災害対策・防災分野のAI活用事例

日本では今後人手不足問題がますます問題になる。特に自然災害による被災時には、より人手不足が深刻化する。そこで期待されるのがAI(人工知能)による支援である。ここで、災害対策・防災分野でのAI活用事例紹介する。

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日本では今後人手不足問題がますます問題になる。特に自然災害による被災時には、より人手不足が深刻化する。そこで期待されるのがAI(人工知能)による支援である。ここで、災害対策・防災分野でのAI活用事例を見てみる。

日本ではAIは脅威よりも救世主

近年AI(人工知能)技術が急速に進歩することで、近い将来に、人間が仕事をAIに奪われるのではないかというAI脅威論が広がっている。一方、過去にない速度で超高齢社会に向かっている日本では、労働人口の急減による経済の衰退や公共サービスの停止や予想されている。これらの状況は既に始まっており、今春、引っ越しシーズンに引越し業者がドライバー不足により引越し注文を受けることができないという事態が発生したことでもうかがい知れる。

したがって、日本においては、それらの労働力不足を補完する意味においてAIの活用が期待される。人手不足という状況は、今後状態化し大きな課題になると予想されるが、地震や津波等の自然災害の多い日本においては被災した非常時では、より一層大きな問題になると予想される。

例えば、災害発生直後の情報収集や臨機応変な計画立案については不休不断の体制が必要され、ますます体制の構築が難しくなっていくことが想定される。そのような災害対策、防災分野の人手不足を補完するために、AIの活用を推進していくべきである。

防災分野へのAI活用

災害対策、防災分野へのAIの活用方法としては大きく3つに分けられる。一つ目としては災害発生の予測または災害発生時の被害想定に対する活用である。このような活用が可能なAIが、産業技術総合研究所(産総研)と日本電気(NEC)が連携して2016年6月に設立した「産総研-NEC 人工知能連携研究所」(以降 連携研究所)にて研究されている。

連携研究所で推進されるプロジェクトの一つは、シミュレーションと機械学習の融合を図るものである、“スーパー台風がどのような条件で発生するか”といった不測の希少災害の発見・想定や、“安定的に飛行する低燃費の飛行機”の開発など、未知の製品の最適化条件を探し出すことを目的としている。一般的なシミュレーターでは探せない、機械学習との組み合わせだからこそ実現できる
出所: CNET Japan

このようなシミュレーションを活用することで、災害発生の時期や規模が予測可能となり、たとえばスーパー台風の進路予想や勢力の変化の予測精度が高まるため、事前の避難や効率的な避難準備作業が可能となる。

また、地球温暖化のためより勢力が強い台風の発生が予測されているが、シミュレーションで具体的な発生しうる大きさ、勢力の強さも予想可能となるため、治水やインフラ対策といった防災、減災対策も一層効率化されると考えられる。

被災状況把握へのAI活用

二つ目としては災害発生時の情報収集・整理や計画立案を支援するためのツールとしての活用である。過去の中越地震の際にはカーナビのデータをインターネット経由で収集し地震で不通になって道路を判別するというシステムが非常に有効であることが認められた。

また東日本大震災では広域の被災状況の情報収集・共有に対し、ソーシャル・ネットワークシステム(SNS)の活用が有効であることがわかっている。

しかし、情報の整理・統合については人手に依存しており改善策が求められている。その点をAIで改善するために、2016年10月に国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)はD-SUMMを試験公開している。

NICTは耐災害ICT研究センター及びユニバーサルコミュニケーション研究所において開発している災害状況要約システム「D-SUMM(ディーサム)」(Disaster-information SUMMarizer)をWeb上に試験公開した。D-SUMMは、人工知能を用いて、Twitterに投稿された災害関連情報をリアルタイムに分析し、都道府県単位又は市区町村単位でエリアを指定すると、指定エリア内の被災報告を瞬時に要約し、そのエリアの被災状況の概要が一目でわかるように、コンパクトかつ、わかりやすく提示し、各種救援、避難等を支援するという。 
出所: IoTNEWS

更に、今後の災害発生時には、救難ヘリ等の活動を妨げない範疇で小型ドローンを活用し被災地域の画像情報を取得し、AI画像解析によって、土砂崩れの危険性や火災延焼可能性の認識など専門家でなければ判断ができなかった判定も可能となる。したがって、D-SUMMのようなSNS情報分析システムにAIによる画像解析機能も統合し、より高精度な被災状況要約システムの構築が可能になると考えられる。

被災時の多言語コミュニケーションへのAI活用

 三番目としてはインバウンド観光客向けコミュニケーションへの活用である。自治体が策定している地震や津波発生時の避難計画は対象が住民であり、企業の従業員については企業が計画を策定している。しかし、近年増えつつあるインバウンド観光客の避難についてはどうするのかという問題がある。実際、中国、韓国、台湾の訪日経験者へのNTTレゾナントのアンケートによると下記のような回答を得ている。

日本で被災した場合に最も困ること」という質問項目では「日本語へ通訳」を回答する人が最も多く見られるほか、 約9割の回答者が自国語に対応した防災アプリをインストールしておきたいと回答があった。  
出所: 訪日ラボ

インバウンド観光客が増加し訪問対象地が都市部以外の地方へも広がりつつあるためこの問題に対しては日本全体で対応すべきある。それに対し観光庁も2014年10月に「訪日外国人旅行者の安全確保のための手引き」を発表し各機関の取り組みを促進している。その中で上記と合わせて鍵になるのが、「災害情報の多言語化のための各種整備」という役割である。

東京オリンピックを間近に控え、AIを活用した様々な翻訳サービスや機器がリリースされているがそれらの多くは日本語から外国語の単方向の翻訳であり、日本人が意図をいくつかの外国語で外国人に伝えるための機能である。そのため、外国人が自国語で日本人に意図や要望を伝えたくても、日本人は正しく理解できないという問題がある。

その問題に対応するには最新のAI技術によるMicrosoft Translator Speech APIやGoogle翻訳のような双方向多言語翻訳の翻訳エンジンによるアプリ等を活用する必要がある。これらの多言語翻訳エンジンでは50以上の言語の双方向翻訳が可能である。そのようなアプリにより大地震のような突発的な災害発生時に、インバウンド観光客へ円滑な避難指示や意思疎通が可能となる。

まとめ

このように、社会的に労働人口が減少していく日本の状況下ではより一層効率的に災害対策をしなければならなく、AIを上手に活用していく必要がある。その取組は、他の災害対策と同様に発生してからでは遅く、十分時間をかけAIを整備し、AI活用を前提に災害対策シナリオを検討していくべきである。


<参考>

  1. NICT、災害状況要約システム「D-SUMM(ディーサム)」試験公開(IoTNews)
    https://iotnews.jp/archives/36460
  2. 未曾有の事故・災害を予測するAIを–NECと産総研が研究所設立 (CNET Japan)
    https://japan.cnet.com/article/35080699/
  3. 訪日客の9割が自国語対応の防災アプリを望んでいる訪日アジア圏観光客は日本人よりも高い防災意識!?意識調査で明らかに  (訪日ラボ)
    https://honichi.com/news/2017/03/17/honichikyakuno9wariga/
  4. 訪日外国人旅行者の安全確保のための手引き (観光庁)
    http://www.mlit.go.jp/common/001058528.pdf
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