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人工知能で進化するデジタルマーケティングのツールとは

デジタルマーケティングへのAIの適用範囲は広いこともあり、AIを活用したマーケティングツールは数多く存在する。その中でもメジャーなデジタルマーケティングツールを3つ厳選し、紹介しよう。

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デジタルマーケティングを支援するツールは、国内海外問わず数多く存在する。その中でも国内企業の採用例がある3つのデジタルマーケティングツールを今回紹介する。

これら3つのツールから示唆されるのは、これまで何度も言及したデジタルマーケティングでのAI活用成功へのキーワードである「デジタルドリブン」と「オムニチャネル」が重要なキーであるのは述べるまでもない。そしてもうひとつ見逃せないキーワードが業務の効率化、つまり「マーケティングオートメーション」への取り組みである。

デジタルマーケティング_自動化

Adobeが手掛けるマーケティング統合ソフト「Adobe Audience Manager」

画像編集アプリケーションである「Photoshop」やイメージ編集アプリケーションの「illustrator」、DTP制作の「InDesign」など、多くのアプリケーションを製作するのがAdobeだ。GoogleやAmazon、Facebookが買収を通して事業を拡大するように、Adobeもまたマーケティング事業に手を広げる。2009年にオンラインマーケティング会社のオムニチュアを18億円で買収以降、マーケティング分野にも着手する。

ITの調査会社であるガートナーは、デジタルマーケティングの分析に関するレポートを報告している。ビジョンの完全性と実行能力の2つを軸に4種類のランク付けを行ない、GoogleやSASとともにAdobeを最高位の「リーダー」にランク付けしている。ガードナーがAdobeをリーダーにランク付けしたのは、3年連続だという。

「Adobe Audience Manager」は、マーケティング活動のためのデータをオンライン、オフラインにかかわらず統合し、オーディエンスの情報を一元管理するツールだ。ビッグデータから、顧客の属性や心理をつかみ取るセグメントを特定することで、デジタルマーケティングに役立てる。

ビッグデータのセグメンテーション化がデジタルマーケティングの成功にとって不可欠であることは、以前にも述べたとおりである。消費者を購買へと導く広告を完成させるためには、顧客の属性や心理を知る必要だ。Adobe Audience Managerは、ビッグデータから顧客のセグメンテーション化を実施するという「データドリブン」の王道を貫くツールともいえよう。

一例だがAdobe Audience Managerを活用して、顧客のIDを一元管理も可能だ。PCやスマホ、タブレットなど通信機器を同じ顧客が日常的に複数利用しているが、Adobe Audience Managerを活用してデバイス毎に適切な広告を届けられるという。

Adobe Audience Managerは、オンラインマーケティングソリューションの「Adobe Experience Cloud」の製品のひとつとして数えられる。Adobe Audience Manager単体での購入も可能で、導入の相談はAdobeのホームページから行なえる。

国内企業が開発したマーケティングツール「AIアナリスト」

前回の記事でも紹介した日本のスタートアップ企業WACULが開発するツールが、「AIアナリスト」である。2015年にAIアナリストの提供を開始以来、機能の更新は続いている。2017年にはグッドデザイン賞に選ばれている。

WEB改善ツールであるAIアナリストは、「Googleアナリティクス」の恩恵を受けている。WEB上を横断するID情報やユーザーのアクセスの経路といったビッグデータは、GoogleやFacebookといったIT界のインフラを支える大企業が握っている。WACULのようなベンダーには、すべてのWEB情報が開示されていない。

米国Drawbridge社や台湾のAppier社のように、クロスデバイストラッキングを活用し、複数のデバイスを横断するユーザーを機械学習によって推定するのも可能だ。それに対し、WACULは別の方針をとる。それが、Googleアナリティクスを使用するというもの。

Googleアナリティクスはご存知のように、WEBページへのアクセスに関する情報をグラフィカルに表示する無償のツールだ。WEBサイトへのアクセス数や、アクセスのうち実際に購入したユーザーの比率を表す「コンバージョン率」などが表示される。

GoogleアナリティクスはWEBページの改善に便利なツールではあるが、マーケティングに活かすにはデータを分析するスキルが必要だ。自前でデータ分析できる人材を確保できるならば、Googleアナリティクスで十分かもしれないが、規模の小さい企業ならばそこまで手が回らないこともあるだろう。

AIアナリストを活用すれば、Googleアナリティクスの資源を活用し、WEBサイトのアクセス解析とサイト改善の提案を自動で行なってくれる。

AIアナリストには、改善提案と自動レポートという2つの大きな機能がある。改善提案とは、どのようにすればWEBサイトのコンバージョン率を上げるかという提案だ。一方自動レポートでは、日次、週次、月次でのレポートを自動で出力する。

AIアナリストによる具体的なサイト改善の提案だが、「CVに貢献していない広告の予算を見直そう」や「記事一覧からCVR(コンバージョン率)の悪いページへの誘導を弱めよう」などを、AIアナリストが提案する。Googleアナリティクスだけを活用した場合、このようなコンバージョン率を上げる方策をデータアナリストが分析する必要があるが、AIアナリストが自動で行なうので利便性が高い。

AIアナリストを実際に活用した企業には、旅行比較サイトの「トラベロコ」やクラウドホスティング事業を展開する「GMOクラウド」などが名を連ねる。1~2倍近くのコンバージョン率の上昇を行なえたという。

AIアナリストは、無料プランと有料プランの2つが用意されている。無料プランはAIアナリストのサイトからアカウントを作成するだけで、使用可能だ。一部の機能だけしか使えないが、無料プランを試したのち有料プランに切り替えることもできる。有料プランの料金は、WACULが見積もりを出してくれる。

マーケティングオートメーションを行なえる統合環境「HubSpot」

最後に紹介するのが、マーケティングオートメーションツールの「HubSpot」だ。HubSpotは2005年に設立され、米国マサチューセッツ州に本部を置く企業である。

HubSpotが扱うのは、「インバウンドマーケティング」だ。テレマーケティングやダイレクトメールといった従来のマーケティングは、企業から売りたい顧客に向ける「アウトバウンド」型の手法がとられていた。それに対しインバウンドマーケティングでは、WEB上に公開されたブログやニュースリリースなどのコンテンツを、顧客が検索ツールなどで発見し興味をもつことで呼び込む形態を採る。まさに、現在の消費者の行動様式にあわせた新しいスタイルのマーケティングといえよう。

ツールを使用する際に厄介なのが、目的に応じてツールを使い分けることだ。デジタルマーケティングツールひとつとっても、マーケティングオートメーションや、WEB上のデータ分析、Eメールの自動配信や、SNSやオウンドメディアなどのコンテンツ管理など幅広い。分野ごとにツールを使い分けるのは、ユーザーに大きな負担がかかる。

HubSpotは、デジタルマーケティングに必要な基本機能を網羅し、1つのツールのなかでマーケティング実行環境を提供する。マーケティングオートメーションを主軸にしたツールとはいえ、SEO(検索エンジン最適化)を支援するツールや、見込み客のリストを管理する機能など、HubSpotはデジタルマーケティングに関する機能を網羅する。

マーケティングオートメーションに限ると、見込み客の行動にあわせてメール配信が可能だ。最適のタイミングで最適な広告を見込み客にリーチさせるので、その効果は高い。

このほかにも「タスク機能」を活用することで、チーム全体でタスクに抜け漏れがないようタスクを管理する機能で、業務の効率化を図ることが可能だ。

HubSpotだが、無料プランと4種類の有料プランが用意されている。無料プランは一部機能が使えないなど制限があるが、有料プランを試したい企業もあるだろう。HubSpotは有料プランの採用を検討する企業のために、30日間無料体験版を用意する。有料プランと同等の機能を使用できるので、本格的な導入を検討する場合はぜひ試されたい。

マーケティングツール_人口知能

マーケティングツールは群雄割拠

今回紹介したデジタルマーケティングツールは、メジャーな製品ばかりだ。WACULが提供する「AIアナリスト」のような国産製品から、Adobe Audience ManagerやHubSpotといった海外企業のデジタルマーケティングツールまで数多くリリースされている。

デジタルマーケティングのAI活用に関してまだ発展途上の段階であるとはいえ、すでにデジタルマーケティングツールにビッグデータの分析を取り込んだ製品も数多く存在する。ビッグデータを分析し消費者の購買へと導く「データドリブン」や、消費者と企業との絆を深める「オムニチャネル」がデジタルマーケティングにとって重要なのは、これまで何度も強調してきた。その一方で、RPAに代表される事業の効率化も重要で、マーケティングオートメーションはその役割を果たしている。

Googleアナリティクスなど無料のマーケティングツールもあるが、事業の効率化を考慮すれば、AIの活用を検討するのがベストではないだろうか。


<参考>

  1. マーケティングもアドビに任せろ (東洋経済オンライン)
    https://toyokeizai.net/articles/-/14328
  2. Adobe Marketing Cloud (Wikipedia)
    https://en.wikipedia.org/wiki/Adobe_Marketing_Cloud
  3. Adobe Enhances Analytics With Advanced New Features (Forbes)
    https://www.forbes.com/sites/amitchowdhry/2017/11/01/adobe-enhances-analytics-with-advanced-new-features
  4. 最高のエクスペリエンスは、 最高の顧客理解から(Adobe)
    https://offers.adobe.com/jp/ja/marketing/landings/_003015_gartner_mq_analytics2017.html
  5. よくあるお問い合わせ(Adobe)
    https://www.adobe.com/jp/information/experiencecloud/faq.html
  6. グッドデザイン賞とは(Good Design Award)
    http://www.g-mark.org/about/
  7. 「AIアナリスト」の機能説明を受けてみた!CV数が5倍になった事例も出ている活用法とは?(LISKUL)
    https://liskul.com/service-aianalyst-21779
  8. 「AIアナリスト」を使って成果が改善した事例を11個集めました。(LISKUL)
    https://liskul.com/service-ai-site-mend-21659
  9. インバウンドマーケティングとは? 5分でわかる総論と実践のポイント(innova)
    https://innova-jp.com/5min-to-learn-inbound-marketing/
  10. HubSpotとは(MKTG ENGINE)
    https://www.mktgengine.jp/hubspot
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