デジタルレイバーとは何?
デジタルレイバーが、これまでコンピュータには困難とされていた人間の仕事を代行してくれる。
そういう時代が、ついにやってきた!?
「デジタルレイバー(Digital Labor)」とは、「仮想知的労働者」のことだ。
「英辞郎 on the WEB」によると、「Labor」は「(汗水流して)働く、労働する」という意味。
デジタルはさすがに汗水はたらさないかも知れないが、これまで人間が汗水たらしながらしていた仕事をデジタルレイバーが代わりにやってくれる。
「今までは人間でないとできなかったホワイトカラーの仕事」のいくらかが、近年の人工知能(AI)の発達のおかげで、コンピュータでもこなせるようになってきたのだ。
デジタルレイバーは、「RPA(Robotic Process Automation)」という技術によって生まれた「仮想労働者」。
ホワイトカラーの仕事を全てやってくれるわけではないが、大幅な作業の効率化も望むことができそうだ。
たとえば、熟練のスタッフ10人分の仕事が、新人スタッフ1人だけでできるようになった事例もあるという。
仮想の知的労働者が、仕事の現場を変える
どこの職場にもあるであろう仕事上の課題として、情報やスキルの共有をどうやって図るか、ということがある。
職場のスタッフそれぞれの熟練度はまちまちだし、高度なスキルを持っていてもそれを後輩にどうやって伝えていけばいいのかというのも、難しい問題だ。
社内で教育制度を作って教育の効率化を図るにしても、その教育期間の人件費もバカにならないし、せっかく教育したのにすぐに新入社員が辞めてしまっては、元も子もない・・・。
そう言って頭を抱える管理者も多いだろう。それなら、人間の業務自体を減らせればよい。
業務の絶対量が減るのなら、そもそも教える量だって減るのだから、一石二鳥だ。
少子高齢化・人材不足の嘆きだって、デジタルレイバーが解決してくれるかも知れない。
特に、接客や営業などの対人の仕事においても、デジタルレイバーの効果は大きい。
販売/営業レポートの作成など、事務的な作業は営業においても不可欠だ。
ホワイトカラーの仕事の半分は、ルーティンワークに費やされているという話もある。
仕事教育や事務作業はどこの職場でも必要であり、その省力化を行えることでより対人の「人間でないとできない仕事」に集中できる環境を整えられるのだ。
2017年時点での調査では、市場規模は31億円、日本国内で約20%が導入済み/導入中であるという。
また、予測での市場規模は2021年度には100億円になるとのことだ。
前代未聞の少子高齢化社会をこれから迎える日本で、働き方改革にもってこいの存在なのが、デジタルレイバーだ。
作業の自動化ツールも、AIによって進化している
従来からPCを使って仕事の作業を自動化し、省力化していた人も多いだろう。
たとえばエクセルマクロだって、広義にはデジタルレイバー/RPAのひとつだ。
(クラス3では、デジタルレイバーが意思決定までもしてくれるという)
確かに、自分でプログラムを書いて作業を効率化できると、本当に作業が楽になる。
ネットからの情報収集だって、近年ではWebボットを飛ばして、自分に必要な情報だけを自動で取り出すことが一般化してきた。
しかし自分でコードを書くのもそれなりの手間がかかるし、従来の論理的な整合性が取れていないとエラーになってしまうプログラミングでは、ちょっとしたデータの変更にまた人間の手間をかけないといけなくなる。
実際に経験した人なら実感としてよくわかるだろうが、ほんのちょっとしたデータの変更点のために、その原因を調べるために何時間も手間をかけないといけなくなることもある。
そういった手間が続くと、だんだんルーティンワークをプログラムコード化するのも面倒臭くなってしまい、本当に省力化できているのか疑わしくなってくる・・・。
返って手間が増えているのではないか・・・。
結局、定型的な単純作業、ルーティンワークといえども全てを機械任せにはできないのだと思い知る羽目に陥ってしまうのだ。
(VBやJScriptでRPAコードをゴリゴリ書いていた時代は、もう古い?)
RPA事業者でも、全てを機械に自動化することは難しいと認めている。
100社4,000ロボットの稼働実績があるRPA テクノロジーズ株式会社でも、デジタルレイバーを導入したとしてもやはり継続してチューニングする必要があるという。
しかし、デジタルレイバーではプログラミングは不要であるため、プログラミングの知識がないスタッフでも扱えうことが可能だ。
人為によるユーザーインターフェイス上での操作を記録し、計算機=コンピュータやAIが得意な反復計算処理も自動でこなしてくれるのだ。
マクロで扱える決まりきった定型的作業、しかも誰もがするルーティンではない自分だけのルーティンワークでも、比較的簡単にカスタマイズできる技術が進化してきた。
デジタルレイバーは、機械だから24時間体制で仕事をしてくれる。
また、もうひとつデジタルレイバーの持つ特性に、「辞めない」ことがあげられる。
24時間疲れもせず、文句も言わず、黙々と仕事をこなしてくれる。
3年で離職率30%、新人研修が終わったと思ったら、辞職してしまうことも多いと言われるご時世だ。
マシンなのでいくらでも「採用」することもできるという利点もある。
多額のコストをかけて教育した新入社員に辞められて困る問題は、デジタルレイバーでは解決されるのだ。
導入事例が加速する、身近な存在・デジタルレイバー
デジタルレイバーは、人間の行う作業のうち、ルーティンワークを自動化してくれる。
AI化による柔軟性と、操作しやすいUIによってデジタルレイバーに作業を教える方法も簡単になった。
高度なプログラミングなどの機械に合わせた命令方法を習得する必要がなく、対話的・直感的にデジタルレイバーに指示を教えることができる。
一旦デジタルレイバーに教えさえすれば、まるで自分の分身のように自分の仕事の肩代わりをしてくれる。
こんなに身近で手軽な存在の「仮想の知的労働者」だが、面白いことに、デジタルレイバーを擬人化する企業も出てきた。
まるで本当の新入社員のように入社を祝ってもらったのは、日本生命保険の「日生ロボ美」だ。
ロボ美の特技は、タイピングと入力業務。
また、趣味は「みなさんのお手伝い」だという、いじらしいロボ美ちゃんだ。
しかし一説にはその処理能力は人間の25人分だというから、ロボ美ちゃんも「半端ない」。
また、三菱東京UFJ銀行で導入されたデジタルレイバーは、事務作業20種類をこなし、年間8,000時間の作業削減を実現しているという。
デジタルレイバーをレンタルする動きもある(たとえば、月額1,000円で貸し出される事例もある)など、ますます導入事例が加速していく気配だ。
マシンだけに仕事も正確で、従来は作業に間違いがないか多重チェックを何人もかけて行っていたケースも、デジタルレイバーの導入により全く必要がなくなったというケースもある。
デジタルレイバー/RPAの技術は、AIのイメージとは少し異なる
デジタルレイバー/RPAは「ホワイトカラーの仕事を奪う」という側面は、確かにありそうだ。
しかしそれよりも、人間にしかできない仕事に人間のリソースを集中的に注ぎ込めるよう、デジタルレイバーが支援を行ってくれるという意味合いが強い。
デジタルレイバーは、単純業務の自動化を行うものだからだ。
人間が汗水たらさなければできなかった仕事を、汗水たらさずに仮想の知的労働者がやってくれる。
また、パワハラや労働管理・法務上の問題も、デジタルレイバーであれば解決できることも多いはずだ。業務内容の引き継ぎもスムーズになり、負担が減るだろう。
なにしろ、デジタルレイバーは「仮想の労働者」だからだ。
デジタルレイバー/RPAは、いわゆるAIが人間にとって代わるというようなSF小説のような説とは一線を画したものだ。
コンピュータが得意とする繰り返しの大量の作業を肩代わりするというものだから、導入に対する気持ちの上での障壁も、いくらか薄くなる。
従来のマクロプログラムの延長線上に、デジタルレイバー/RPAは位置するのだ。
デジタルレイバーの導入は、いいことずくめのように見えるが、使っていくうえで全く不満がなくなるということはまずないだろう。
それはデジタルレイバーに関わらず、いずれのAI導入に対して言えることだ。
しかし高度なAIに比べてデジタルレイバーの挙動は理解がしやすい分、扱い易さがあるのは他の「中身が見えにくい」AIとは一線を画す取り組みではないだろうか。
<参考>
- 用語解説辞典 (NTTPC)
https://www.nttpc.co.jp/yougo/デジタルレイバー.html - RPA(働き方改革:業務自動化による生産性向上) (総務省)
http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/02tsushin02_04000043.html - RPA(ロボットによる業務自動化)とは (RPA テクノロジーズ株式会社)
http://rpa-technologies.com/about/ - 新入社員「ロボ美ちゃん」、仕事は迅速、集中力も持続 (日経xTECH)
https://tech.nikkeibp.co.jp/it/atcl/column/16/110700255/110700001/ - 25人分のデータ入力をするロボット社員「日生ロボ美」 #132 (IoTinfo)
http://okstyle-tokyo.jp/iotinfo-nissay-rpa-132 - 社員の連鎖退職 防ぐには (au Webポータル経済・ITニュース)
https://article.auone.jp/detail/1/3/6/7_6_r_20180722_1532239315376884 - 働き方革命「日本型RPAの実態と今後の方向性」 (日本RPA協会)
http://www.cfo.jp/wordpress/wp-content/uploads/2017/06/robotics_guidance_02.pdf
役にたったらいいね!
してください
NISSENデジタルハブは、法人向けにA.Iの活用事例やデータ分析活用事例などの情報を提供しております。