AIが搭載の介護ロボットが介護業界で活躍する

ロボットとAI(人工知能)が介護現場に浸透し始めた。最先端技術は、深刻な人手不足を解消できるのか。そしてAI介護ロボットは介護高齢者の心に寄り添うことができるのか。

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介護現場が人手不足にあえいでいる。介護の仕事は体力が必要なだけでなく、繊細な対応も求められる難しい仕事だが、賃金が高くない。そこに人手不足が重なって介護職員1人ひとりの負担は増える一方なので、離職者が増え、介護のなり手が減り、人手不足はさらに拍車がかかる。

この悪循環を断ち切る策として、介護ロボットが登場した。すでに実用化されているものもあり、介護職員の負担軽減に役立っている。

さらにAI(人工知能)を介護の現場に導入する動きが始まった。AIもロボット同様、人の代わりに仕事をすることが得意だが、介護の仕事には「人の心」が求められる。どこまで介護を必要としている高齢者に寄り添うことができるのだろうか。

そしてAIを搭載した介護ロボットも登場した。超最新技術は介護の未来を明るく照らすのだろうか。

AI-介護

介護ロボットとは

「介護ロボット」という言葉を聞くと、ヒト型ロボットが高齢者の身体介護をしているシーンを思い浮かべるかもしれないが、そのタイプはまだほんの一部だ。

数少ないヒト型介護ロボットは後段で詳しく紹介するが、いま、介護ロボットとして実用化されているものの多くは「装置」や「機械」といった外観をしている。

介護ロボットが注目される理由とメリット

介護ロボットが注目されている理由と、ロボットを介護現場に導入するメリットには、次のようなものがある。

AI-介護ロボット

1つずつみていこう。

ロボットが介護職員(人)の代わりになる

ロボットが人の代わりになることは、製造業の自動工場が証明している。ただ工場ではロボットが扱うものは部品であるが、介護の現場では「要介護者という弱っている人」に触れることになる。

そこで介護ロボットの開発では「絶対安全」を目指すことになる。それを可能にしたのがセンサーだ。

センサーはロボットの部品の一部で、ロボットと対象物との距離を測ったり、対象物の重さを計測したり、対象物のもろさを感知できるものもある。

センサーの進化によって、介護でもロボットを使えるようになった。

ロボットはパワーがある

介護職員は、50キロ以上の介護高齢者をしばしば抱えなければならない。高齢者が転倒したり急変したりすれば、走って助けたり、走って誰かを呼びにいったりしなければならない。介護職員はその日の仕事を終えると「へとへと」になる。

しかしロボットは疲れを知らない。人間をはるかに超えるパワーを出すこともできる。介護職員は女性が多いので、力持ちの介護ロボットは頼もしい存在だ。

排泄処理ロボットが登場した

「介護は下の世話で始まり、下の世話で終わる」という介護の専門家がいるくらい、介護高齢者の排泄物処理は、介護職員にとって「大きな壁となる仕事」だ。大人用オムツを使っても、オムツから便が漏れ出ることもある。認知症を発症すれば、排便に失敗することも珍しくない。介護職員の多くは、一度ならず「便まみれ」になった経験をしているはずだ。

また介護高齢者のほうでも、他人に陰部をさらすことになる排泄介助は受けたくないものだ。

そこで、排泄処理ロボットが登場した。介護職員の負担を減らし、介護高齢者の心理的な障壁を取り除くことができるのは、それが感情を持たないロボットだからである。

ロボットのコミュニケーション能力が高まっている

介護では高齢者とのコミュニケーションが欠かせない。しかしルーティンワークに追われている介護職員は、高齢者の話に耳を傾ける時間も気持ちの余裕もないことが多い。

ロボット開発では従来から、人と機械のコミュニケーションは大きなテーマだった。特に日本では「鉄腕アトム」や「ドラえもん」といった人気漫画でコミュニケーション能力が高いロボットが描かれてきたため、日本人の心のどこかに「ロボットと話したい」という感情がある。

コミュニケーションロボットへの「抵抗感のなさ」は介護高齢者も同じで、そのためコミュニケーションロボットの介護現場への導入は、作業用ロボットの導入に比べるとはるかにスムーズである。

介護ロボットの「いま」

それでは次にどのような介護ロボットが実用化されているか紹介する。

ノーリツプレシジョン株式会社が開発した「ネオスケア」は、「見守りロボット」と呼ばれるジャンルに属する。

ネオスケアは台所の小型換気扇くらいの大きさで、介護高齢者のベッドの近くの壁に設置する。介護高齢者がベッドから起き上がるとネオスケアのセンサーが感知して、介護職員のスマホに知らせ、さらに介護高齢者を撮影したライブ映像も送信する。これにより認知症患者の徘徊などを即座に把握することができる。

またネオスケアを設置しておけば、介護職員が確認したいときに介護高齢者の映像を確認することができる。この機能により、介護職員がわざわざ介護高齢者のベッドサイドまで行かなくても安否確認できるようになる。ネオスケアが普及すれば、介護職員たちの作業効率は格段に高まるだろう。

自動排泄処理ロボット「アイケアボット(iCarebot)」は、アルトンジャパン株式会社が開発した。アイケアボットは、介護高齢者の股間に装着する器具と、その器具から伸びるパイプと、そのパイプがつながっている本体の3つのパーツで構成されている。

股間に装着した器具に高性能センサーがついていて、介護高齢者の排泄物が小便なのか大便なのか検知する。その検知結果によって、本体は排泄物を吸引する力を変える。

本体が排泄物を吸い取ったら、股間に装着した器具か温水が出て介護高齢者の陰部を洗浄する。その後、温風が出て乾燥する。

株式会社東郷製作所が開発した介護コミュニケーションロボット「スマイビ」は、見た目は小柄なぬいぐるみである。介護高齢者に抱きかかえてもらうことを想定している。

スマイビには顔がついているが、点の目と、切り目を入れた口しかなく、あえてリアルにしていない。

介護高齢者の扱い方によって、スマイビの頬が赤くなったり青になったりする。また本物の人の赤ちゃんから録音した声が500種類内蔵してあり、音声で介護高齢者を癒すことができる。

「介護ロボットの将来」を予感させるAI搭載のアイオロス・ロボット

AIを搭載した介護ロボットが誕生した。アメリカのアイオロス・ロボティックス(Aeolus Robotics)社の「アイオロス・ロボット」で、2018年に同社が日本でデモンストレーションを実施した際は多くのマスコミが取り上げた。

それだけにとどまらず2019年8月からは日本でも、アイオロス・ロボットのレンタルを開始するという。

アイオロス・ロボットはソフトバンクのペッパーに似ていて、顔と腕と胴体はあるが足はなく、移動は車輪がついた「台」で行う。胴体は台の上にのっている。

アイオロス・ロボットは人の指示を受けて、自分の判断で移動する。「自分の判断」とは、目的地までのルートを決めたり、自走したり、障害物を回避したり、さらにエレベーターに乗ったりすることをいう。エレベーターでは「上へ(または下へ)」ボタンを押してエレベーターを呼び、エレベーターのなかでは階数ボタンを押す。

またアイオロス・ロボットは、腕で新聞や花瓶やお盆を持つことができ、それを介護高齢者のところに運ぶことも可能だ。

アイオロス・ロボットに内蔵されたAIは、目が撮影した動画を分析し、目の前のものが「手でつかむべき対象物」なのか「避けて通るべき障害物」なのかを判断するのだ。

アイオロス・ロボットは見守りもできる。転倒して動けなくなっている高齢者をみつけると、AIがその様子を「転倒して動けなくなっている」と判断する。そしてアイオロス・ロボットは目で撮影した動画を介護職員(人)のスマホに送信する。それにより介護職員は、速やかに転倒している高齢者のところに駆けつけることができる。

アイオロス・ロボットの優れたところは、その機能だけでなく、人間型になっていることだ。アイオロス・ロボットが動いている様子は下記のURLでみることができるが、「とても面白い」。

https://robotstart.info/2018/12/11/aeolus-robot-spec.html

機能だけを追求するのでれば、人間型でないほうが性能を発揮しやすい。例えば掃除機ロボットのほとんどは円盤型だが、その形状のほうが床を走行しやすくゴミを収集しやすいからだ。しかし機能だけを追求したロボットは、面白みに欠ける。

アイオロス・ロボットは、「新聞を取りに行って高齢者に渡す」だけの作業であってもエンターテイメント性がある。これなら介護施設のヒーローになるだろう。

これこそ、ロボットなりのコミュニケーション手段であり、そしてロボットでしか提供できない癒しといえる。

まとめ~ロボットと人をつなげるAI

介護現場でのロボットの存在感は、今後ますます強まるだろう。その優れた機能だけでなく、ロボットは疲れないので介護に必要な24時間の介入が可能だからだ。

しかし当然のことながら、人間とロボットの間には壁がある。その壁を低くして薄くするのがAIだ。

AIがさらに進化すれば、ロボットに「感情のようなもの」を植えつけることができるようになるだろう。なぜならAIは、人の感情を分析することができるからだ。

介護高齢者の多くは不安や悲しみを持っている。死に対する恐怖もあるだろう。そした気持ちに寄り添うことも、将来のAI介護ロボットはできるようになるかもしれない。


<参考>

  1. 予測型見守りシステムNeos+Care(ネオスケア)(介護ロボットONLINE)
    https://www.noritsu-precision.com/neoscare/
  2. 自動排泄処理ロボットiCarebot(アルトンジャパン)
    http://www.altonjapan.co.jp/products/smilecare
  3. 介護コミュニケーションロボット、スマイビ(東郷製作所)
    http://www.togoh.co.jp/products/care-smiby.html
  4. AI搭載の介護支援ロボット「アイオロス・ロボット」徹底解説!(ロボスタ)
    https://robotstart.info/2018/12/11/aeolus-robot-spec.html
  5. AI・機械学習機能搭載型 ヒューマン支援ロボット『アイオロス・ロボット』日本初上陸(PR TIMES)
    https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000039616.html
  6. AIが介護業界の人材不足を救えるか(三菱電機ビジネスシステム)
    https://www.melb.co.jp/column/column_124_876.html
  7. 介護ロボットをお探しなら(介護ロボットONLINE)
    https://kaigorobot-online.com/