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AIベンチャー特集 〜中国編〜

AIの普及により私達の生活が指数関数的に技術革新する、そうした時に我々の生活はどう変わるのであろうか。そうした変化をもたらす中国AIベンチャーのAI活用事例を紹介する。

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ちょっと前に流行した言葉の中に「シンギュラリティー」(技術的特異点)というものがあるが、端的にいうとAIの普及により私達の生活が指数関数的に技術革新する、というものである。では私達の置かれている現状はどうなのだろうか。

いくつかの書籍で予言されたように、急速な発展の真っただ中にいるのだろうか。本日は、その疑問に応える一助となるかも知れない、中国でのAIによる技術を売りとするベンチャー企業を5社紹介する。

中国AIスタートアップ、ベンチャー

中国AIベンチャー1 AIを用いた認証技術で新しいサービスを展開 – Yitu Technology –

Yitu TechnologyはAIを用いた認証技術に強みを持つベンチャー企業だ。同社HPでは認証技術の具体的活用例として、交通領域での利用、金融分野での本人確認、接客業でのVIP顧客対応を挙げている。

交通領域では交通量の管理、自動車ブランドの自動認識、偽造ナンバープレートの検知などに応用可能だ。金融分野では顔認証による本人確認への応用が可能である。接客業では顔認証によりVIP顧客の来店を素早く認識することが可能だ。

最後の応用例をもう少し詳しく説明すると、顧客が店舗に来店した際に顔認証を実施することで性別や年齢などの属性を素早く判別し、顧客のニーズを素早く判断することでマーケティング機会を創出することができる。これらの応用例はYitu Technologyの持つAIを用いた認証技術が基盤となっている。AIを要素技術としてビジネスへの展開を積極的に実施している事例である。

中国ベンチャー2 ユーザー向けにカスタマイズされたニュースを配信 – Toutiao –

Smartnewsやグノシーなどのニュースキュレーションアプリをインストールして自分好みのニュースをゲットしている読者は多いのではないだろうか。

中国においてもニュースキュレーションアプリが注目を集めており、いくつかのアプリが台頭してきたが、その一つがToutiaoの展開する今日头条である。今日头条はSmartnewsなどと同様に各ユーザーの閲覧履歴などを分析し、ユーザーが好むと予想されるニュースコンテンツを配信するアプリである。Toutiaoによると各ニュースコンテンツの見出し作成にAIを利用しているという。

Toutiaoの事例はもう一つ興味深い側面がある。それは当局による規制だ。新技術が誕生して新しいサービスが誕生するとどうしても旧態依然の法規制と衝突することがあり、我が国ではドローンがよくやり玉に挙げられるが、言論に規制のある中国ではAIを用いて何でもかんでも自由に配信することはまずいらしい。

事実、4月9日に中国のアプリサイトから今日头条を含むニュースキュレーションアプリ4種が姿を消している。恒常的な対応ではないようだが、今後の動向が気になるところである。

中国ベンチャー3 AI時代を支えるチップメーカー – Cambricon Technologies –

AIは広い意味ではコンピューター上で動作するソフトウェアの一つだが、これまで紹介してきたように幅広い応用の可能性を秘めている。ともすればOSのようにこれからのコンピューター時代を支える基盤ソフトウェアのような位置づけになるかも知れない。そのような未来に向けてAIに適したコンピューターチップを製作しているベンチャーがCambricon Technologiesである。ハードウェアの話は非常に専門性が高いためここでは技術詳細を説明しないが、概して言うとソフトウェアでカバーしている領域をハードウェアで実現することも出来、AI向けにそのようなチップを製作しているのが同社である。

イメージがわくように例え話を用いると、一般的なグラスを用いてビールを飲むことも出来るが、美味しく飲むという目的をより明確に達成するため、熱を逃がさない素材でグラスを作り、泡立ちが良いように底に起伏を設ける、のようにハードウェア側の構造を工夫することでソフトウェア側であるビールは同じでも味を強化することが出来ることと同じだ。

コンピューターの世界では結局、何らかの計算をチップで行っていることになるが、AIで頻出する計算に特化した構造のチップを製作していると思えばよい。鉄は産業の米と言われていた時代になぞらえて、現代では半導体(コンピューターチップの基となる素材)は産業の米とも言われるが、AI時代にはCambricon Technologiesの製作したコンピューターチップが産業の米と言われる時代が来るかも知れない。

中国ベンチャー4 iCarbonX

希少(というよりも幻の存在)であるユニコーンに例えられるほど素晴らしいベンチャー、正確には評価額が10億ドル以上の未上場のスタートアップ企業のことをユニコーン企業というが、アジア最速でユニコーン企業になったのがiCarbonXである。iCarbonX社はヘルスケア領域でAIを用いたサービスを展開している。

具体的には、AIによるビッグデータ分析を応用してフィットネス、ヘルスケア、栄養管理の分野でアプリを通じてユーザーへアドバイスを行う仕組みを提供している。将来性が高く評価された結果、創業からわずか6か月でユニコーン企業の仲間入りを果たすこととなり、これはアジア企業では最も早く、米国のJet.comに次ぐ偉業であると言われている。

中国ベンチャー5 Mobvoi Inc

ガジェット好きな方はMobvoi社の名前を聞いたことがあるかも知れない。あるいは、Ticwatchと聞けばピンとくるかも知れない。

Ticwatchはリーズナブルな価格で音声認識による操作が可能なスマートウォッチとして話題になった商品だ。Mobvoi社はAIを用いた音声認識に強みを持つベンチャー企業で、前述のスマートウォッチは得意領域を活かして商品展開を行った例である。スマートウォッチのほか、スマートミラーの開発にも着手しており、これは自動車に備え付けることでボイスコマンドによる自動車の操作(厳密には、自動車に付随するエアコンやスピーカーの操作であると推測される)を可能とする。その優れたアイディアから、フォルクスワーゲングループが注目しており、同社向けに製品の開発を実施する計画があると発表されている。

以上、本日は中国におけるAIを活かして市場を開拓するベンチャー企業を5社紹介した。紹介した事例からわかるように、AIはあらゆる産業の要素技術となる素質を秘めていると言える。読者の皆さんにも是非、AIを用いた新しいビジネスフィールドの開拓に挑戦してほしい。そして、この記事がその一助となれば幸いである。


<参考>

  1. Product & Service (Yitu Technology)
    https://forbesjapan.com/articles/detail/20118
  2. 今日头条 (今日头条)
    https://www.toutiao.com/
  3. 中国のニュースアグリゲーションアプリ「Toutiao(今日頭条)」、フェイクニュースを作成し〝フェイクニュース対抗AI〟のトレーニングに挑む (The BRIDGE)
    http://thebridge.jp/2017/12/toutiao-machine-learning
  4. 「Jinri Toutiao(今日頭条)」などニュースキュレーションアプリ4種、中国のアプリストアから姿を消す (The BRIDGE)
    http://thebridge.jp/2018/04/news-apps-takedown
  5. Cambricon Technologies (Cambricon Technologies)
    http://www.cambricon.com/
  6. AIチップの研究開発に参入 アリババの研究機関「達磨院」 (AFP)
    http://www.afpbb.com/articles/-/3172368?cx_position=20
  7. iCarbonX (iCarbonX)
    https://www.icarbonx.com/en/index.html
  8. 中国ヘルスケアスタートアップiCarbonX、シリーズAで約170億円を資金調達…アジア史上最速のユニコーン企業へ (Pedia)
    https://thepedia.co/article/%E4%B8%AD%E5%9B%BD%E3%83%98%E3%83%AB%E3%82%B9%E3%82%B1%E3%82%A2%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%88%E3%82%A2%E3%83%83%E3%83%97icarbonx%E3%80%81%E3%82%B7%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%BAa%E3%81%A7%E7%B4%8417/
  9. Mobvoi Inc. (Mobvoi Inc)
    https://www.chumenwenwen.com/en/site/index.html
  10. 世界の全てをボイスで操る中国企業「モブボイ」の魔法 (Forbes)
    https://forbesjapan.com/articles/detail/20118
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