カウントも自動で行われる。来店客は出口で決済用の機器にSuicaをかざして決済を行う事になる。現金は一切使えないICカード専用のシステムである。
この仕組みの優れている点は、会員登録が必要ないところだ。SuicaなどのICカードさえあれば、誰でも利用することができる。「Amazon GO」の様な、アカウント登録は不要である。
そして大宮に続いて、2018年10月17日からは赤羽駅にて実証実験を行った。今回は5・6番線ホームのKIOSK跡に実証店舗を設置し、平日のみの10~20時で行った。店舗面積は約21平方メートルだが、レジ面積を省略できたため、飲料、ベーカリー、菓子類など140種類の商品を陳列した。
そして大宮の時と異なるのは、同時に複数の来店客が決済を行えるようにした点だ。大宮の時には一人ずつしか決済を行えず、入店待ちの行列ができてしまったが、今回はそれを同時に3人まで入店可能とし解消しようとした。
そして今後の展開としては、実用化に向けての精度の向上はもちろんのこととして、在庫管理や物流の部分である「ロジスティックス」、実際の決済までの流れなど「オペレーション」、在庫の補充や店舗として商品のならべ方を考える「陳列」、そしてトラブルが発生したときのビジネス面の改良などが必要となる。
ここでAIが活用されているのは「顔認証」と「商品の確認」の部分であり、「画像認識AI」の活躍する分野である。だが、実はこのロジスティクスの部分にもAIを活用しようという動きが小売店では活発化している。そしてそれは後述するコンビニ業界でも同様である。
大手コンビニにおける活用法とは?
大手コンビニ各社は、それぞれでAIに対しては異なるアプローチを採っている。それを紹介していこう。
商品開発と在庫管理を手助けしてくれる?セブンイレブンでの活用法とは
セブンイレブンを展開するセブンアンドアイホールディングスは、三井物産と共同でAIを取り入れたコンビニの開発を進めています。同社の取り組みは無人レジではなく、AI技術を商品開発と在庫管理に活用する。実際に小売店では在庫管理は発注業務にAIを活用するという流れが加速している。
各店舗の発注と在庫管理をAIが行う様になれば、コンビニは商品の配送というロジスティックスにも手を入れる必要がある。のみならず、最終的には工場での生産や材料発注にまで遡って調整を行う事になるため、グループ全体での業務効率化が望めるのだ。そのため、無人レジよりもまずはこちらに手を付けたのだろう。
一方で、店舗の負担軽減も全く行っていないわけではなく。ここのところ、人材確保が難しくなり、店舗オーナーの負担が急増。東大阪の店舗では24時間営業を取りやめたりするなど、これまでのフランチャイズモデルにほころびが見えてきている。
実は韓国のセブンイレブンは、2017年5月に新しい決済方法の試験を行っている。場所はロッテワールドタワーである。韓国では生体認証技術が進んでいるため、静脈認証決済を用いた決済方法を、韓国富士通、富士通フロンテックが「手のひら静脈認証装置『PalmSecure™』を提供」するという形で行っている。国内では自治体による導入が進んでいる製品で、端末の操作権限を持つ個人を認証するのに使用されている実績があるものだ。
また無人レジに対応する取り組みもある。実は商品を絞り込めば 「自動販売機」化が可能だ。そこで。セブンイレブンや、後述するファミリーマートは、自動販売機での商品販売でAIを活用しようともしている。
少人数で営業できる?ローソンイノベーションラボとは
ローソンも負けてはいない。大手コンビニチェーンの中では具体的なAIコンビニの実用化を計画している。
ローソンは2017年10月に実証実験をおこなうための「ローソンイノベーションラボ」を東京都港区に設置。無人レジによってスタッフの負担を減らし、少ない人員で営業をおこなうことが目的である。またAIコンビニの実用化によって入店者数、来店客の属性、手に取った商品、決済した商品など、数多くの情報を集めることができ、マーケティング分析に活かすデータの取得も可能となる。これらのデータは発注や在庫管理の高度化にも直結するため、大変重要なものだ。
ローソンではこれらを実現するためにスマホ、ICタグ、RFIDを用いている。来店客はまず専用アプリを用いて商品ごとにバーコードを読み取る。商品にはRFIDタグが付いているため、在庫管理と一体化されている。
店内の案内はデジタルサイネージと、コンシェルジュと呼ばれるロボットが行う。お薦め商品などもすべてロボットが案内してくれる。
決済は交通系ICカードやQRコード決済などキャッシュレスで行い、LINEのメッセージで電子レシートを受領することができる様になっている。また、商品カゴを機械に入れて操作すれば、レジロボが袋に詰める作業も行ってくれる。
すべての商品にRFIDタグを取り付ける必要があったり、来店客がバーコードを読み取る必要があったりと、正直「Amazon GO」や「スーパーワンダーレジ」と比較すると見劣りがする。しかし、精度の面を考えるとすぐにでも展開できるだけの状態になってきており、大変現実的なアプローチをしていると言って良いだろう。
人の仕事を補助してくれる?ファミマミライとは
ファミリーマートもAIコンビニの実用化に向けて動いている。同社はAI技術を駆使したコンビニを「ファミマミライ」と名付け、コンセプトムービーを発表している。
その基盤となっているのはLINEが開発しているAIプラットフォーム「Clova(クローバー)」である。とはいえ、Clova自体はAmazonのAlexaやGoogle Homeと同じ様な機能しか持っていない。そこで、ファミリーマートの店舗で活用できる様にデータを集めてAIを学習挿せる必要がある。コンセプトムービーの発表のみというのは、今後、これに必要なデータを収集するという宣言のようなものと受け止めても良いだろう。
ではコンセプトムービー内ではどのようなことが実現できているのだろう。客に対して近くのファミリーマート店舗を通知し、商品情報や割引情報を商品棚のディスプレイから得られるようになる。更に商品の在庫管理を自動で行い、LINE Payで支払を行う。基本的には無人レジに必要な要素を盛り込んではいるが、新規性はあまりない。
またファミマミライが他のAIコンビニと大きく異なるのは、無人店舗ではない点である。あくまでもAI技術を駆使することで、人間の仕事をサポートするのだ。
まとめ
「Amazon GO」やJR東日本の「スーパーワンダーレジ」で始まった店舗の無人レジ開発競争。まだまだ課題は多いが、RFIDタグを利用することで現実的な導入を見据えるローソン。「AIは人間のサポート」と位置付けるファミリーマート。そして在庫管理や物流面での改善をAIに託すセブンイレブン。コンビニ各社はそれぞれが独自の切り口でAI(人工知能)の活用を進めている。
今後、コンビニは人材不足を解消する方法として、さまざまな取り組みを進めていく必要に迫られている。そこにAIをどの様に活用していくのかが、各社の将来を大きく左右すると考えられる。
<参考>
- 日本でのAIコンビニ開発は進むか?Amazon GOとの違いは?(ORANGE POS)
https://orange-operation.jp/posrejihikaku/pos/13635.html - AIを活用した無人コンビニの実証実験をJR東日本が発表、赤羽駅のホームにて10月17日より(ロボスタ)
https://robotstart.info/2018/10/02/jr-superwonder-regi.html - 赤羽駅、AIを活用した無人決済店舗が無事終了。施策を通じてどのような効果をもたらし、どんな課題が見えたのか?(ModuleApps)
https://moduleapps.com/mobile-marketing/14469iv/ - AI活用「コンビニのどこから始める?」(商業会ONLINE)
http://shogyokai.jp/articles/-/1373 - 「AIでこう変えよう」日本のコンビニ(商業会ONLINE)
http://shogyokai.jp/articles/-/1381 - 手のひら静脈認証 > 導入事例(富士通)https://www.fujitsu.com/jp/solutions/business-technology/security/palmsecure/casestudies/
- 未来のコンビニはどうなっている?ローソンの「オープンイノベーションセンター」を見てきた!(LAWSON)
https://www.lawson.co.jp/lab/tsuushin/art/1313189_4659.html - 【IoT業界探訪Vol.24】ローソンの「未来のIoTコンビニ」オープンイノベーションラボに行ってみた(ロボスタ)
https://robotstart.info/2018/10/15/iot_tanbou_no24.html
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